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バレッタに罪はないのに、見る事も出来ない。


「…勇一さん。会いたい…。」


薔薇の香りが恋しくなって、あなたに会いたくて。


さよならを言ったのは私なのに、今更後悔するなんてね…。


放課後は毎日、あの路地裏へ寄った。だけど会えるはずもなくて。


住所を教えてくれたけど、行く勇気はない。


冷たく突き放されたら?もしも引っ越していたら?怖かった。何もかもが。


そう言えば、人に言えない仕事をしてるって、一体どんな…。分からない。


「…物語じゃあるまいし、偶然再会しました。なんて事、あるわけないのにね。」


ポツリ呟いて悲しくなった。


あんなにも心地良い居場所は、あなただけ。


あなたとの出会いを思い出す…。

酔っ払いに絡まれて困っていたら助けてくれたよね。


すごく嬉しかったの。たとえそれが嘘偽りでも。


「…勇一さん。」


涙が止まらなくて、路地裏でひとり膝を抱え泣いた。


1年後に此処で会おう。その約束は、今でも有効?

私は会いたいよ。勇一さんは?


夏が終わって秋が来たら、どうか会えますように。約束の路地裏この場所で。

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