第28話

「…なんていうかさ、柏木さん、いいイメージで通したいならせめてやることやってから遊んだら?」


「……え、」


「だって提出期限ってもう2週間過ぎてるよね?学費払ってもらってる親の身にでもなって少しは考えてみなよ。」


「…なっ…」



こういう外面だけでいいイメージ持たせようと必死なやつ見るとイライラする。特にその中身とのギャップがあればあるほどに。



だから俺のストレス発散材料でずたずたにしてやりたくなる。どうせどうでもいいやつだし。



「大学に長居して男をたぶらかしている暇あったら、とっとと帰ってレポート書いたら?」


「……っ」



泣きそう?それともムカついた?でも何も言い返せない?



だよねえ。



誰もいない空教室で教授とヤッてるの、俺に見られちゃってるしねえ。



睨みたいのに睨み返せない、その厚いツラを鼻で笑い、彼女がきびすを返すよりも先に、俺がその場を退散した。



悪いけど俺はサディストとかそういったアブノーマルな類ではない。



ただの発散発散。



羊質虎皮。牛首馬肉。そういう外身だけの人間が嫌いだから、俺のテリトリーから一刀両断しているのだ。



だから大学構内の一定数は、今日も氷点下5度の俺を遠巻きに見ている。




「よっ、サイコパス王子!今日もサイコパスで安心したわ。」



桐生が俺の無防備な後頭部を軽く叩いて、昼の挨拶をした。



柏木さんとのやり取りを遠巻きに観察していたらしい。



「…サイコパスじゃないし。ただの性格悪い人間なだけだし。」


「そりゃ悪かったな、365重人格者!」


「せめて王子は残しといて。」


「365重人格王子!なにこれ超言いにくっ!」



桐生はさっきの柏木さんとは"逆"のタイプ。



外面はアホそうなのに、中身はもっとアホ。

何をもって"逆"というかは俺にも分からない。

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