十八話 二日目 朝
酷い、夢を見た。
『(追いかけられる夢、だった。)』
もっと詳しく言うなら追いかけられてる人を傍観していた。追いけてるのは人とは言い難くて黒い物体。でも人の形をしていた。
『(やっぱストレス?)』
まぁ悪夢ぐらい見るか。こんな状況だとストレス過多で睡眠にも影響するのは全然あると思う。そう言い聞かせながら起き上がる。
何て言えばいいのだろう。あまり現実味が無くて、まだ夢現でフワフワする。
頭も痛いせいで目覚めは全く良くない。今すぐ二度寝したいぐらいだ。
そんな頭で辺りを見渡せば、クラリアが扉の前で座り込んでいた。
扉に背を向けてズルズルと下がる。ホラー映画で見た事あるような光景に疑問と困惑。
『え..?どうしたの?こんな所で。』
体調不良かと思って近づき、腕を引っ張ってクラリアの椅子まで運んで座らせる。
ペットボトルの水を持ってくれば、少しずつ飲み込んで、
『は、え?本当にどうしたの?』
そして、泣き出してしまった。
思わず驚く。クラリアは呼吸も出来ずに啜り泣く。顔は意地でも見せてくれない。
最近は色んな人の泣く所。というか感情的になっている所をよく見る。前までは誰かが号泣した記憶なんて残っていない。
『....私がこうさせてしまったの?』
いつの間にか言葉を投げていた。自分でも感情がこもっていなくて低い声。
もちろん私は人間だから、大切な患者や医者が感情的になっていると胸が苦しくなる。自分のせいだ。とか、自己嫌悪になって。それから逃げようと貴方達も悪いと感じてしまう私が憎い。
「違う!シレネは絶対違う。
悪いのは周りの皆なんだよ。全部、」
彼の言葉が理解できない。否定も肯定もできなかった。
「周り」が何なのかわからなくて。何でそんな必死に否定するのかも知っているように喋るのも理解できない。
きっとクラリアは問いかけても教えてくれない。私だけが本当に悪くても、彼は私の言葉を否定して共に居続けるだろう。心の奥深くで確信していた。
『ねぇ。クラリア。』
クラリアは何か隠していて、私はそれを教えて貰うまでどんな秘密かが分からないパンドラの箱もどき。
今の私はそれを開けようと思わない。私はその箱が勝手に開く瞬間を待っているから。
哲学みたいなものだ。
『何で泣いてるの?』
もう一回聞くと、クラリアは口を開く。
「悪い報せだ。全員にとって。」
私は深呼吸をして拳を握る。心臓がバクバクうるさいのを堪えてから、もう一回彼を見つめた。
「今回の犠牲者はひがな。蘇生は不可だ。」
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