第10話 命がけの鉄拳2での対戦!

(安川) そうだ店主は? ゲーセンの店主に助けを求めれば危機を回避できるんじやね?


安川がゲーセンの店内に目をやると、店の奥の暖簾から50代半ば位のテレビで人気を博しているオバタリアンに似た風貌のおばさんが出てきた。


(安川) すいませ~ん! 店主さ~ん、この恐いお兄さんらが店の外に出してくれないんですけど~!


(店主) ボクら~何言うとるんよ~?


(店主) 店の中で起きた事は、ウチは関係ないよ~、自分達だけで解決し~よ!


(店主) あんたらが、ウチの店で揉め事起こすんやったら喧嘩は余所でおやりよ~!


(安川一同) えっ! そんな......!


安川達3人は、ゲーセン内で起きている明らかなカツアゲ、恐喝行為に繋がる不良達のおかしな行動に対して見て見ぬ振りを決め込もうとしていた。


(不良) 何かやっていくか?


安川は、一人のモヒカンで長身の学ランを着た不良に右肩をポンポン叩かれてゲーセンでのプレイを要求された。


(安川) おい近藤、俺さ~対戦格闘ゲーム苦手なんだよ~


(安川) スト2と餓狼伝説ぐらいしか、まともにプレイした経験が無いんだよな~


(中城) 近藤、そういえばお前、わりと対戦格闘ゲームうまかったよな~?


(近藤) まあな、バーチャは、そうでもないが鉄拳なら少しは自信があるかな?


(不良) おう、そこの坊や! 


(近藤) えっ! 俺っすか?


(不良) そうだ、ちよっと対戦しようや!


(近藤) あっ、このゲーム機は鉄拳2か?


近藤は、不良達と対戦するのは気が向かなかったが仕方なく先月に稼働したばかりの最新のゲーム機の鉄拳2に100円玉を1枚入れた。


(不良) お~い坊や! お前はブルースを選んじや駄目だぞ~!


(不良) でも俺はブルースを選ぶけどな~


(近藤) えっ、 マジすか! 


(近藤) それじや、俺が絶対負けるじやないですか!


近藤が不良に対して喰って掛かるのは当然である。


鉄拳2ではブルースの技の破壊力は他のキャラクターと比べて異常に高く、必殺技の連続コンボが極まると対戦相手のHPが90%も削られるので、東京都内の一部のゲーセンではブルース禁止令が出される程の事態に陥っていた。


近藤はパソコン通信の鉄拳2関連の掲示板でいち早くブルースの強さの噂を聞き、自分がブルースを選ばず、対戦相手がブルースを選ぶと言う事は圧倒的に不利な状況に陥る事を理解していた。


(安川.中城) ど~すんだよ近藤?


(近藤) しや~ない! こいつらの勝負を受けるしかない


(近藤) 前門の虎、後門の狼だし、最善の方法を模索して勝つしかない!


近藤は涙を飲んでキャラクター選択画面に表示されたブルースの画面をカーソルで飛ばして別のキャラクターを選んだ。











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