第7話 姫の救助要請


「ウ、ウウ~ン」


 おや、彼女の意識が戻ってきたような。


「ウ、ウ、え、え~~、どうして……」


「意識が戻ったようですね。

 私があなたを助けました」


「え、え、あ、ありがとうございます」


「あ、そうですね、私は守、領海守といいます。

 身分は……昔は海上警備庁の職員でしたので、漂流者を助けましたが、いろいろとお話を聞かないわけにはいきませんのでご協力ください」


 よかった。

 今のところ日本語??で会話が通じる。


「助けていただいたのですよね、私は」


「はい、海上を木製のチェストにつかまった状態で意識がなかったですね」


 俺がここまで言と彼女は上半身だけ起こしながら話を続けようとした。


「え、何、きゃ~~!」


 彼女が上半身を起こすと彼女の賭けていた毛布がはがれて上半身の裸体があらわに。

 それに彼女が気付き、悲鳴を上げながら縮こまる。


「あ、すみません。

 救助の過程で体温を上げるために服を脱がせてお湯をかけておりました。

 脱がせた服は今洗濯中ですので、代わりにってどうしよう」


 とりあえず俺はそういいながら彼女に毛布をもう一度かける。


「あ、ありがとう」


 彼女は小さな声でお礼を言ってくれた。

 良かった。

 俺が襲ったとは思っていないだろう。


「服は代わりの物を後で渡すから、ちょっと待ってほしい。

 その代わり話を聞かせて」


「はい」


 小さな声で返事をくれた。


「君はどうして漂流する羽目に……」


「そうだわ、私、何でもします。何でもしますから姫をお助けください。

 必要でしたら私の命を差し上げます。

 命でなくとも、体しか渡すものがありませんが私の体を自由にしてください」


 急に彼女はそういうとベットから降りて立ち上がる。

 当然彼女の体を隠していた毛布は床に落ちるから、また全裸を拝める状況なのだが、ゆっくりと彼女の全裸を楽しめる状況ではない。

 床に落ちら毛布を拾って彼女にかけながらやさしく状況を聞いてみた。


「まずは、命がどうとかではなくて、状況を教えてください。

 その姫様というのがあなたと同じような状況で漂流しているのならばすぐにでも捜索を開始しますから、そのためにもできる限り情報が欲しい。

 ちなみにこの船の半径数kmにはあなたと一緒に流れてきたチェスト以外には何も見つかっておりません」


「たぶんですが、漂流しているのは私だけかと、あれば他の人数人くらいで、姫はいないと思います。

 ですが、姫は海賊にとらわれて不自由な目に……」


「襲われる……か」


「いえ、たぶんですが姫様だけは大丈夫でしょう。 

 姫は大切な人質になりますから」


 彼女からの第一報はかなり物騒なものだった。

 俺は漂流中でないというその情報を聞いたことで時間的猶予を得たので、根気よく彼女からできる限りの情報を聞き出した。

 彼女は俺の予想通り猫人族の獣人と言うやつで、ミーシャと名乗り、御年は16歳だそうだ。

 日本人でいえばまだ高校生にあたるが、とても発育の良いスタイル抜群の女性だ。


 で、そのミーシャのご主人様というのが今彼女の口から姫様といわれる女性で年も同じ16歳になる人族の貴族だそうだ。

 国が襲われて、混乱しているさなか姫と護衛それに彼女たちは海に逃げたのだが、海賊に襲われて囚われの身になったらしい。


 ミーシャはその海賊との戦闘中に海に落ちたと話してくれた。

 彼女も詳しくは知らないらしいが、彼女の姫は王様が人種の国で商業の盛んなハートポンド商業連合という国だそうだ。

 最初に彼女たちの国を襲ったのはアンタレス教国という、狂信的な国だというが、敵対していればまず良くは言わないわな。

 ましてや少し前に襲ってくればなおのことだ。


 ここはもう少し情報が無いとどちらにも協力はできない。

 姫を助けるのはやぶさかではないが、海賊がどうとか言っていたことから、とりあえず姫の救助は問題ないだろう。

 相手が海賊ならばの話だが。

 襲われた町から逃げる時には護衛もいたというから、その護衛が漂流していないとなると姫と一緒のいると思われる。


 今回は急ぎ逃げ出したことで小型の船で沖合に出たところを急に襲われたという。

 ミーシャは姫を守ろうとしてその男連中ともみ合ううちにチェストと一緒に海に落ちたと教えてくれた。

 だから、漂流しているのが自分だけと言い切れるのだろう。

 また、彼女の主人である姫の一行には女性騎士数名も護衛に就いてはいるが、明け方襲われたこともあり自分海に落ちた後のことはわからないという。


 それで、俺にその海賊に攫われた姫を助けてほしいと言ってきたのだ。

 自分の身を捧げると言いながら本当に必死で俺に頼んでくる。

 しかし、初見の男に、それもすぐ直前に服を脱がされ全裸にした男を簡単に信用して大丈夫かなとは俺はミーシャのことが少し心配にもなる。

 俺も襲う気は全くないが、覗く気だけは否定できないのが甚だ情けない。


「それで襲われたのはいつ頃の話ですか」


「たぶん今朝方早くかと。

 私がどれほど気を失っていたか知らないので正確には……」


「ならそれほど時間はたっていないか」


 俺は部屋の時計を見ながら計算している。

 今2時45分だ。

 昼過ぎに助け出して、数時間といった感じか。

 明け方とか言ったが、5時にはまだ日は登ってはいなかったから、そのことかな。

 10時間前だと仮定して、どれくらい現場と離れているか、また、姫たちを乗せている船がその10時間でどこにどれだけ進んだかもわからないが、とにかくその船を探すのが先決か。


「わかりました。

 助けられるかお約束はできませんが、まずはその船を探しましょう。

 それくらいは協力します」


「ありがとうございます」


 ミーシャはそういって頭を下げた。

 すると彼女に簡単にかけてある毛布がまた落ちて全裸になった。


「キャッ!」


「あ、すみませんでした。

 すぐに服を用意します」


 俺はそういってから船長室を出て、船員たちの部屋に向かう。

 ほとんどが女性の乗員たちの船なので、どこでもいい一番近い部屋に入っても女性部屋だ。

 その部屋の中から、彼女の体系に近い乗員のロッカーを開けてジャージを探してついでに下着も借用して船長室に戻り彼女に渡した。


「これを着ていてください。

 今まで来ていた服はあとでお返します」


 俺はそういってから船長室を出て艦橋に向かう。




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