初試合



試練の場の空気は緊張感に包まれ、各参加者の心拍数が上がる。レイはフィンとリヴィアと共に、自分の名前が呼ばれるのを待っていた。彼の隣には、初級格付けの挑戦者たちが並び、互いに励まし合っている。


「次の試合は、レイ・アールスと、初級B格付けのエミリー・クロス!準備はいいか!」と司会者が声を上げる。



レイは名前を呼ばれた瞬間、心の中で高鳴る鼓動を感じながら、訓練場へと足を踏み入れた。エミリーは細身で機敏そうな女性で、手には魔法の杖を握っている。彼女の視線には強い意志が宿っていた。


「私が勝つから、全力で来てね!」エミリーは笑顔を見せるが、その裏には真剣な気持ちが隠されていることを感じ取った。


「こちらこそ、全力で行くよ!」レイも応じ、心を整えた。



試合の開始を告げる笛が鳴り響き、両者は一瞬の静寂の後、同時に動き出した。エミリーはすぐに杖を振りかざし、青白い光の弾を放つ。弾はレイに向かって直進するが、彼は瞬時にフィンに指示を送った。


「フィン、壁を作って!」


フィンは一瞬で水の壁を生成し、光の弾を受け止めた。水が弾けて飛び散り、観客たちは歓声を上げる。レイはその隙にエミリーに近づき、素早い蹴りを放った。



エミリーはその動きを読み、素早く横にかわす。しかし、レイはそのまま回転しながらフィンの力を借りて水流を作り出し、エミリーの足元を流す。彼女はバランスを崩し、倒れそうになるが、すぐに杖を地面に突き刺して持ちこたえた。



「まだまだ、私の本気はこれからよ!」エミリーは強い声で叫び、周囲の水分を集めて巨大な水の槍を作り出した。その槍は直ちにレイに向かって飛んでいく。



「リヴィア、今だ!」レイはリヴィアに呼びかけ、彼女は瞬時に冷気を放出して水の槍を凍らせた。



氷の破片が舞い散る中、レイはチャンスを逃さず、エミリーの元へ突進する。彼の動きは滑らかで、まるで風のようだった。エミリーは思わず驚き、次の攻撃を防ぐために防御の体勢を取る。



「フィン、フィニッシュだ!」レイは最後の一撃を決めるために全力を振り絞った。フィンが周囲の水を集め、レイの身体を包み込むように流れる。



その瞬間、レイは水の力を使い、エミリーの側面から一気に攻撃を仕掛けた。彼の手には水の刃が形成され、エミリーの防御を貫通し、彼女の身体を優しく包み込むように接触した。



エミリーは驚きの表情を浮かべながら、試合の結果を受け入れた。「私の負けです…でも、あなたは素晴らしい精霊使いですね。」



観客からは拍手が沸き起こり、レイは心から安堵しながら微笑んだ。「ありがとう、エミリー。君も素晴らしい戦いだったよ。」



試合が終わった後、レイはエドガーの元へ戻った。彼の視線は誇らしげで、レイの成長を喜んでいるようだった。「よくやった。これからもその調子で行け。」



その後、レイは他の挑戦者たちとも戦い、少しずつ経験を積んでいった。試練の場での戦いは、彼に新たな力を与え、精霊使いとしての成長を促していく。



そして、彼の心にはさらなる目標が芽生え始めていた。王都での試練を通じて、彼はもっと強くなり、精霊たちと共に世界を守るために力を尽くすことを決意したのだった。

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