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冷たい風に、あごまでの短い髪が揺れた。首元が寒い。


「…居るわけ、ないよね。」


まだ確認してすらいないのに、もう無理だって諦めかけてる。


涙があふれてしまいそう。


秋の夜は寒くて暗くて、路地裏を指定した事に今更後悔。


あの角を曲がれば、約束の場所だ。


ゆっくりと、重たい足を前に出して進んでみる。そして、そっと、角から覗いてみると…。


短髪の男性がひとり、誰かを待っていた。


横顔は、勇一さんっぽく見えるけど、髪型があまりに違いすぎるし、暗いからよく分からない。


私は期待と不安を抱きながら、男性に近付く。

すると、男性は私に気付いたのか立ち上がった。


そして、目と目が合う。


「…海果ちゃん。」


化粧はしていなくて、オネェさんだった頃の面影はどこにもないけれど、薔薇の香りと、その声で、あなただと確信した。


「…勇一さん、来て、くれたんだね。」


近くで勇一さんを見ると、完全に男の人。

私が知っているあなたは、オネェさんだったから、男の人なんだって、改めて確信する。


「約束したから。」


「…来ないと、思ってた。」


「来るよ。好きだから。」


そう言って、ふわっと私を優しく抱きしめるの。

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