第3話

その言葉に、僕は胸が締め付けられる思いがした。

真由美の愛情は確かに強いが、その裏には恐ろしいほどの独占欲が潜んでいる。彼女の言葉が頭の中でぐるぐる回り、どう返事をすればいいのか分からなかった。


「真由美、そんなこと言わないで。僕は…僕はみんなと仲良くしたいだけなんだ」

 と、思わず口から出た言葉は、彼女の心をさらに刺激してしまったかもしれない。電話の向こうで、真由美の息遣いが少し荒くなったのを感じた。


「健太、私がどれだけあなたを想っているか、わかってるよね?他の女の子と仲良くするのは、私にとってすごく辛いことなの」

と、彼女の声には涙が滲んでいるようだった。僕はその言葉に心が痛んだ。彼女の気持ちを無視することはできないが、沙織との友情も大切にしたい。


「真由美、僕は君のことが好きだよ。でも、沙織も大切な友達なんだ。だから、みんなで仲良くできる方法を考えようよ」と、僕はできる限り穏やかに言ったつもりだった。しかし、真由美の反応は予想外だった。


「それなら、私が沙織に会わないようにすればいいのね?」

 彼女の声は冷たく、まるで決意を固めたかのようだった。僕は一瞬、言葉を失っ た。彼女の心の中で何が起こっているのか、全く理解できなかった。


「真由美、そんなことは…」

 と口を開こうとしたが、彼女はすでに電話を切ってしまった。僕はその場に呆然と立ち尽くし、心の中に不安が広がっていくのを感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る