教師近藤とライダースジャケット

 近藤は、いつも地味なスーツを着ています。

 しかしその日、なぜかライダースジャケットを身につけて学校にやってきました。

「先生、どうしたんですか?」

 生徒の一人が尋ねました。

「近藤がライダースジャケットを着ています」

 近藤は、まるで英語の教科書の英文を訳すように、そう口にしました。

「……」

 質問したコに限らず、生徒は皆茫然としました。

「近藤がライダースジャケットを着ています」

 近藤は再びそう言うと、ワイルド感をプンプン漂わせました。

 ところが、次に子どもたちの前の現れたときには、いつもの背広姿で、なぜかしょんぼりしていたのです。

 近藤は、ライダースジャケットを着てみたい衝動にかられ、その格好で学校へ行き、何か勉強絡みの真面目な意味があるような雰囲気を醸しだしたものの、職員室で校長らに注意されて脱ぐ結果になったのでした。

 近藤を知る生徒たちは、すぐさまそのすべてを見抜き、そのミニトラブルは終了と相成りました。

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