〈マネ篇〉

 とある酒屋には一人、金色の美しい長髪を持った女がいた。その女はモテる。とにかくモテるのでる。そしてナンパをしてくる男に対しては能力を使ってお金を少しばかり頂くのが彼女であった。

 しかし、前にそれをした相手がなんと王様で……少しばかり大きな金額を頂いた後に遠くの街であるファイターストリートへとその姿をくらました。


 そして今日、ストリートファイターの街路で彼女は1人の男にナンパされていた。


「よぉ姉ちゃん……俺とデェートしようぜ」


 話しかけてきたのはボンバーヘアの男、ボンバ・マン。武道家の街に生きる爆弾魔である。この男は街全体の嫌われ者でわざわざこの面倒事に近づこうとする者はめったにいない。


「ごめんなさい。私急いでいるの」

「このボンバを差し置いての用事がぁ!?」

「貴方のことは全く知らないけどすごく大丈な用事があるの」

「ほんの少しでいいからよォ……いいこと、しようぜ?」


 男は執拗に女を誘おうとする。他から見れば女は明らかに避けた態度を取っているだがこの男にはそれを理解していない。

 しかし、その様子を見守っていたある人物が近づいてきた。


「やめろ!その子が嫌がっているだろう!」

「あぁ!?なんだおめぇ」

「僕はストー・カー!彼女の味方だ。彼女から手を離すんだ!」

「あんだとぉ!?やんのかごらぁ」

「やってやろうとも!」


 そうして始まる一人の女を賭けた決闘。

 その隙を見て女は逃げようとするが決着はそんの一瞬。3人目の刺客によってつけられた。


「雑魚は目障りだから消えやがれぇぇ!!!無作愚者むしゃくしゃラッシュ」

「……!?」


 突如現れたのは体格の大きな魔族により2人の男が瞬時に吹き飛ぶ。女はその光景に一瞬、彼が助けてくれたのかと思ったがどうやらそうでは無いらしい。大きな敵意をこちらに向けているのだから。


「あぁムシャクシャする……こんな平和ボケした世界で俺を満たすような奴は中々いねぇ!……だが、お前からは至高の領域とも言える力を感じる」

「……何言ってるのかしら?私、とても華奢で弱い人間の女の子よ」

「それはどうだろうなぁ!?」


 その魔物は大きな一撃を振りかぶる―――が、それは彼女に届く事無く空中で停止する。


「俺の一撃を……どこが華奢な女だ」

「あら、貴方が自分で止めたんじゃなくて?それにしても魔族と人間は共存する決まりがあったと思うのだけど貴方、どういうつもり?」

「あんな決まりに俺は縛られねぇ!」


 この魔物が言うように、ルシフェルが取り仕切る現在でもそれを破る魔族も僅かにだが存在していた。このオーガの魔族もその1人。

 そして再度その拳に力が籠ったとき……


「―――昇給拳(きわみ)!」

「っ!」


 一人の少女が現れ、魔族を吹き飛ばした。


「大丈夫ですか!その……助太刀致します!」


 短髪美少女武道家の登場である。


「あら……じゃあお願いしようかしら」

「はい!」


「いいじゃねぇか!強い奴2人と出会えるなんて最高だ!興奮が止まらねぇ!懲懲散々ラッシュ!」

「単純な動きね……それじゃ、簡単に掴めちゃう」

「っっ!」


 魔族は手を振りかぶるが、やはり見えない何かで拘束されてしまう。あまりにも相手との相性が悪かった……勝負の決着はすぐについた。


「波動拳!からのブンブン!」


 武道家の少女の攻撃と、ぶん回しによって魔族は意識を失った。


「相変わらず凄い力ねリウ」

「えへへ……って私名前言いましたっけ?」

「いえ、そんなことは無いはず。……変ね。初めて会ったのに何故か名前が出てきちゃったみたい」

「じゃあ運命ですね!名前、よければ教えて貰ってもいいですか?」

「そうね……マネ、マネよ」

「マネ……じゃあマネちゃんだね。」

「ふふ、いきなりちゃん付けなんて積極的ね」

「そうかな?だって私たち共闘したからもう友達でしょ?」

「……友達。そうね何だか貴方とは凄く仲良くなれそう」


 そして2人は、固く手を結んだ。


〈翌日〉


「……ここはどこだ」


 魔族が目を覚ました時に入ってきたのは知らぬ天井であった。


「あ、起きた」

「起きたみたいね」


「……あ?」


 見知らぬ家に居るかと思えば、先程手合わせをした女二人の姿があり、魔族は混乱する。


「なんで俺を生かした……俺はお前を襲ったんだぞ?」

「生かすも何も人間の殺生は武闘家の心得に反するので」

「ハ、俺が人間?俺は魔族!鬼だ!人間の上に立つ種族だぞ!」

「魔族と人間に上下なんてないです。それに貴方、私たちに負けたじゃないですか」

「文字通り手も足も出てなかったわよね」

「……なんだと!いつかお前ら二人相手でも圧倒してやるから覚悟しとけ!明日、明日にでも再戦だ!」


 そうして魔族は家を出て行った。


「騒がしいやつだったわね……ってリウ何だか嬉しそう」

「だって修行相手が出来たんですから嬉しくもなりますよ!」

「修行……ね。既にリウって十分強いと思うけどどこまで強くなりたいの?」

「それはもちろん!……えぇと、あれ」

「……?どうかしたの」

「確かに……ずっと目指して、尊敬していた人がいたと思ったんですけど、思い出せない……なんだか変な気分です」

「そう、じゃあ気分転換にお風呂でも入る?」

「うーん、それじゃあ入ろうかな」


 そうして二人はお風呂へ向かうのであった。












































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