1章 15話 口先だけか
「肌の色による差別、絶対反対!」
「白人優先の姿勢は時代遅れ!」
今日も私たちは車の進行を塞き止め抗議の行進をする。凍てつくような寒い日でも今日みたいな灼熱の炎天下でも
ガヤはうるさいけど私たちがもっと声を出せばいい。真後ろにいる車のクラクションはうるさいけどこっちに注目してくれる人が増えると思うの。でも、私は気づかなかった、私を呼び続ける彼の声が
「自分が何をしたのか分かっているのか!」
家に響く怒号の声。
「あと少し遅れていたら命の危機に瀕していたんだぞ!」
「でも、平和な世の中には大事なことなの。わかって」
「お前……」
これから多くの人が苦しまないように――彼なら分かってるれる。そう思ってた……
「娘1人守れない人間が平和な世の中なんて作れるかよ!」
彼は深いため息をついて私に背を向けた。
「俺たちはここを出る。」
「で、出るって何よ!?」
「愛想がつきたって言ってんだよ。お前の話は聞くに耐えん。」
「
「当たり前だろ、俺が連れていく。こんなとこに残したらもう2度と会えなくなる。」
そう言って彼は勢い良くドアを閉めた。
それから私は
「もう終いか?」
神代は羽織をポンポンとはたいてアンジェリカに背を向ける。
「お前の言う"平和"や"公平"などに熱を感じん。そこらのガキンチョのイタズラの言い訳の方がよっぽど言いたいことが伝わる。」
じゃあ、とその場を離れそうとした神代の後ろでカチャリと軽く重い音がなる。神代は足を止め口を開く。
「何をしておる?」
「わからない?」
「分からぬから聞いておる」
「見えないもんね。教えてあげる。私は今あなたにピストルを向けているわ」
神代は彼女の答えにため息をつく。
「ワシはそんなくだらんことを聞いておらん。引き金を引かず構えるだけなのかを問いておる」
アンジェリカはその言葉に一瞬きょとんとして笑いだした。
「面白いことを聞くのね。」
「敵が背を向けた瞬間は攻撃できる最大の瞬間、引き金を引いたらそれだけでほぼ確実に弾はワシに当たる。しかし、お前はそれをしなかった。」
神代は振り返り彼女を見つめる。アンジェリカは神代にピストルを向けいつでも引き金を引けるように構えていた。
「それはそうよ……でもね、私たち、私の目標は"差別無き平和で公平な世の中の実現"
アンジェリカはそう言いながらピストルに詰め込まれた弾をすべて取り出し床に捨てた。
「だから私は
ぽいと弾の無くなったピストルを後ろに投げ捨てポケットからメリケンサックを取り出した。
「会話だけでは理解が難しいことも多いことを学んだわ。」
「学ぶこといくつになってもある。何を学んだか学べたかを理解することは良いことだ。」
「私は"拳で解決することもあることを学んだ"わ!」
メリケンサックを装着してファイティングポーズをとる。
「……口先だけのペーペーだと思っていたが…しっかり言えるじゃねーか……なら、ワシもそれなりの姿勢を見せんとな!」
神代は真っ直ぐアンジェリカに向き合い腕を組む。
「老害は嫌われるわよ?」
「老害上等!新たな時代は若者が作るものだが
静まり返る部屋に先ほどとは比べ物にならないほどの緊張感が走る。
「礎…そうね、じゃあ遠慮なく闘わせてもらうわ。私はアンジェリカ・ガルシア――差別無き平和で公平な世界を実現させる者――私の意思、その身で受け止めきれるかしら!?」
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