ノラ猫と女子高生の恋
藍瀬 七
第1話 ノラ猫と女子高生の出会い
ノラ猫の黒猫・テツヤは、毎日食べるものを探して、街の中をうろついていた。そこは賑やかな街で、人がたくさん住んでいる場所だった。住宅街を抜けて道沿いに歩いたら、白くて大きなお城のような豪邸が建っていた。住宅街もそれなりに栄えていて、活気が溢れているけれど、豪華さの格が段違いに見えた。
その豪邸を玄関先から覗いていたら、ガチャリと扉が開く音がした。驚いたので、慌てて近くに隠れたのだが、そこから綺麗な女子高生が出てきた。髪は茶色より少し明るめのミルクティー色で、緑色の目をしていて、顔立ちが整っている美人だった。俺はその女子に一目惚れをしてしまった。
ノラ猫がどうやって人間にアピールすれば良いのか考えた挙句、腹ペコだったためご飯をおねだりしてみようかと考えた。「にゃー」と言いつつ女子高生に近付く。
「可愛い猫ちゃんね。どうしたのかな?」
「にゃーにゃー」
俺は必死に空腹をアピールするが、猫語しか喋れないために深く落ち込んだ。
「ごめんね、これから学校に行かなくちゃいけないんだ。あ、そうだ!」
女子高生はゴソゴソと鞄を漁っている。
「今、お魚(煮干し)持っているから、これをあげるね」
と言い残して、その場を離れて行った。俺は分けてもらえた煮干しを味わって食べた。幸せに浸っていたのも束の間で、先程の彼女と見知らぬイケメン男子が仲良さげに登校している姿を見てしまった。
「ふにゃー(ちくしょう、俺だってイケメンになりたいぜ……!)」
途方に暮れて道端を歩いていると、怪しい露店に巡り合った。俺と同じ猫たちが一列に並んでおり、何やら順番待ちをしているようだった。
「いらっしゃい。お主も魔法の薬を目当てに来たのかね?この薬を飲むと、あら不思議。自分の願いが叶っちゃう、とびきりミラクルな薬だよ」
「にゃーにゃー(そんな怪しい薬なんて、信じないもんね)」
「本当にそれでいいのかい?まぁ、気が変わったらおいで。これだけ猫が並んでるから、売り切れるかもしれないけどね。再販はしないから、今回限りのチャンスだよ」
「(嘘くせぇ……いや、でも待てよ?俺がイケメンになったら、あの女子高生が振り向いてくれるかもしれないぞ!)」
安易な考えで、俺はその魔法の薬をもらった。タダより怖い物は無いとはいうが、その場で試しに飲んでみることにした。
『ボンッ』
「見事な変貌ぶりじゃの」
何か変な音がして、露店に置いてあった鏡を見ると……なんと、俺は人間のイケメンになっていた。しかも金髪で、身長も180位はあるだろうか、体つきも筋肉がしっかりついている。自分で言うのもなんだが、こいつはモテるかもしれないと思う程だった。
「よっしゃ!これで俺だってあの子にアプローチができるぜ!」
その現場を見ていた露店の店主は、フォッフォッと笑いながら煙幕のような煙に包まれたのだ。
「ゲホゲホ……何だ?」
先程の怪しい商人は見当たらず、目の前には仙人のような見た目のおじいさんが居た。
「言っておくが、先程の魔法の薬の効果はホンモノじゃ。ワシが研究に研究を重ねて作り上げた幻の1品じゃ!しかし、副作用もあってな。お主が願い事をする度に、ワシの云うことを必ず聞くという条件が付いておる」
「なんだって?そんな面倒くさい薬だったのかよ!?」
「もう1つ。魔法の薬には実は期限がある。お主の場合、学生じゃから期限は3年。3年経てば、元の姿に戻る」
「はぁ!?なんだそりゃ!」
「説明は以上じゃ。ああ、ノラ猫だから住む所に困らんよう、アパートを用意しておる。まずはそこを拠点にして学校生活を送るといいじゃろう」
「ちょっと待った。勝手に話を進めんな!」
「では、ワシは野暮用があるんでの。さいなら~」
再び、先程の煙幕が舞い上がり、おじいさんは消えてしまった。
「勝手に話を終わらせやがって……何てジジイだ」
煙が消えた後に、机の上に紙が置いてあったので目を通した。すると地図のようで、この周辺とアパートまでの道のりが記載されていた。仕方なく用意されたアパートまで行ってみることにしたのだった。
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