こそっと恥じらう姿を俺だけに見せてくる学園のお姫さま

雨音恵

プロローグ

 ── いつもどんなことを考えながら写真を撮っているの?───


 いつのことだったか忘れたが、父さんに聞いたことがある。

 きっかけは覚えていない。ただ何となく子供ながらに気になったか、もしくは〝お父さんとお母さんのお仕事について知りましょう〟みたいな宿題を出されたとか、そんな些細な理由だったと思う。


 ───そうだな……あえて言うなら一瞬の美しさを逃さず永遠に記録する、かな?───

 ───? それってどういうこと?───


 成長した今ならその言葉の意味がわかるが、ただその時ははにかみながら話す父さんの言葉の意味が理解できなかった。何だよ、一瞬の美しさを永遠に記録するって。いくら何でもカッコつけすぎだ。


 ───大きくなれば巧にもわかるさ。まぁそのためにはお前も見つけないといけないけどな───

 ───見つけるって……なにを?───

 ───決まっているだろう? それはだな……───


 自慢気な顔で父さんが何を言ったのか。それを思い出すよりも前に俺こと庵野巧の意識は現実に引き戻された。


(……一体何が起きているんだ?)


 晴れて高校生活二年目を迎え、新しいクラスにもようやく慣れてきたある日の放課後。偶然通りかかった空き教室で俺はそれを目撃してしまった。


「んぅ……中々、上手く……撮れませんね……」


 学校内、いや日本国内に範囲を広げてもトップクラスの美女にしてクラスメイト、四ノ宮しのみやリノアさんが机の上に座って自撮りをしていた。

 しかもどういうわけか制服をはだけさせたみだらな姿で。

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