第55話

「あ、はは···、実は瀬里を派遣したのは、この国の勇者となってもらうためではないのです。。」


「え、えええ?!!」


「ええと、その、恥ずかしくて言えなかったのですが、本当は、私の妻になってもらう女性を派遣したのです。」


「······は、はあああ?!!!」


「財政難を打開するには、まずは婚姻を結び、国の士気を高めて活性化させようと考えていまして、ははは····。」



 「ははは」じゃないし!!私はその場にしゃがみ込み頭を抱えた。


 

 え?それじゃあ今まで勇者として散々奮闘してきた私の時間は何だったの?!全部無駄だったの?!!



 妻になってもらうのが目的って!



 私はそこでハッと気づき、智彗様を見上げた。



「ま、待って!!じゃあ私、智彗様と結婚したら元の世界に帰れるってことじゃない?!!」



 ポリポリと顎を指でかきながら、気まずそうに顔を背ける智彗様。



「ええと、"生涯を共にする妻"を派遣したので、多分、帰れないですね····。」



 私は地面を両拳で叩き、「騙された――――」とこの世界に向かって叫んだ。



 そして瑞凪様が一言、智彗様の耳元で、「···さすが、天然策士」と囁いたのを私は聞き逃さなかった。



 自分の掌を見れば、綺麗な水色に染まった勾玉があって、とにかく今は頭の中を整理したい。








【完】

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