第130話 日英同盟締結とスーパーODA割引券

 1575年3月10日

 イングランド王国


 ドーバー海峡戦後処理の会談に、ロンドンの約30kmほど西のテムズ川近くに建つウィンザー城を指定した織田信長。

「なかなか良い城だ、環境も良く部屋からの眺めも申し分ない。」


 エリザベス1世

「よくこの城の存在を御存知でしたねマイダーリン。」


「エリザベスいやグロリア。愛しい人の事を、もっともっと知りたいと思うのは当たり前であろう。」


「まあダーリン。私は今すぐ大日本皇国の織田城へ嫁ぎたい。このまま連れて行って下さるかしら。」


「それは構わぬが調印文書にサインをしなくてはなるまい?」


「はいお待ちを」

 そう言うと内容の確認もせずにさっさとサインをしてしまうエリザベス1世。


「終わりましたよ、さあ参りましょう。一刻も早く濃姫様を筆頭とした、ダーリンのハーレム1員の仲間に加えてほしいの。」


「よかろう」

 シュポ!エリザベス1世を収納した信長。


 2人のやり取りを茫然と見ているしかない、敗戦の将イングランド重鎮達。


 *****


 ドーバー海峡で海軍が全滅させられた日から今日までの10日間。無数のオスプレイ&アパッチによりイングランド国中にバラ蒔かれる大量のビラ。


 もちろんこの男(浅野翔吾)がビラだけで済ますはずも無く、全世界配信でも連日

「おはようございます、浅野翔吾です。親愛なるイングランド国民の皆様。今朝もNewsの前に割引券ビラ蒔き時間の告知です。

 本日は12時・15時・17時の3回となっております。

 3月10日・日英同盟締結後の翌日から、イングランド全国に500店舗出店する"ODAスーパー"全店で使用可能な割引ビラ。

 1回の買い物で1枚使用できる30%の割引券。どんどん拾って貴女も私も行きましょう買い物するなら"ODAスーパー"どうか宜しくお願いします。」


 News女性キャスター(Android)

「私も毎日拾って10枚持ってますよ。」


 News男性キャスター(Android)

「えっ?東京在住の貴女がどうやってイングランドのビラを拾えるんですか?」


「ハッ!そ、それは…つまり…取材ですよ取材(汗)」


「取材?イングランドに?」


「そ、そうですよ!ドーバー海峡海戦後の現地取材に行きましたから!(キッパリ)」


「……毎日拾ってると…さっき言ってましたが?」


「アヤ!言葉のアヤです(汗)」


「まさかとは思いますが、転移ルームを私用で勝手に使ってませんよね?」


「違います!私は比較取材をしていたんです。」


「比較取材?何と何を比べたんですか?」


「1万機を超えるオスプレイ&アパッチが連日、割引券をばら蒔いている平和的な光景に感動しながらも。。。」


「しながらも?」


「もしそれがビラでは無くB-2 スピリットでの空爆なら、イングランド王国はどうなってしまうのか?それの比較取材です。」


「…………………何言ってんだあんた!」


「家計を助ける30%の割引券と火の海になる空爆と、どっちが得か?良~く考えて見よう!」


「カット!カット!その馬鹿女を黙らせろ!CM行け!」


 プーーーーーCMスタート!


「あ~あ………火の海だよ…まったく…

 大蔵卿や秘書長官等が大人しく同盟締結に賛成していれば、イングランドも壊滅せずに済んだものを……

 エリザベス1世女王陛下様は日英同盟の大切さを熱心に説いていたのに。その陛下を幽閉し戦争継続を主張するからこの様だ!ODAスーパー30%の割引券より滅亡を選ぶとは、愚かな政治家を持つと国民が憐れだな…アーメン」


 B-2 スピリットの空爆により、業火に焼かれるイングランド国内を背景にしながら、落胆の表情で語る浅野翔吾。片手に持つコーヒーを1口飲み

「ダバダ~ダバダ~ネ○カフェ ゴール○ブレ○ド」などと自分で歌い語っている。そこはドリカ○だろ!


