第30話 未来への希望
ジェイミー様との結婚生活は、とても幸せなものだった。
私たちは互いに尊重し合い、支え合いながら日々を過ごしている。時には意見が合わないこともあるけれど、それでも話し合いを重ねて、いつも解決策を見出してきた。
そんな中、私たちに子宝が授かったのです。
「ヴィオラ、お腹の子は元気そうだね」
ジェイミー様が、優しく微笑みながら私のお腹に語りかけます。
「ええ、とても活発に動いているの。きっと健康な子に育つわ」
私も、彼と同じような表情をしているはず。幸せそうに頬を緩めたような表情を。
月日は流れ、私たちの子どもは元気に生まれ、すくすくと育っていきました。
「お母様、お父様、今日も一緒に遊ぼう!」
「ええ、いいわよ」
「ああ、何をする?」
屈託のない笑顔で話しかけてくる我が子を見て、私は母親になれた喜びに今でも胸が震えます。
ジェイミー様も子育てに積極的で、仕事の合間を縫って子どもと過ごす時間を大切にしていました。
「ヴィクトール、しっかり父の後を継いでくれよ。将来が楽しみだ」
そう言って私たちの大事な子であるヴィクトールの頭を撫でるジェイミー様。彼の優しい表情を見て、私は家族の絆の強さを実感していた。
息子のヴィクトールが、社交界デビューの日に新しい友人ができたと聞いて、私は嬉しく思った。
「ウィリアム君って、どんな子なの?」
私が尋ねると、ヴィクトールの目がきらきらと輝きます。
「ウィリアム君は僕と同い年で、すごく頭がいいんだ。勉強も得意だし、何でも知っているんだよ。僕が知らないことを教えてくれるんだ。最初から気が合って、ずっと仲良くしていこう、って約束したんだよ」
ヴィクトールの楽しそうな様子を見て、私は微笑みました。大切な友人ができたようで、本当によかった。
でも、そのウィリアム君がヴァレンタイン家のお子様だと知った時は、驚かずにはいられなかった。
妹のリリアンと、かつての婚約者であったルーカス様が辺境に去ってから、私は彼らとの交流を完全に絶っていた。ヴァレンタイン家と付き合う機会もなかった。
ただ、噂話は耳にしていた。リリアンとルーカス様の間に生まれた子どもが、今はヴァレンタイン家に預けられ、跡継ぎとして育てられているということを。
そのお子様が、ウィリアム君なのでしょう。複雑な思いが胸を過ぎ去った。
「あなた、ちょっといいかしら」
すぐに私は、夫のジェイミー様に相談した。
「ヴィクトールがヴァレンタイン家のウィリアム君と仲良くなったの。あの子は例の子だと思う。それで過去のこともあるし、どうしたらいいと思う?」
「そうか」
ジェイミー様は真剣な面持ちで考え込みます。
「ヴィクトールとウィリアム君の友情を大切にしたいという君の気持ちはよくわかる。でも、様々な事情もあるだろうからね」
「そうね……」
「こうしよう。私からヴァレンタイン家に連絡を取ってみる。事情を説明して、子どもたちの関係を守ってもらうように相談するよ」
「ええ、お願いします」
夫の申し出に、私は安堵の息をつきました。賢明で交渉上手なジェイミー様なら、ヴァレンタイン家とも上手に折り合いをつけてくれるはずです。
数日後、ジェイミー様から嬉しい知らせがあった。
「ヴァレンタイン家も了承してくれたよ。子どもたちの交流を制限しないことを約束してくれた。うちとしても、ウィリアム君を温かく迎え入れる。そう伝えてある」
「本当? よかった」
せっかく仲良くなった子たちが離れ離れにならなくて、安堵する。
それから、ヴィクトールとウィリアム君の交流には何の問題もなく、二人の友情は深まっていった。
ウィリアム君を屋敷に招待すると、息子と一緒に庭を駆け回ったり、本を読み聞かせたりと楽しそうに過ごします。二人の無邪気な笑い声が、屋敷中に響き渡る。
あの子が、リリアンとルーカス様の子だと思うと複雑な気持ちになることもある。でも、過去にどんなことがあったとしても、子どもに罪はない。
ウィリアム君にはヴィクトールと同じくらい幸せになってほしい。のびのびと成長して、明るい未来を歩んでほしい。
これから先もずっと、二人が仲良く笑顔で肩を並べる姿を想像すると、自然と顔がほころぶ。ヴィクトールとウィリアム君。二人の前途に、輝かしい人生が待っていますように。そう願った。
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