第14話 反省会と幼女のお叱り
どうしてこうなった……?
「聞いてぃるのかぁ! 山田どのぉ! 今日助けてもらったのがぁ、どれほど嬉しかったかぁぁ~」
「うふふ~これとっても美味しいですわ~。おじ様もいかがですか~」
両隣からの
頭を抱えたいところだが、両腕を確保されていて出来ない。
左隣に座る藤堂さんがぐいぐい押し付けてくるボリューム豊かなやわらかいものに抱えられて幸せな左腕。
右隣に座る
貴賎はないが、現実は残酷である。
「だからぁ! 山田どのぉ! 私のような女をぉ、助けてくれる御仁がぁ、どれだけ少ないかぁぁ~」
「うふふ~こっちのお酒も美味しいですわ~。おじ様ももっと飲みましょう~」
と言うか、上級ダンジョン探索についての反省会、という話だったのでは……?
上級ダンジョンで特異個体らしき
帰還後、すぐにギルドにも報告した。
報告を聞いた西野さんがすぐに支部長室に走って行ったので、藤堂さんの言っていた通り、ギルドからの異常調査依頼がすぐに出されそうだ。
帰還報告のついでに売店の佐藤さんに魔石とドロップアイテムも預けた。
それじゃあ解散にしましょうか、という辺りで腹減ったし晩飯どうしようかなぁとつぶやいた俺。
その言葉を耳ざとく聞き逃さなかった藤堂さん。
「おじ様! お食事に行きましょう! 今日の反省会ですわ!」
キラキラした顔でふんす!となっていた。
一条さんの方を見ると難しそうな顔をしていたので断る方向に持って行こうかな……
「いや、あの、行きつけの小汚い居酒屋にでも行こうかと思ってるんで。ちょっと若い女の子を連れていくには向かないお店だから……」
「まぁ! 大丈夫ですわ!」
なんか余計に目がキラキラしてしまった気がする。
一条さんはあちゃーって顔で首を振っている。
どうもお嬢様的な知的好奇心を刺激してしまった模様?
そのあとは何を言ってもふんす!を崩せなかったので、結局おやっさんの店に3人で行くことに。
探索帰りは流石に汗とか汚れとか色々ひどいのでギルドにあるコインシャワーを浴び、着替えてから再集合した。
俺は”アイテムボックス+”に着替えとか装備とか入れているが、普通はギルド内の有料ロッカーを月極とかで借りるらしい。
「おじ様、お待たせしましたわっ」
ギルドのエントランスの隅っこにあるベンチでぐったりと休んでいたら女性二人がやってきた。
探索装備から普段着に着替え、おしゃれな装いだ。
藤堂さんは高級そうなゴスロリっぽい雰囲気は変わらず。
フリフリ感が増したかな?
見て見てって感じでこちらを見つめてくる藤堂さんからなぜか漂うワンコ感に思わず頭を
一条さんはシンプルなパンツとシャツで、カッコいい感じ。
俺? ジーンズとシャツだよ?
ジャージから着替えただけ褒めてほしいくらい。
二人と一緒に行きつけの居酒屋へ。
待っていた間におやっさんへ電話を入れておいたのですんなりだ。
普段はカウンターばかりなので知らなかったが、奥に個室なんてあったらしい。
おやっさんにお酒と肴を適当に出してとだけお願いして個室へ入る。
「えっと、それじゃぁ、お疲れ様でした」
「お疲れ様ですわぁ」
「お疲れ様でした」
おやっさんがすぐに持ってきてくれた生中で乾杯。
一応事前確認したら藤堂さんは24歳、一条さんは33歳らしいのでみんなで生中だ。
「なんにせよ、無事帰ってこられて良かったです。一条さんがいなかったら危ないところでした」
「……いや、そんなことは無い。結局は魔力切れで足を引っ張ってしまった……」
「佳乃が悪いんじゃありませんわ。万全のコンディションではないのに、私が無理を言って4層まで連れ出したのが原因ですわ」
「いや……」「しかし……」「でも……」
反省は大事だと思うが、放っておくとずっといやいや言い合っていそうだ。
少し助け舟を出すか。
「ぁー……えっと、一条さんの使っている盾って、クレスト社のちょっと古いシリーズの盾ですよね?」
「ん、あぁ。よく分かったな。昔から使っていたストロングガード・シリーズの盾でな。古い型のものなんだが、手に馴染んでしまってな」
「あれ、持ち手のところ壊れやすくないですか?」
「ほぅ……よく知ってるな。そこだけがちょっと不満でな」
一条さんが驚いた顔をする。
ストロングガード・シリーズはどちらかというと
自身のジョブ向けでない装備シリーズなんて普通はそんな詳しくないだろう。
「ぁー、実は俺、クレスト社の設計部門にいた時代がありまして。ストロングガード・シリーズも関わってたんですよね」
「そうなのか!」
「持ち手のところは設計ミスにかなり近い感じなんで、ちょっと追加工するだけでかなりマシになりますよ。試してみるなら職人さんにも伝手あるんで、手配できますよ」
内部事情をちょっと漏らしちゃうけど、まぁもういいよね?
