第11話

 ダシタ・ワ・イライは砂漠地帯中央部に有る巨大マーケットである。


 マーケットと言ってもそこらのスーパーマーケットとは違う街の形態の話であり、街自体には強力な兵器やスローターギアが24時間警備している。


 現在、砂漠地帯でのブルーマーカーの9割がここを拠点とし、日々自動生成されるクエストをこなして生活の糧を得ている。


 ここの水は主にサンドシャークやサンドホエールに雨水や地下水由来であり、タンパク質等も擬似生物やバイオプラント由来で有る。


 しかし、ここの住民は人間由来の水やタンパクを好んで食する事で有名である。


 ここでは人間由来の水やタンパクは普通の水やタンパクの10倍の値段で売れる。


 なお、人間の死体も高く買い取られる。


 このような巨大なマーケット内にはレッドマーカー達は入れず、レッドマーカーは確認され次第、速やかに排除される。


 逆にブルーマーカーだけ入れない街も有るが、移動要塞アトラスからすればボーナスステージで有る。


「はあ、やっぱブルーマーカーが沢山生き残ってるマーケットって良いね」


「だな。俺も一応はこの辺で小さな依頼を受けて食いつないでたんだぜ?」


「そうなの?ここって広いから全く分からなかったわ」


「確かに広いっちゃ広いわなー。なあ、ラトナの彼女はどうなったんだ?」


「うーん、中身は女の子だけどアバターはムキムキマッチョの白人でしょ?どっかでモテモテなんじゃない。生きてれば良いけどね」


「なあ、アレってジョンソンじゃね?」


「あ…ジョンソンだわ。こんなとこに居たんだー。やっぱモテモテじゃん」


 ダシタ・ワ・イライの入口で輸送車両いっぱいに人間由来の水とタンパク質を積んだラトナとホプキンスが街の中を見ていると、Theアメリカのムキムキマッチョ白人そのもので快活な性格をした女誑しが目に付いた。


 彼こそラトナの相棒にして恋人のジョンソンである。


 ジョンソンの見た目はラトナの中の人そっくりで、ラトナの中の人はジョンソンそっくりであり、お互いにアバター交換してたのが明暗を分けた。


 ラトナは女アバターのせいで色々なトラウマとPTSDを植え付けられ、ジョンソンは元々百合の毛があった為、悪い女遊びを覚えた。


 実際は野郎が野郎に無理矢理行為を強要されてトラウマになり、方や女が女の子と気持ち良い事をしているのだから堪らない。


 向こうからこちらを見ているジョンソンもラトナに気付いてバツの悪そうな顔をしていた。


「ハロー、ジョンソン。モテモテじゃない」


「ラトナ、生きてたのね」


「あんたさ、その身体で女の子みたいな喋り方しないでくれる?なんか色々と楽しそうねー」


「待ってよラトナ。話を聞いてよ。私だって大変だったんだよ?」


「へぇ~、沢山の女の子に囲まれてハーレム状態じゃない。この誑し」


「違うって!これはその、生理現象みたいな物なの!ラトナにも分かるでしょ?」


「あー、昔の私なら分かったけどさ。女アバターの悲惨さが分かる?まあ、終わった事は仕方ないし、ケジメはつけたしどうでも良いけど」


「え?まさか……」


「そのまさかよ。仲間だと思ってた連中に嬲られる気持ち分かる?」


「ごめん、私がそばに居なかったせいよね」


「だーかーら、その身体で女の子喋りしないでって!昔の自分を思い出して頭が痛くなってきたわ」


「あー、ちょっと話を変えようか?優秀な前衛は要らない?俺って最近サポートAIのニキと移動艦マッソーを修理中なんだよね。どう?俺とスローターギアのオーバーショット込みで仲間になりたいなーなんて」


「はあ、あんたも身体に性格が引っ張られてんじゃない!良いわよ。うちは中距離狙撃タイプに長距離後衛支援タイプしか居ないし、近接攻撃タイプのスロータートルーパーが欲しかったしね」


「あはは、ラトナ。これは浮気じゃないからね?怒らないでよね?」


「怒らないわよ。でも、リアル世界に帰れたら覚えときなさい」


「分かったよハニー」


「ウッザ!」

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