旅に犠牲は付き物

 ―――正直に、変な気分だ。

 今回の旅での目的を考えれば今の状況はすごく都合がいいとは言える。

 それでもヨーこいつを仲間として接する事になるなんて思いもしなかった。


 それに過去の話まで聞かされて、俺は何を思えばいい?

 少なくとも同情なんて、1ミリたりともしたくない。



「強そうなやつがたくさんいる……怖いヨー」

「大丈夫です、私がついてますから」


 闘技場へ着くと、ヨーが体を震わせて、それを見たフィリアさんが手を握る。


 ……今回の目的は、サンの捕縛。つまり次からサンも連れていく事になるが、そうなったら今以上にヨーが怯えそうだな。

 そんな……無駄な心配をしてから、俺は試合へと向かう事にした。



「さぁ始まりました!地上1闘技場の勝ち抜きトーナメントォー!優勝したものにはなんと、なんと、なんと!金と奴隷が与えられます!」


 司会の声と共に、檻の中からフィリが 姿を見せる。

 フィリは今回、どうするべきだろうか。今までの記憶も無くて、呪いを解いてあげる事も出来ないのなら……


 試合を進め、決勝戦が始まる。


(ドォーン!!)

「魔王四天王、物理のサン参上!」


「なっ、どうしてここに四天王が!」


 サンが……来た。


「素晴らしい!なんたる鍛え抜かれた至高の肉体!至高の領域に至った人間が2人もいるなんて俺は運がいい!それに、死んだと思っていた奴も!おーいヨー!そんな所で人間となってやってんだー!」


 ……っ、最悪だ。サンに声をかけられたヨーが反応した。距離があるから声は正確に拾えないけど、明らかにヨーとフィリアさんの周囲がザワついている。


「まさか観客席にも魔物がいるのか……?」


 シールドさんも困惑している。


「おっと!油断大敵〜」


 ▶サンの散々ラッシュ

 シールドが傷を負った


「くっ……」


 あぁ、予想以上に面倒くさい事になった。

 ……やる事やって、逃げよう。


「さぁ!お前らも魔族に―――」


 ▶勇者のハイキック

 サンは意識を失った


「……すみません、試合棄権します」


 ◆


「ぁ…どうしてサンがここにきたんだヨ……」


 私がヨー君と試合を観戦していると、それは突然に現れた。

 それは図体の大きな、真っ赤な魔物で……観客席ここまで届く声で自らを四天王だと名乗った。


 それに……ヨー君が言葉に反応してしまったせいで周りの人はこちらに恐怖……そして敵意を向けているのが伝わってくる。


「ここ怖いヨ……嫌だヨー!」

「……大丈夫です、ヨー君は私が守ります…」


 四天王は、あの人が倒してくれる。

 だからその間は私がヨー君を守る……そう覚悟を決めた時だった。


「フィリアさん!ヨー!今から逃げるから捕まってて!」

「え……?」


 突然目の前に……大きな魔物を抱えて彼は現れた。そして―――飛んだ。


「うわわわ!高いヨー!!!」

「危ないから口閉じろ!」


 ……私、死んでしまうかもしれません。



「うぅ……すごく、怖かったです」

「……怖かったヨー」


 私は、無事に地面に着いて生きています。 地面に直撃間近!と言った所で彼が何かの魔法を放ったようで、衝撃が和らいだようです。


「すみません……騒ぎになる前に逃げたかったので」


 彼の言うようにヨー君が魔物である事があの場にいた何人かに気づかれていました。

 もし逃げるが遅れていればどうなって居たかは分かりません。何せあそこには武人がが沢山いて、その中で魔物を憎む人がヨー君と私に危害を加えてきた可能性もあるのだから。


「いえ、助けてくれてありがとうございます……ところで、その魔族はどうするのですか?」

「あぁ、とりあえず連れていく予定です。何か聞けることもあると思うので」

「ひぇ、サンが目覚めたら……」

「大丈夫。こいつは俺が見張るから」

「心強いヨー!」


 本当に、心強い。この人の強さは底知れません。四天王を名乗る魔物を1分もかけずに意識を奪ったのだから。

 けれど……先程からなんだか彼の表情に曇りが見える。怪我を負った訳でもなく、理由は分からないけど何か、悲しく見えた。













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