義妹が婚約破棄された。その方が幸せになることを知っているので流したが、それ以上はさせないぜ!?
第29話 研究室の課題をクリアしたから成果を発表しようと思ったらその場にいたのがお兄様だった件(エフィ視点)
第29話 研究室の課題をクリアしたから成果を発表しようと思ったらその場にいたのがお兄様だった件(エフィ視点)
□学院のヴェルト教授の研究室にて (エフィ)
昨晩、お父様とお母様、それにアリアが旅行から帰って来た。
久しぶりで嬉しい反面、心の中では身構えてしまった。
なにせ前に会ったのは1か月前。
その間にギード王子に婚約を破棄され、復活した災厄の魔物である魔狼に襲われた。この間は一度も会っていない。
優しい人たちだから一方的に叱られるようなことはないだろうし、そもそもギード王子亡き今、何を言い合っても何も変わらない。
それでも私は上手く課題をこなせなかった子供のような緊張感を感じていた。
それこそ、魔法陣を見つめて現実逃避するくらいには……。
ヴェルト教授からの課題で貰ったこの魔法陣は美しい。
描かれている魔法は、対象となった人の過去から未来にかけての記録を覗き見る魔法だという。
そしてその隣にあるのは、使用魔力を大幅に減らした改造版だ。
私はやり遂げた。成功したんだ。
思わずにやけてしまうのを必死に抑え込んでヴェルト教授に報告したら、この魔法陣を預けてくれた相手と会わせてくれるとのこと。
『自分でその方に説明すると良い。その方が相手も喜ぶだろう』と言って下さった。
楽しみです……。
といった感じね。
ただ、帰って来た家族から逃げるわけにもいかない。
もちろん本当に逃げ出すことはなく、その日の夜、私はお兄様と一緒にお父様、お母様と話した。
お兄様はロイドのことを気にしていて、そのことも話をしていた。
全部聞いた後、いろいろと心に残るものはあり、お互いにそれを少しでも解消するべく話し合った。
最終的には理解し合えたと思う。
ミトラ様とお兄様はワインを開けていて、口調が落ち着いていたからホッとした。
横でお父様が少し青い顔をされていたけど、きっと秘蔵のお酒でも持っていかれたのでしょうか?
ある程度話が終わったところで私は失礼したけど、最後はアリアも参戦して色々話したようだ。
変なことにならなくてホッとした。
そして……
「では、行くとしよう。もう会議室で待ってもらっているから、準備ができたら行こう」
「ありがとうございます」
ヴェルト教授に促され、私が会議室に入ると、そこにいたのは……
えっ?
「お兄様!?」
「やあ、エフィ。ヴェルト教授に頼んでいた俺の魔法陣の改良をやってくれたと聞いて、いてもたってもいられず来てしまった」
「そうだったのですね。お兄様の……」
驚いた。
それと同時に、疑問が解けた気がした。
お兄様があそこまで未来を読み切ったような形で、様々なことに準備万端で挑まれていた理由を、ね。
お兄様はこの魔法で関係者の未来を探っていたんだと思う。
でも、もしこの魔法を使っていたのだとすると、お兄様はどれほどの魔力を持っているの?
ヴァルト教授や私では1回使ったらしばらくは魔法自体が使えなくなりそうなくらい、ごっそりと魔力を持っていかれると思うの。
それをお兄様は何回使ったんだろう。
相変わらずお兄様は凄い……。
私はずっと助けられてばっかりだ。
「すまんな、エフィ。君に謝らないといけない」
「えっ?」
「わかるだろ? 俺は君の未来を覗き見ていた」
「はい……」
なるほど。そうだったのね。それが役に立つことなら全部見てくれて構わない。なのに、お兄様は申し訳なさそうにしている。
「つまり、婚約破棄が起こることは知っていた」
なるほど。そこだけ聞くと、なぜ助けてくれなかったのかと思うのかもしれないわね。
もし知っていたなら、そうなってしまう前に私が王子に違った接し方を試してみるとか、他の方法を考えられたかもしれないから。
一方で、そんなことはできないだろうこともわかる。
お兄様がそのことを考えなかったはずはない。
きっと見て、知った上で、私たちの危険性を排除し、その上で酷い状況に陥らないようにしてくれていたんだと思う。
「お兄様はきっと多くの人の未来を集約されたのではないですか? その結果、最善のものを選んだとしてもここまでしか実現できなかったということなんだろうなと思います。実際、私たちは助かりました」
「ありがとう、エフィ。信じてくれて」
ホッとしたような表情になるお兄様が可愛らしい。
あれだけのことをしてくれたのに、私の気持ちを考えてくれることが嬉しい。
「それに、ギード王子とのことは本性が知れてよかったと思いました。あのまま体制を整えて結婚しても、きっとそこにあるのは政略結婚のただただ冷たい関係だけです。もちろんそれを受け入れるつもりでしたが、破棄されてなくなった今、あの方に嫁がなくてよかったとしか思えません」
「そうか……」
ヴェルト教授の前だけど、お兄様は頭を撫でてくれた。
もし他の人と結婚したら、こんなやり取り……というか、優しさはもう味わえなくなっていた。
不謹慎なことは承知で言うと、ギード王子に対しては死んでくれて良かったとしか思えない。
何かの間違いで生きていたから結婚しろとか言われたら、私は絶望する自信があるわ。
「良かったな、エフィ。そしてクラム殿。予想以上に魔力消費が抑えられた。あとはクラム殿が私と結婚してくれたら完璧だ」
「「それはない!」」
「えぇ……エフィまで……」
「あっ、すみません」
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