第13話 「終焉」
静寂の中、突然一人の近衛兵が叫びだす。
「よくも国王陛下を!! 許せん!!」
静寂を破る発言は遠くまでよく響きわたった。
「黙れ!」
レイアは
「あああ! ダメですよ、これ以上は!!」
エレノーラ様が飛び出し、近衛兵に対し右手を構える。
「ハイヒール!」
聖女の魔法は近衛兵の身体を
「おのれ……」
「うっ!」
突然の事に驚くレイアから言葉が
私は唇を離し、レイアを見つめる。レイアの顔は心なしか赤らんでいるように見える。
「きゅ、急に何をするのじゃ!?」
「すまないレイア。もう、いいんだ」
レイアは我を取り戻したようで
「タクト、情けをかけるでない。
レイアの言葉にハッとなる。
「そうだな。私がやるべきだったよな」
「いや、そなたが手を汚さぬともよい。わらわの役目じゃ」
「すまん」
私はそれ以上言えなかった。
「気に《や》むでない。わらわは魔王じゃ。わかるな」
私の目から涙がこぼれ落ちる。愛しい人にこのような事をさせてしまうとは。
「レイア……」
私はもう一度、レイアに口づけする。私にはそれしかできなかった。だが、レイアが私を引き離す。
「も、もうよいと言っておる……」
そう言う彼女の顔がなぜか
私達の行為を
その中でエレノーラ様だけが動く。
「兵士の皆様も元に戻して差し上げます」
聖女はそう言うと、両腕を広げ、呪文を唱える。
「エリアヒール!」
まばゆい光が辺り一帯を包み込むと、倒れていた兵士達の傷がみるみる回復し、意識を取り戻す。国王以外のすべての者が、元の状態に戻った。
兵士達や国民達がその奇跡にようやく声を上げる。
「さすがに首が飛んだ命までは治せませんわ」
エレノーラ様が申し訳なさげにつぶやく。 私は技を発動した彼女に気づき、
「師匠!」
「その声は、タクト?」
「はい! ご無事で何よりです」
「貴方達、とんでもない事をしてくださいましたわね」
エレノーラ様が
「お
共に降り立ったレイアがけしかける。
「貴女は一体?」
戸惑うエレノーラ様に私が答える。
「師匠、この女性が魔王です。今は私の妻です」
「わらわは魔王クライスラインじゃ」
「ええええええええええ!!!!!」
とんでもない大声を出してエレノーラ様が驚く。まあ無理もない。きっとダブルで驚きなんだろう。
そんな中、国民達の歓声が一層大きくなる。
「聖女様、ありがとうございます!」
「あの国王を倒してくださった! 我々の痛みを思い知らせてくださった!」
「誰かは知らないけど、ありがたい事です」
「俺達の苦しみを、よくぞ代わりに
国民達の歓声に交じって、直面する事態に対して本音が
よほど国民達の間で不満が
「タクト、よく帰ってきてくれたな」
イグノール達が私に気づいてやって来る。
「ああ、魔王なんだ。私達は結婚したんだ」
「け、結婚!!!!」
イグノール達は驚き
「ということは、あの時魔王にとどめを刺さなかったのは?」
クローディアが私に鋭い視線を向けて尋ねる。
「あ、はい。その…… あの時はすでに魔王の美しさに
言いながら、私とレイアは顔を真っ赤にしてしまう。
「アホだな、お前は。笑うしかないな」
クローディアに思いっきり
爆笑するクローディアをイグノールがたしなめつつ私に投げかける。
「それは置いておいて、この後の処理が大変だな。どうするんだ?」
「レイアが言っていたように生き返らせなくもないが、それができたとしてあとが大変だぞ。きっとお前達を処刑するだろうな。どうする?」
「それは俺達も嫌だな。どうしたものか……」
「それは我らに任せてはくれぬか」
悩む私達のもとに、レガリック将軍が現れる。
「将軍!」
「勇者イグノール、そして皆さん、大変すまなかった。せめてもの
処刑されかけた者達にご免では
「私は構いませんわ」
エレノーラ様が即答する。
「俺達もそれで構わない。ただし処刑は
イグノールがパーティーを代表して発言する。
「わかった。ではこの件は我々で処理させてもらう。改めて、本当にすまなかった」
あ、そうだ。忘れるところだった。私はレガリック将軍の方を見て一礼した。
「レガリック将軍」
「何か」
「国王の遺体も、どうぞよろしくお願いします」
「しかと
「ありがとうございます」
レガリック将軍は私達に深く一礼すると、兵士達と共にその場の収拾に戻っていく。一番厄介な問題を
私は改めてレイアにエレノーラ様とイグノール達を紹介する。レイアもイグノール達の事は覚えていたようだ。
「お
「まさか生き返って我々の前に再び現れるとは、ちょっと思いもしなかったがな」
「そうだな。壮絶な戦いだったからなあ」
バルドス達もあの戦いを思い出しているようである。
「そしてお
「魔王に
「師匠、厳しいです」
私がエレノーラ様を
「レイア、どうしたんだ? 元気ない気がするが」
「な、何ともない。気のせいだろう」
少し
「ところで聖女、よければわらわ達のところへ来ぬか?」
「何言ってるんですか? 行きません。これから色々忙しいのですから」
「そうか、それは残念じゃのう」
「レイア……」
レイア、今日のお前はホントどうしたんだ? 私は心底心配だぞ。
それにしても今日は色々あったし、これからも王国は
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ここまで読んでいただきありがとうございます。物語はまだまだ続きます。引き続きお楽しみください。
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