 10日間、朝から晩まで、この一連の流れを配信され続けた挙げ句、すっかり国民から敵認定されたセシル大蔵卿にウォルシンガム国王秘書長官。


 イングランド全国で反戦プラカードを持った大勢の国民達が、行進しながらシュプレヒコールを叫んでいる。


「セシル大蔵卿を殺せ!」

「ウォルシンガムを絞首刑にしろ!」

「女王陛下を救い出すぞ!」

「ODAの割引券が欲しいぞ!」


 身の危険を感じた閣僚達。

 エリザベス1世をお姫様抱っこしながら紅茶の香りを楽しむ織田信長に、許しを請い助けを求めた。


 *****


 信長

「確かに余とエリザベスのサインが認められた。ここに日英安全保障通商条約が結ばれ日英同盟が締結された。では先ずはセシル!大蔵卿を罷免する。」


「なっ!!いきなり何を言うか!そんな事は認められん!」


「ほおそうか?良かろう。自らの選択だ好きにするが良い。城の周りを取り囲むイングランド国民も、お前を待っているだろうからな。小姓!元大蔵卿のお帰りだ!城門の外に連れて行ってやれ。」


「ヤ、ヤメロ!ヤメテクレ!ひいーー殺される!!」

 10名のAPC9部隊に拘束され、ウィンザー城の外を取り囲む民衆の元に放り出されるセシル……


「ウギャァーーー」いわゆる断末魔である……


「ウォルシンガム"元"国王秘書長官、お前も国民の元に帰りたいなら連れて行ってやるぞ?」


「と、と、とんでも御座いません。織田皇帝閣下様の御命令通り国王秘書長官から一般国民に戻ります!」


「そうか?では希望通り一般国民の元に戻るが良いぞ、連れて行け。」


「へぇ?」


「おお!!次の逆賊はウォルシンガムだ!!」

「女王の秘書長官の癖に裏切りやがって!!」

「おい縛り首だ!馬の用意をしろ!」

「ここは遠くてギロチンは運べなかったからな!」


 暴徒化した民衆の怒りは止まることを知らず、ウォルシンガムの両手両足をキツく縛り目隠しをする。

 首にロープを巻き付け馬の鞍に結び付けると「バチン!!」思い切り馬尻に鞭を打つ。


「ミヒヒン!」

 猛ダッシュする馬は走り去って300mほど先の水場で止まった。

 そこには首が半分引き千切れ、身体中ズタボロになったウォルシンガムの亡骸が横たわっている。


 信長

「ドーバー海峡敗戦からのイングランド国民の怒りは、戦争を主導したセシルとウォルシンガムの2人が受けねばならぬ。

 戦というものは多くの命が失われる。余も戦国の日本において戦に明け暮れてきたが、敗れた時にどう責任を取るかを常に考えて生きてきた。

 国家を間違った方向に導き、破滅を招いた指導者の責任。その重さは身をもって取るしか無いのだ!それがケジメである。」


 他にもエリザベス女王の和平同盟案に反対し、戦争を支持してきた閣僚達がブルブル震えながら俯いている。


「まあ良い。戦争主導者の2人はイングランド国民の手によって裁かれた。これからは日英両国にとって未来の話をせねばならん。

 余はエリザベスと共に暫く東京に滞在するゆえ、全権大使として余の実弟、織田信照幕府外務大臣の話を聞くようにせい。言っておくが貴様らに拒否権は無い!それを忘れる奴は国民の元に送り返す!あの2人の様に歓迎されるであろうニヤリ」


「織田幕府ドバイ支所大将も勤める織田信照である。これより先ほど両国間の調印文書に認められた文言を基本として、具体的な内政開発事業計画の確認を致す!

 大日本皇国にとって都合の良い拡大解釈も数多あると思うが、貴様らに拒否権は無いから黙って聞けよ!」


 城の上空を500機の攻撃ヘリ・アパッチロングボウが飛び交い、城外には戦争主導した閣僚を殺せ!と暴徒化した国民に包囲されている。


 城内でも

 広大な会議室内に500名のAPC9部隊が整列し、イングランド側の出席者を取り囲み銃口を向けている。

 そんな環境での会談にイングランド閣僚全員、真っ青な顔で縦に勢いよく頷くしか無かったのである。


 ーーーーーーーーーーーー


 これで【第9章】無事終了です。応援してくれた方々もお疲れ様でした。

 引き続き【第10章=最終章】お楽しみください。とーぜん毎日更新続行しますので今後も応援宜しくお願いします★★★


また明日…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る