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既読も付けずに、私はそのままブレザーのポケットにケータイを押し込んだ。


返事なんてしない。捨てたのは、そっちだもん。


次の日の夕方もメールと電話が来て、その度無視をした。そして3日目の夕方も。


【いつまでも待ってるから。ちゃんと話しましょ?】


本当に、待ってるの?


そんなわけないよ。来ないと分かってて待つとか、むなしくないの?


待ってるわけないよ。絶対に。でも、一応確認しておこう。


私は学校から真っ直ぐ家には帰らず、ウインドウショッピングをひとりで楽しみ、気付けば6時過ぎ。


勇里さんと初めて会ったあの路地裏に歩みを進めてみる。


そっと、路地裏を覗いてみると…。


髪を後ろで束ねた勇里さんが、壁に背中を預けながらしゃがんでいた。片手にはケータイが握りしめられ、どうやら本当に私を待ってるみたい…。


嘘だよ。


ヨリを戻しても結局捨てるのが目的なんでしょ?


やめてよ。どうして期待させるの?


ピコン


私は既読を付けた。


【ちゃんと話がしたいの。待ってるから。たとえ今日が無理でも、明日とか明後日とかいつでも待ってるわ。】

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