第7話 一方その頃ギード王子たちは③

そうして一日の授業を終えて帰る時間になった。


「お疲れさまでしたギード王子」

「ギード王子の今日使われた魔法、凄かったです。俺もあんな魔法がつかえるようになりたい!」

「バカ、お前なんかが王子と同じになれるわけないだろ!?」

「ウケる。才能の違いを理解しろ!」

「王子は座学も優秀ですし、日々の研鑽の成果でしょう」

口々に褒め称える級友たち。こいつらはよくわかってるな。

だが誰かも言っていたとおり、俺の才能と努力があってこその魔法だ。

軽々と真似できるものではない。


もちろんあえてそんなやる気を削ぐようなことは言わずにおく。

こいつらが努力した結果、優秀さを発揮するならそれは俺にとって良いことだからだ。

将来の国王である俺に取ってな。

せいぜい頑張るがいい。


今のところ、全くもって芽はないが、万が一ということもあるだろう。

 


「じゃあな。また明日。行くぞオルフェ」

「はい、ギード王子♡」

俺はオルフェを抱き寄せ帰る。


馬車の中ではいつも通り甘い快楽の時間を過ごし、王城に戻った。



すると父である国王から呼び出しがあったとのこと。

まったく。せっかく正式につき合えることになったオルフェを呼んで将来に思いをはせようとしていたのに。

それに学院で疲れているんだから勘弁してほしい。だが、あんな父でも国王だ。


言いつけを破るわけにはいかない。

王位を引き継ぐまでは耐えなければならない。これも修行の一つだな。

 

それにオルフェも一緒にとのことだったから、婚約に関する話だろうか。

なぜ俺がオルフェを連れ帰ることを把握しているのかはわからないが……。


そんなことを考えながら俺たちは国王の執務室に向かった。


「ふむ。ご苦労」

部屋に入ると国王が真面目な顔をして座っていた。


そして……


「オルフェと言ったな。ギード王子と結婚するということは王妃となるということじゃ。それはわかっておるな?」

「はい……」

何を改まって。そんなこと、子供でもわかることだ。


「つまり、王妃教育を受けねばならぬ。それは王妃となる者なら必ず受けなければならないものだ。教えるのは通常は王妃だ。しかし王妃は多忙な様子だ。そこで、まず触りの部分は余が教えるので、明日から毎日王城に通うのだ。時間は学院が終わった後でかまわぬ」

「なっ……」

どこの世界に王妃が忙しいからとその役目を成り代わる国王がいるのだ?ふざけるなクソジジイ!


そもそも普段からふんぞり返って貴族の話を聞いているだけだろう?

何の知識がいるのだ。

王妃だぞ?


ニコニコ笑顔で座っているだけの仕事で、実務などさせることはないのだぞ?


まぁ今までの国王であれば王妃にも何かさせていたのかもしれないが、俺の時代にそんなことはさせない。

王妃は王妃らしく奥で俺に傅いていればいい。

 

一つだけ先に行っておくとすると、愛人は多くなるだろからその差配は必要になるだろうが、そんなものはこなしていけば覚えるだろう。


罪作りな俺のせいではあるから申し訳ないが、そこは頑張ってくれ。


で?なんの教育がいるだと?


どうせ美しいオルフェに懸想でもして、一緒にいる機会を無理やり作ろうとしてるだろうが、このクソ親父!

歳を考えろ、歳を!

自分の子供の同級生を誘い出そうとするな!!!


「わかりました。どうぞよろしくお願いいたします。不束者ですが、努力しますので」

「ふむ、結構じゃ。やる気があれば問題は無かろう」

問題しかないだろ!

オルフェも何を勝手に了承しているのだ。


しかし断ることはできそうになかった。

それならば可能な限りついてくればいいだろう。


まさか俺の前で俺の婚約者に手を出そうとはしないだろう。


「それから、ギードよ」

「はい」

なんだ? まだ何か用があるのか?

てっきり終わったものだと思って、オルフェを促して退室しようとしていたのだが。


「どうも地下の守護結界が不安定なようでな。魔石の供給を増やす必要がある。ただ、予算は限られているから、ロイドと言ったかのぅ。そのものを通じて調達してくるのだ」

「はっ……」

「ではなるべく早く頼むぞ」

やりやがったなこのじじい。どうせ学院でロイドと話をさせるつもりだろう。その間にオルフェを帰らせて、自分と二人っきり……。

くっ……。


「どうしたのじゃ?」

「いえ。わかりました」

まぁいい。オルフェに貞操を守るための魔法をかけておけばいい。もし手を出しやがったらケガをすることになるが、さすがに醜聞を気にして公開したりはしないだろう。


俺たちは国王の執務室を退室する。


「大丈夫でしょうか? 魔石を融通させるなど……」

「それは問題ない。ロイドに命じておけば持ってくるだろう」

問題はお前の貞操だ。


俺は心配し過ぎではないかと言うオルフェを説き伏せた。

仮に心配のし過ぎで何もなければ問題はない。


問題があるとすれば、実際に国王が手を出してきたときだ。

王子の相手が国王のお手付きだなんて最悪だ。


そんな時に大事にしないため。気のゆるみによる過ちと軽く収めるためにも防御は必要だと説明し、納得させた。

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