紅珠と藤葛
決して人が関わってはいけないもの。
ただ、まあ。
人の世の常識がうつろう様に。
📝📝📝📝📝📝
こんにちはでアリマス。
突然の登場申し訳ございませんでアリマス。ジブンは妖怪ジノブンでアリマス。地方によってはテンノコエ、なれいしょん等とも呼ばれてるでアリマス。
ご存じでない方も多いと思うでアリマス。ジブン
冒頭よりジブンが語りをしてたでアリマスが、途中で狸様に強引に役を奪われたでアリマス。
狸様が飽きたようでアリマスので、ここからはジブンが務めさせていただくでアリマス。何卒よろしくお願いするでアリマス。
🦊🦝🦊🦝🦊🦝🦊
カフェを始めようと古民家に引っ越してきた
「ええと。お二人とも、とりあえずお名前を聞いても?」
確かに奥さんの名前を知らないというのは問題です。早めに聞いておいた方がいいでしょう。
「儂の名は
怒ったり笑ったりところころと表情が変わり、身振りも大きいので見ていて飽きません。
ともすれば幼い少女にも見えてしまいますが、彼女の正体は狐であり、この地を収める土地神。胸に抱えている鏡がその本体なのだといいます。
「
藤葛は紅珠とは対照的に物静かな、落ち着きある雰囲気の女性です。
雰囲気的には。
しっとりとした藤色の着物に身を包んだ彼女は、思わず目を引く艶と気品を兼ね備えておりました。着物でも隠し切れない抜群のプロポーションという自己評価も決して嘘でも過剰でもありません。
それでいて目元は優しくどこか愛嬌があって、見ていると安心するタイプの美人です。
彼女の正体は狸。本体は兵太郎が半ば騙されて買い取ったこの広大な家そのものです。
どちらも恐るべき力を持っています。大化生と言って差し支えないでしょう。
「紅さんと藤さんだね。僕は兵太郎と言います。どうぞよろしくお願いします」
兵太郎は二人に向かって頭を下げました。
「こちらこそ。末永くよろしくお願いいたしますわ。兵太郎」
「不束者ですがどうぞよろしくじゃお前様」
「後はこの勘違いキツネをどうするかですが……」
「さて、そろそろ邪魔なタヌキにはお暇いただかないとじゃの」
二人は丁寧に兵太郎にお辞儀を返した後、キッと互いに睨みつけあいました。
「儂ははっきりと兵太郎から『今後よろしくお願いします』とプロポーズを受けているのじゃぞ。お邪魔な狸は自分だとなぜ気づかぬ」
「兵太郎としてもこのチンチクリンな狐などより私に惹かれるのは間違いないのですよ。勘違いに気が付いたらそろそろお帰りいただけませんか?」
「貴様の本体はこの家でその体は幻術じゃろうが!」
「それを言ったらあなたの体はその鏡でしょう。それに私、実体化することだってできますのよ」
壁からするすると蔦が伸び、藤葛の背中に接続されました。
「ほら兵太郎。触ってみてくださいな」
言われた兵太郎が藤葛の手に触れてみると、すべすべとしたきめ細かい肌の感触。少し冷たいけれど確かに人の手です。
「うわ、藤さんの手、柔らかい。綺麗だねえ」
「まあ。ええ、そうでしょうそうでしょう。私と一緒になりましたら、この手であなたの全てを包み込んで差し上げますわ」
藤葛はもう片方の手を兵太郎の頬へと伸ばします。しかしそうはさせじと紅珠がぐいぐいと二人の間に割って入りました。
「ええい離れんか! コード付きの家電か貴様は!」
紅珠は藤葛から強引に兵太郎の手を奪うと、その手にごしごしと頭をこすりつけ始めました。
「お前様、お前様。ああ、お前様の手じゃあ。どうか紅を撫でて下され。儂はお前様の手が大好きじゃあ」
「わあ、紅さんの髪さらさらだねえ」
「そうであろ、そうであろ、あうう、お前様あ。紅は幸せじゃあ」
うっとりした顔でさらに頬や首をこすり付けようとする紅珠でしたが、藤葛に引きはがされてしまいます。
「いつまで人の夫にくっついてるんですかこのキツネは! 兵太郎、狐なんかと関わってはいけませんよ。ずる賢い輩ですし寄生虫いますし」
「貴様、風評被害はやめるのじゃ。儂にエキノコックスはおらんぞ」
「その上勘違いのストーカーですよ。身体洗われてアレしちゃうような変態ですし」
「べ、別にアレとかしとらんし! いや兵太郎のテクニックはそれはもうアレじゃったが」
「うわ何言ってんですかこのキツネ? 脳にエキノコックス詰まってんじゃないですか」
「寄生虫ネタ、マジでやめんか読者が引くじゃろ! 大体人を変態呼ばわりしとるが、貴様こそ儂が来る前、兵太郎に何をしようとしとったんじゃ」
「なななな、何言ってんですか何もしてませんよ刑事さん凄い想像力ですねムーンライトノベルにでも投稿なさったらどうですか」
「誰が刑事じゃ。きょどってんじゃないわい! どーれ見てやろう。妖狐神通!『後から録画鏡』~~~!」
「ちょっとやめ、って なんですかその未来秘密兵器みたいな神通力は!?」
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