吸血令嬢の犬

永久保セツナ

プロローグ

「マーカラ……お嬢様……」


 血を流し、仰向けに横たわった男が息も絶え絶えに、自分の仕える女主人の名を呼ぶ。

 男と女主人は燃える古城に照らされて、橙色の光を浴びながら、お互いに見つめあっていた。


「わたくしは……もう長くはもちません……。どうか貴女様だけでも……お逃げ下さい……」


 マーカラと呼ばれた女性は、静かに男を見下ろしている。


「レオス、お前を助ける方法は、あるわ」


 マーカラはレオスと呼ばれた男を救う方法があるというのに、どこか息苦しそうな表情で彼に問う。


「お前は人間を辞めても、命を永らえたいと思う?」

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