🍅お昼は簡単?スパゲティー🍝
さて久しぶり?にお風呂に入って男前が上がった兵太郎。さっそくお昼ご飯を作ります。
兵太郎と同様、お風呂に入って艶やかさを増した二人の奥さんが、期待を込めてその様子を見守り……
「はい、お待たせ―」
「いや、待っとらんのじゃがっ!?」
「厨房に入ってから十分もたっていないですわよ?」
二人の奥さんは思わず突っ込みを入れました。
「そんなに手間がかからない料理だから。今日はおやつがいっぱいになるから、お昼ご飯はシンプルにね。でもおいしいよ」
兵太郎はさらっと言ってのけます。
しかし食材の下処理が済んでいる営業中の喫茶店ならいざ知らず。
兵太郎はスーパーから帰ってきてすぐお風呂場へと連行されました。買ってきた材料の食材は当然、切られてもいない全部生の状態だったはず。
大量のお湯を沸かす所から初めて、一体どうやってこのスパゲティーは作られたのでしょうか。ずっと見ていた二人の奥さんにもさっぱり訳が分かりません。
しかしおいしそうに湯気を立てるご飯を前に、何でとかそんなどうでもいいことに頭を使っても仕方がありません。
兵太郎ですからね。そういうこともあるのでしょう。
さてお昼のメニューはトマトとニンニクのスパゲティー。
「これはまた旨そうじゃのう」
「はう、また急にお腹が空いてきてしまいました」
出来上がった光を放つスパゲティーに期待を寄せる二人を見て、兵太郎の顔も緩んでいます。ちょっとだらしないですね。人間からモテないのもよくわかります。
さっき兵太郎が言っていた通り、スパゲティーの材料はトマトとニンニク以外にはオリーブオイルとバジル、唐辛子というシンプルなもの。
しかし味は決してシンプルではありません。
絶妙に煮詰められたトマトで作られた甘めのソース。これが塩気強めで茹でられたパスタにピッタリ。
少量しか入っていないのにニンニクがしっかり効いて、さわやかなバジルとオリーブオイルの香りとともに、食べるごとに食欲をそそられます。
藤葛は料理に添えられたフォークを使って器用にくるくるとスパゲティーを絡め、上品に口に運びました。
一口にスパゲティーの魅力を堪能できる正統派の食べ方。
噛むと塊となった固ゆでスパゲティーの歯ごたえと共に、絡んでいたソースがじゅわっと口の中に
「はうう、おいしいですー!」
藤葛は頬に手を当て、笑顔満面で完成されたシンプルを堪能しています。
一方紅珠は添えられたお箸を使い、ざるそばのようにずずっとすすって食べました。
口の中に流れ込む旨味の奔流。いっぱいに頬張って、もぐもぐもぐ、ごっくん。
「ふああ、うまいのうー!」
こちらも満面の笑みで感想を述べた後、すぐに二口目の奔流へと飛び込んでいきました。
これはこれで、とてもおいしい食べ方。
どっちだっていいのです。ここはイタリア料理店ではなく喫茶店。しかもまだオープンしていない上、二人の家でもあるのですから。
あ、でも口の周りがソースで真っ赤なのは少々よろしくないかもしれません。こんなかわいい顔をしていても紅珠は妖怪。
世が世なら、出会った旅人が恐れをなして逃げ出してしまうかもしれませんからね。
******
あとがき
「ジノブンさんはスプーンも使うかな?」
「あっ、あっ、恐縮でアリマス」
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