第2話 勇者募集計画
―――勇者育成計画―――
ギルド所属の勇者クラスの者を対象とし『素質』解放並びに強化訓練を行う。尚不測の事態が起こる可能性があるため参加は任意とする。
参加希望の者は3日後までに参加の意思をギルドに設置している用紙に記入の上提出する事。
タクレイス国王 シシャール
ギルドに登録している勇者クラスの者はそこまで多くない、というか勇者クラスの者自体が少ない。
タクレイス城下町の住宅街にある自宅で昼食を食べながらユークトスは
「育成計画…か、俺が参加しないわけないと分かってて送り付けてきたな、流石王様やるじゃん」
ユークトスは用紙に参加希望とサラサラと書き込みギルドに提出に向かうとギルドの中は人人人、人混みもいい所だった。ユークトスはギルドの受付にやっと辿り着き用紙を提出しつつ受付嬢のマートに尋ねる。
「なあマー、何なんだこの人混み大規模な討伐戦でもあんのか?」
マートは首を横に振りながら今さっきユークトスが提出した用紙をひらひらと振って見せる。
「これのせいよ、勇者クラスだけと指定されているのが気に入らない異形狩りが押し寄せて来たのよ。ねえユーク、貴方ならどうにかしてこの状況を鎮められないかしら?」
マートはそれなりに名が売れているユークトスに聞いてみる。魔王と戦った事があるユークトスの言葉なら皆も聞いてくれるのではという淡い期待程度だったのだが
「あー、そういう事か。これを簡単に鎮める方法…ねぇ」
少し考えるとユークトスは近くにあったテーブルに飛び乗り大声で叫んだ。
「みんなちょっと聞いてくれ。今回の件に不満があるのは分かる、だがここで騒いでいても何も解決しないだろ?ここは俺に任せてくれないか」
「あん?ユークじゃねぇか。お前に何出来るってんだ?このふざけた通知を何とか出来るとでも言うのか」
異形狩りの何人かがユークトスに向かって叫ぶ。
「ああ出来るかもしれねぇ。今から国王に手紙を送るから返事が来るまでみんな静かに待っててくれ」
ユークトスはテーブルから飛び降りマートの所に向かうと1枚の紙を要求した。
「マー、魔法紙を1枚用意してくれないか」
「1枚でいいのね」
魔法紙を受け取るとユークトスはギルドの現在の状況を書き込み何とかしてくれと書くと魔法紙を国王に転送魔法で送った。普通の紙だと紙が魔力に耐え切れず燃え尽きる。
「よく国王様へ直接送れるわね」
「今使ったのは俺の魔力でしか起動しない転送魔法なんだよ。危険物は一切送る事が出来ない、送れるのは魔法紙限定って制限付きで国王様が作ってくれた魔法なんだ。魔王城までの道中はこれでやり取りが出来る。魔力通信だと発信地点を特定されて通信中に異形が集まってくるからなぁ。紙をパッと送って終わりだと場所を特定されにくいのさ」
「ユークも苦労してるのね」
「ああ苦労しまくりさ。ボロボロの状態で魔王の所に辿り着いても負け確定じゃん?いかにパーティー全員消耗しないように辿り着けるかいつも考えてるよ」
そんな事を話していると伝書鳥が手紙を持って来た。
「お、返事が着たな。『異形狩りの皆様へは後ほど素質判定を実施したいと考えていますので今回は勇者クラスを優先させて下さい』だそうだ」
「そういう事なら仕方ねぇ、ここは勇者クラスに道を譲ってやるよ」
異形狩りの面々が騒ぐのを止めた所でユークトスが
「皆、ありがとな。俺達がいない間の異形退治は任せるぜ」
オーーーーーー!任せやがれぇぇぇ
ギルドの中に今日一番の大声が響き渡った。
こうしてタクレイスからはユークトスを筆頭として11名の勇者クラスが名乗りを上げた。
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