第40話
これはどういう意味だろうかと聞きたかったが、顔を上げると先に彼が声をあげた。
「10分だけだよ。俺、羽織るもの持ってきてないからこれで我慢して?」
目の前にある顔が優しく微笑む。
麗は心臓が掴まれたような、きゅうっという感覚に変な顔をした。
功太と目が合ったまま、大きく息を吸い込む。
思った気持ちはすぐに口にしようとしたが、この時ばかりは照れ臭かったのか口を嗣ぐんだ。
代わりに頭を功太の肩に預けて、その腕の中に収まった。
「…ありがとう」
こっそりと呟いた麗の言葉は、波音に消されはしなかった。
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