祠を直しただけなのにっ!? ~古民家カフェ「こくり家」へようこそ!~
琴葉 刀火
🪞プロローグ
昔々。
それはもう、気の遠くなるほどの昔のお話。
この国には沢山の神様がおりました。
神様は人を守り、人は感謝のあかしとして神様に様々な捧げものをしました。
神様のおかげで取れた獲物や作物、それに神様を象った品々。
神様は人々からの捧げものを食べて暮らしていました。
やがて時が流れて。
人は神様を忘れ、神様はその力を失いました。
零落した神様達は、
そしてさらに時は流れて……。
🪞🪞🪞
引っ越し先の古民家の裏山。
兵太郎はそこに小さな祠を見つけました。
何年も、ひょっとすると何十年もの間放置されていたのでしょう。ほとんど崩れ閉まっていて、原型もわからないほどでした。
残骸のようになった祠を覗いてみると、中には金属製の鏡が安置されています。
「なんの神様だろう。流石にこのままにはしておけないな」
兵太郎はほとんど崩れてしまった祠からそっと鏡を取り出しました。
「すごく精巧な細工だ。錆がひどいけど……。でも表面だけだな。うん、これなら何とかなりそう」
元の祠の形と大きさにおおよその検討をつけると、兵太郎は鏡を家へと持ち帰りました。
とんとんとん。
広さだけは十分にある家の庭先で、兵太郎は祠を作り始めました。丁度これから住むことになる家の修理をしていたところ。祠の材料はいくらでもあります。
「こんなものかな? 気に入っていただけるといいんだけど」
切妻の屋根や台座には雲を象った装飾が施され、正面には観音開きの格子扉。新たにできあがった祠はどうしてどうして、素人仕事とは思えぬ立派なものでした。
「あとはこっち」
祠が出来上がったら次は錆だらけの鏡です。
「わ、凄い」
改めてよく見ると、鏡面の周りにも緻密な細工が施されていることに気が付きました。元は名のある神様だったのかもしれません。
細かなところも優しく丁寧に。根気よく時間をかけて、兵太郎は錆を落としていきます。
「よしっ、と」
兵太郎は見違えるように綺麗になった鏡と祠を持って裏山に戻りました。
「すぐ下の家に住むことになりました
祠に向かって兵太郎は手を合わせ、深々と
「そろそろ暗くなるかな。今日はここまでにしようか」
兵太郎はもう一度祠に向かってお辞儀をしてから帰路についたのでした。
兵太郎が去ってしばらくして。
祠に収めた鏡がぴかりと光を放ったことに、兵太郎はもちろん気づくことはありませんでした。
「触らぬ神に祟りなし」とはよく言ったもの。
祠が朽ちれば近くの家に祟りをなし、直せば礼にと戸口に盗品を届ける。
泥棒と隣家が怒鳴り込んでくれば、そこの子供に事故が起きる。
カミとは、
人とは違う常識を生きる彼らには、決して関わってはいけないのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます