1-2 守護(まも)る
異世界を疑わざるを得ない景色が展開している一方で、それをリアルタイムで目撃している存在がいた。にゃん民――ルナのファンたちである。
配信ウインドウを開くと、いつもの配信枠がなぜか実写さながらの大自然を映し出していた。コメント欄には戸惑いと興奮が交錯する。
にゃん民: こんルナ~
にゃん民: 今日の配信どうなってるんだ?3Dモデル超進化?
にゃん民: え、背景リアルすぎない?ゲーム?
にゃん民: ルナちゃんめっちゃ動揺してるっぽいぞ
誰もが困惑する中、とある古参ファン、ハンドルネーム「ルナちゃんすこすこ丸」は眉をひそめた。ジニー時代からルナを推し続けてきた彼は、彼女の声色や仕草の変化を敏感に感じ取る。
「ルナちゃん、本当にパニクってる……これはただの企画じゃないな」
ルナは今、明らかに異世界的な風景の中でオロオロしている。画面にはUIらしきものがない。
ゲーム実況のはずがない。現実にありえない生物、空を飛ぶ謎の爬虫類、遠くで輝く奇妙な花々。これはいったい何なのか。
「まさか、本当に異世界転生してる……?」
とルナちゃんすこすこ丸は口走った。
馬鹿げているが、彼女の慌てぶりを見れば、演技とは思えない。
にゃん民: こんルナ~って言う暇もないぞこれ!
にゃん民: え、なに?手が溶けてる!?
にゃん民: スライムに触ったらグローブが溶けたってヤバくないか?
にゃん民: リアルタイムで見てるけど、演出じゃないよなコレ……
にゃん民: ルナちゃん大丈夫!?逃げて!
ルナはコメントを見ていないのか、画面には彼女が必死に後ずさる様子が映るだけだ。
現実世界の視聴者として、にゃん民たちはもどかしくて仕方ない。
「どうすれば助けられる……?」
誰かが呟くようにコメントを打つが、当然、画面内のルナに直接声は届かない。
にゃん民: スペチャなら気づくんじゃね?
にゃん民: 誰かスペチャ!お願い!
スペリオルチャット――視聴者が有料で投げ銭して、コメントを目立たせる機能だ。
通常のコメントとは違い、その派手な通知音と色付きメッセージで配信者の目を引くことができる。
しかし、多くのにゃん民は経済的余裕がない。
給料日前、学生、無職……様々な事情で高額なスペチャは厳しい。
にゃん民: オレ金欠だよ……
にゃん民: クレカ限度額いっぱい…
にゃん民: 誰か石油王にゃん民いないの?
「俺が、俺たちが守護(まも)らねば」
そう呟いたすこすこ丸は、なけなしの5000円を使ってスペチャを打つのだった……
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