強くなりたいヤツは心で繋がっているんだぜ
『―――サン、お前は強い
力は傷つけるものの事だけじゃない。
お前には、並外れた耐久力がある。その力で大切な俺の娘を守ってやってくれ』
かつて、お義父さんに言われた言葉。
しかし!これは間違っていた!
圧倒的な力を前に俺の守るだけの力でアイツを……守ることなんか出来やしなかった!
大切な嫁との平和な暮らしのため、人間とのいざこざから逃げようと魔王に逆らった時に、俺に力さえあれば救えたはずなのに!
……力がほしい。どんな物にも真っ向から抗える力が!
◆
フィリアさん、リウさん、ヨー、サンを連れて次に向かうのはロボロボ遺跡だ。
そこでエリクサーとボブを手に入れる。
「……溶けるヨー」
「ふぅ、本当にここは暑いですね。ヨー君、水分補給はしっかりしましょうね」
歩くは武道砂漠。暑かったファイターストリートを超えた暑さに加え、果ての見えない道はフィリアさんとヨーには少々厳しいようだ。
しかし、街で予め水分と食料の補給、それと武具も新調したから暑さでバテることも脱水も起こることはないだろう。
そして隣を歩くリウさんの様子はすごい…元気だ。元々暑さに慣れてるのだろう。
サンを担ぐ俺の代わりに荷物も持ってくれているし、やはり連れてくるのは正解だったと思える。
家から持ってきたらしいスパイスを使った料理も美味しいし―――と、そんなことを考えていたら数日間ずっと意識を失っていたサンが目を覚ました。
「んっ……あぁ?」
「生きてる武器!?」
「いや、武器じゃないです。こいつ四天王です」
「……なんだ?強そうな奴が1人、2人!って、なんだヨーもいるじゃねぇか。お前何してるんだよ?」
サンが目覚めたことで、ヨーがフィリアさんの後ろに隠れるようにする。
そして肝心のヨーは、記憶が飛んでいる様子だ。
「……とりあえずお前ら2人とも魔物になれ!それか、俺と戦え!」
抱えているサンが、そんな事を言うが……
俺の腕から外れる事ができないままもがいている。
「……おい離してくれ!戦えないなんて生き殺しはやめてくれ!」
「無理、断る」
さぁ、このまま絞めて意識を飛ばしてしまおうか。
「―――なんてな!俺は攻撃されるほど興奮し!強くなる!」
▶サンのPowered by excitement
サンの力は
しかし抜け出せない
「うごぉごごご!負けない!俺は負けられない!」
……強く絞めるほど、反抗は強くなる。
まぁ、どこまで行っても負ける事は無いだろう。むしろ、このまま強めればサンが息絶える。
―――ドサッ
仕方が無いので1度地面に放り投げると砂埃が舞う。
「ふぅ……ふぅ、や、やるじゃねぇか」
「私のお師匠ですから!」
息を苦しそうにするサンの横で鼻を高くするリウさんがそんな事を言う。……師匠か。
「ひぃ、ふぅ、……まぁ今のはあれだ。俺を離したお前の負けってことでいいんだな?」
「な、お師匠は負けてません!」
「だが、離したのも事実!俺は勝った!」
「お師匠の勝ち!」
「俺の勝ちだ!」
「お師匠の勝ち!その発言、撤回してください!」
そんな不毛な言い合いを前に、ヨーとフィリアさんが遂にその場に座った。
……本当に、何を見せられているのか。
「……分かった。じゃあ弟子であるおめぇが俺に勝てたらまぁ、認めてやってもいい」
「臨むところ!お師匠に教わった極意、今ここで見せてあげます」
▶しかし勇者は、何も教えていない
「リウさん頑張って下さい。応援してますよ」
「サンに負けたらだめだヨー!」
「頑張れ」
「ふ、どうですがこの声援?貴方には無いものです」
「おいおい!声援なんて関係ないだろ?ってかヨー!なんでおめぇが人間側なんだよ!」
「ヨーは目的のために魔族を裏切ったんだヨー!」
「ッ……そうか」
……なんだ?サンが苦虫を噛み潰したよう顔をした。
「まぁいい!やるぞ!」
「返り討ちです!」
▶サンの
サンの猛攻がリウを襲う
しかし、リウは後ろに飛んで避けた
「なっ……避けるなんて汚ねぇ!男なら正々堂々殴り会いだろ!」
「私は女の子です!」
▶リウの昇給拳
サンの腹部に攻撃が直撃する
サンは大ダメージを受けた
「くっ、いい技じゃねぇか!興奮してきたあ!」
▶サンの力が漲る
▶サンの
更にスピードと威力を増した攻撃がリウを襲う
咄嗟に受け流したが、大きなダメージを負った
「くっ……」
「おうおう!止まってるならその隙にドンドンに行くぜ?」
まぁ、強いな。
けどリウさんなら勝てる。もう少し未来の彼女を知っているからこそ分かる。
「俺は!負けねぇんだよぉ!」
「……今!」
▶リウのぶん回す
リウは襲いかかってきたサンの一撃を避けてから身体を掴むと勢いをそのままに、投げ飛ばした
彼女もまた、天才的な武道家。その才能は状況に適応して、進化する。
「ぐ……女に、俺が吹き飛ばされた?」
サンはボロボロだ。あの勢いで飛ばされれば流石のサンの負け……いや、更に力を解放しようとすれば分からない。
ただ……その場合は、サンの身体が限界を迎えて命を落とすだろう。
止めるべきか?
―――いや、その必要は無さそうだ。
「……いい勝負でした」
倒れたサンにリウさんが手を差し出す。
「は?お前……なんだよ」
「闘った後は、互いに素の健闘を称え合う。武道家として当たり前の事です」
「……人間ってのは、分かんねぇ生き物だな。だが面白い!そうか、お前は確かに強いみたいだ……力だけじゃなくて…心も。
あぁ、お義父さんの言うこと……そうか今更分かった」
◇
「お師匠!私勝ちました!褒めてください!」
「よしよし偉い偉い」
「えへへ」
なんだろうか、最早尻尾をブンブンと振っているようにすら思えてきた。
…このリウさんを見てると少し、元気が貰える。
「なぁ、ヨー」
……サンが、ヨーに。
「ど、どうしたんだヨー?」
「お前……裏切ったって本当か?」
「う、怒ってる?」
「いんや、怒ってなんかねぇ……むしろ自分にムカつくくらいだ。お前みてぇな弱っちい魔物が抗ってんのに俺ときたら……結局また魔王の野郎にビビっちまってた」
「……そうなのかヨ?」
「あぁ、俺はお前が羨ましい」
……こいつもこいつで、訳ありか。
「だったらサンも一緒に来るんだヨー!」
「……は?」
「勇者!それでいいヨねー?」
「あぁ、味方が増える分には」
……都合がいいんだ。
「フィリアもいいー?」
「……私は皆さんの決定に従います」
「じゃあ、リウはどう?」
「もちろん歓迎です!これでサンは私の弟弟子!」
「は!?俺がこいつの弟子になるのかよ」
「お師匠は凄いんです!弟子になれる事を光栄に思ってください!」
「……しゃあねぇ、よろしくな?師匠さんよ」
これは……とんでもない事になったな。
それでも事態は、いい方向に進んでいる。
……進んでいるはずなんだ。
▶サンが仲間になった
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