1-6 スライム狩り

 あれからしばらくの間、ルナは森の端でスライムを探し、次々と狩っていった。


「ネコ発勁、いきますにゃっ!」


 拳を突き出すたび、淡い衝撃が走り、スライムのコアを一撃で砕く。

 最初はびくびくしながらも、慣れるに従って狩りはスムーズになっていく。


 魔石(小)がいくつか集まり、そのたびにウィンドウが淡く光り、レベルが上がる。


---------------------

名前: 猫神ルナ


レベル: 5


登録者数: 15,000


同接: 103


Vスキル: 配信(Active)

     アナリティクス


攻撃力: 50 (+103)

防御力: 48 (+103)

素早さ: 48 (+103)


スキル: ネコ発勁(はっけい)


----------------------


「レベル5になりましたにゃ!攻撃力も防御力も上がってる気がしますにゃ!」


にゃん民: おめ!

にゃん民: スライム狩りでレベリングとは正統派RPGかよ

にゃん民: 巣の攻撃力でもスライム超えたね!


「えへへ、みにゃさんのおかげですにゃあ」


「あ......」

 ルナは上空を見上げる。赤みを帯びた空が紺色へと変わろうとしている。

 あたりは急に真っ暗になり、何も見えなくなってしまった。


にゃん民: うわ、暗!

にゃん民: もう夜か...

にゃん民: ガチの大自然すぎて明かりがない! 何も見えねえ!


「日が落ちてきましたにゃ……。一旦配信を終わりますにゃ!」


にゃん民: 了解!

にゃん民: 暗くなったらモンスター増えそうだもんね

にゃん民: また明日配信してね!


「はい、みにゃさん!いつも見てくれてありがとうございますにゃ!」


 ルナは木陰に腰を下ろし、VTubeスタジオのウィンドウに触れる。

 配信停止ボタンをタップすると、目の前のコメント欄やステータス画面がすっと消える。


「おつかれさまですにゃ、また会いましょう……!」


 配信を切った瞬間、ルナの身体がじわりと変化する。

 猫耳や尻尾が溶けるように消え、華やかな和風メイド服から、ジャージ姿の美咲へと変化する。


「……えっ!?元に戻った?」


 瞳を瞬かせ、美咲は自分の手足を見る。先ほどまで感じていた不思議な強さはすうっと消え、背丈や雰囲気も元通り。

 思わず叫んでしまう。


「これ、転生じゃなくて、転移だったのーーー!?」


 闇に溶ける森の中、美咲の声が虚空に響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る