追憶1
「―――勇者よ!そなたに魔王討伐の使命を与える!」
『……うん、こりゃあ今俺、夢見てるわ』
目の前にいる王と、そして自分自身の姿を見るなり勇者はそう結論付ける。
『あれかなぁ、寝る前に昔話したから夢に出ちゃったかぁ……まぁ、そういうこともあるよね。間違いなく夢!だって俺の身体も透けてるし!』
半透明となった姿を見ながら、勇者はうんうん、と頷く。
『いや、夢ってか過去の記憶見てるパターンも……まぁ、細かいことはいいか!』
そして一旦、勇者は夢の中の自分を追いかけることにした。
「……また、1から。でも今度はソルドさんの居場所も分かる」
『ふむ、ソルドさん―――ってことはこりゃ大分若い頃の俺だわ。もう空気が若々しい!まぁ……重くはあるけど』
そうして酒場へと向かう自分を勇者は追う。そして、酒場で飲んだくれたエー達の姿を見つける。
『いやぁ、相変わらずエーさん達は昼間から酒飲んでるなぁ。まぁ同じ事を繰り返してる以上は当たり前だけど。でも、最後に一緒に旅したのいつだったかなぁ。確か100と少し繰り返した頃……すっごい前だなぁ』
勇者はふよふよと浮かびながら後方腕組体勢で思い出に浸っている。
『確か、酒場に入ったら仲間にしてくれ!って感じに言ってくるんだよね』
「おい!あんたもしかして噂の勇者様か?もし良かったら俺達も連れてってくれよ!力になれるぜ?」
『そうそう、こんなだった。……まぁ、エーさん達多すぎるからね、1人で全部解決できる様になるまで連れてくこと無かった。かといって断ると皆して囲んで来るし。ほんと、寄って集って皆悪酔いしてるからなぁ……酔って無かったらいい人なんだけども』
「すみません……」
「おいおいーまさか俺達の善意断るってのか?」
「すみません」
「おおおん?なら俺たちの力実際に見せてやるぜ!」
『うん、まぁ……。これでエーさん達から、ソルドさんが助けてくれて―――みたいなね!』
過去の自分に襲いかかるエー達、そしてそれを気絶させるソルドが現れる。
「大丈夫だったか、少年」
「はい」
『くぅ!かっこいいね!今回もこんな感じで助けて貰ったなぁ……
んで、またしても過去の事話して―――あれ?』
「フィリ、よろしくね」
『いきなり飛んだな』
光景は、ソルドに助けてもらったところからフィリが仲間となった所へと移り変わっていた。
『うーん急にフィリ!フィリ見てるとさっきまでの事思い出して恥ずかしくなってきた……』
幽体だが、その顔は微かに赤くなっている。
『……そういえば、フィリはこの時からだったかなぁ?あ、うん、明らかに距離感近いし、もう記憶完全に引き継いでるわ』
そうして勇者は飛ばし飛ばしの記憶の中で自分を見ていく。
『……速い、感傷に浸るまでもなく進んでいく。ビルさんとかいつの間にか仲間になってるし。で、今回は確か雪の森に……行ったんだったかな?』
「それじゃあ、雪の森に行きます」
『ビンゴだ!まぁ、メランに至っては雪の森で倒すか魔王城で倒すかの2択だもんなぁ。……メランには苦労したなぁ。だって……』
「───う、うぁぁぁあぁぁ」
雪の精霊は暴走している。
『この時点じゃメランにも勝てないし、なんなら妖精さんの暴走に巻き込まれてお陀仏……メランって厄介だわ!雪の森で対峙する場合は森が燃やされる前に倒さないとだし、魔王城で対峙するなら魔王を先に倒さないと復活しちゃうし』
◇
勇者は次の記憶へと飛んだ。
「……え、フィリも記憶を引き継いでる?」
「うん、勇者……と会ったら……思い、出す」
『こ、これは!ラブケーンの宿屋!……すんごい飛んだなぁ。今回は魔王城ルート行ったみたいだけど……このタイミングでフィリに打ち明けられたのか』
「でもなんで」
「わか……らない、けど背負うって、決めた、から」
「フィリ……」
『うん泣ける。絆だなぁ……』
勇者は過去のフィリの発言に対してしみじみとしている。
「―――さぁ、今回は復活出来ない様にメランを倒す!」
だが、勇者が絆に感動している次の瞬間には魔王城の前に移動していた。
『また凄い時間が……感傷に浸る暇もねぇや』
「……よく来たな、我こそは四天王最強のメランだ」
▶追憶のメランが現れた
「すぐに……終わらせる!」
▶勇者の
メランの右腕が吹き飛んだ
「……!まさか、これ程に強いとは、予想外」
『よしいいぞ俺!頑張れ俺!』
勇者は過去の自分が戦う姿を見て応援している。
「ならば、こちらも覚悟の上、相応の技を使おう」
▶メランの追憶の炎
勇者の動きは止まった
『あー!あの技は良くない!俺以外だと避けないと負け確定レベルのずるい技!また……死んだかな?』
「おい!勇者様が、どういう事だ!?」
「……メランとやらも止まっているな」
「助け……ないと」
▶ビルの風爆
風龍の加護の籠った爆風がメランを襲う
メランの炎は揺らいでいる
▶ソルドの
雷を纏った斬撃が風の様に舞いながらメランを斬りつける
メランの身体は揺れている
「くっそ、せっかくの新しい爆弾なのに効いてねぇ……」
「勇者の話通り、流石に強いな」
ビルとソルドは動きが止まったままであるはずのメランにも大きなダメージを与えられないことに困惑している。
『……あー、そっか、思い出した。これで次回以降はメランには勝てるのか』
戦闘を見ていた勇者の表情を少し明るくなった。
「2人……とも、危ない……よ」
▶フィリのハイウォーターストリーム
とてつもない流れの水が複数放たれ、メランの身体を貫く
メランの意識が呼び戻された
「邪魔をされたか……どうやら、恐れるべきは1人では無かったらしい」
『うん、覚醒ですね。引き継いだのは記憶だけじゃない。今までのフィリの力が合わさってすんごく強くなった……』
「我だけでは力不足……しかし―――」
「すまないメラン……城を燃やさないために手加減させてしまい」
『魔王が合流。こうなったら終わりだ』
▶魔王が現れた
勇者一行は、魔王とメランの攻撃に為す術なく、敗れた……
『さて、次はどこ行くなぁ』
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