伝手の方は会社経由というより、自分で教えてもらいに行ったりして仲良くなった職人さんだからまぁ大丈夫だろう。
「そうか、それはちょっと頼みたいな。だが、メインの装備だからあまり長期間預けるのは難しいぞ?」
「簡単な追加工なんで、事前に連絡しとけば即日で出来ると思いますよ。なんなら今度一緒に行きましょうか?」
「それは助かる」
「むぅー……佳乃だけずるいですわ」
嬉しそうな一条さんと対照的にむすーっとなってしまった藤堂さん。
「ぁー……藤堂さんの装備はオーダーメイドっぽいので、たぶん俺じゃ手をつけられない気がするんですよね……」
「装備じゃなくてお出かけの方ですわっ!」
「へ? ぁー……。一条さんが良ければ、3人で行きますか?」
「「……」」
二人ともむすーっとなってしまった……
おじさんには難しいよ……
そしてその後、なぜかお酒をたくさん飲む流れになってしまい、気づいたら二人が俺の左右に移動。
あれよあれよと言う間に
思い返してみても、流れがよく分らん……
なんとか二人をタクシーに押し込み、帰宅させて店に戻る。
「おやっさん、騒がせてごめんね」
「山ちゃんがあんなきれいな子たち連れて来た時はビックリしたさ。いい子たちみてぇだな」
「そうだね、まだ会ったばっかりだけど、いい人たちだと思う」
ちょっと変わってる気もするけど。
「さて、山ちゃんもそろそろ
「そだね……ご馳走様」
「今日も帰ぇるのは裏山の方からにしな」
「今日も?」
「いいんだよ。あと、これも持ってきな。
「え? 誰って?」
「
そう言ってまた酒瓶と風呂敷包みを持たされ、有無を言わさず店を追い出される。
夜道を歩きながら先日の夜のことを思い出す。
こないだ会ったって、やっぱりあの狐耳の
夢じゃなかったってこと……?
そして道沿いの小さなお稲荷さんの脇あたりで不意に周囲の音が消え、急速に霧に包まれる。
やはりすぐに霧は晴れ、真っ赤なお
「おそぉぉぉぉぉい! 依り代を見つけるのにどれだけかかるのじゃ!」
「ぇ……」
気づいたら目の前で仁王立ちしている銀髪狐耳の幼女から叱られる。
まさにプンプンという感じに怒っている。
「ぇ……ぁ……すいません」
今回は声は出るようだ。金縛りもない。
幼女がとてとてと更に近づいてきて、しげしげと顔を覗き込んでくる。
「むぅ。まぁ少しは鍛錬も進んどるようじゃの。仕方ない! もう少しだけ待ってやるから、早くするんじゃぞ! もうわしは待てんからな!」
「はぁ……」
「はぁ、じゃない! 分かりましたじゃろ!」
「は、はいっ……分かりましたっ。頑張りますっ」
「うむ! 精進するように!」
瞬きをした次の瞬間、気づけば裏山の小さなお稲荷さんの前である。
幼女も、真っ赤なお社も、全部消えている。
あれが、
次におやっさんの店に行ったら詳しく聞こうと思いつつ、俺は手ぶらで帰宅の途に就いた。
【ダンジョン】探索者雑談スレ Part99【最高】
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250:名無しの探索者
最近、クレスト・パーティーの配信とか全然なくない?
鎧熊にボコられた配信の後。
251:名無しの探索者
バーニングソードwwwWWWwww
252:名無しの探索者
Bランクとかのパーティーでまともに探索配信をしてくれる貴重な存在だったんだがなぁ
253:名無しの探索者
公式の投稿も更新頻度めっちゃ下がったよね
254:名無しの探索者
なんか他によさげな探索配信者を探さないとかねぇ
良さげなのいない?
255:名無しの探索者
聖女団が定期的にやってる配信は?
256:名無しの探索者
信者たちのとこはちょっと……
257:名無しの探索者
あそこは視聴者がガチすぎて……
258:名無しの探索者
聖女ちゃんは可愛いんだけどね……
259:名無しの信奉者 No.1029
今日も聖女ちゃん様のおかげで辛い仕事も耐えられます。
ありがとうございます。
260:名無しの信奉者 No.569
今日も聖女ちゃん様のおかげでご飯がおいしいです。
ありがとうございます。
261:名無しの探索者
草
262:名無しの探索者
なんか湧いたw
263:名無しの探索者
カエレw
264:名無しの探索者
ぉ、クレストの探索配信の告知出てるぞ
265:名無しの探索者
マジか。どこ攻めんのかな。
266:名無しの探索者
ほんとだ、告知出てる
明後日の夜か
267:名無しの探索者
告知だとまた神藤市の上級ダンジョンらしい
あの辺だと配信映えしそうなダンジョンはあそこだけだもんな
268:名無しの探索者
クレストの配信、カメラさん変わったっぽいんだよなぁ
前回酔っちゃった
269:名無しの探索者
山さん辞めちゃったって噂だしな。
アキラメロン
270:名無しの探索者
まぁ明後日は一応見るつもりだけど
明日暇よな
271:名無しの探索者
それな。明日面白そうな配信ない?
教えてクレメンス
272:名無しの探索者
配信慣れしてない感じだが、カリンちゃん可愛いぞ。オヌヌメ。
https://www.dungen/×××××××
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
筆者は主人公とヒロイン達がいちゃこらしてるのが非常に好きなので定期的にこんな回がある予定です。
フォローと★★★がまだの方は執筆のモチベアップになりますので、ぜひよろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
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