【アクションを極めろ】ロバート・マッキー他「アクション作品創作バイブル」

アクション作品創作バイブル (フィルムアート社)

ロバート・マッキー (著), バシム・エル゠ワキル (著), 越前敏弥 (翻訳)

発売日 ‏ : ‎ 2025/2/26



 犯罪ドラマ、ホラー、恋愛モノ……世の中にはたくさんのジャンルがあるが、本作はなかでも「アクション作品」に特化した創作の指南本である。アクション作品といえば、なんといっても創作の華。スリリングかつ胸踊らせる展開で読者や観客を興奮にさそう。そうしたアクション作品の創作を極めんとするものに捧げられたのが本作である。


 作者のロバート・マッキーは創作本の大家で、ジョージ・ルーカスやロバート・ゼメキスといった人物に指導したことで知られている。これまでに「ストーリー」「キャラクー」「モノローグ」といった作品を上梓。本作では、「ダイ・ハード」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(以下GOG)」「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」といった大ヒット映画を題材に、アクションの創作を論じる。


 内容は、アクション作品の主な価値要素・登場人物・出来事・(観客に感じさせる)感情・作品の設計、それからサブジャンルの紹介などからなる。

「価値要素」というのは、(ビジネス用語としてはあるが)おそらく作者が独自の意味で用いている言葉で、『「生/死」「快楽/苦痛」「正義/不正」などのように、人間の状態をプラスからマイナス、またはマイナスからプラスへ逆転させる、ふたつの向きを持った要素』として説明される。

 要するに、「作品のなかでなにが問題となっているのか」を表す言葉である。例えば『ターミネーター(1984)』などはわかりやすい。この作品の価値要素は「生/死」である。未来からやってきた不死身の殺人ロボットからサラ・コナーという一般女性がどのように逃げ切るかというのが、本作の価値要素になっている。価値要素に従い、物語は生か死かの瀬戸際で展開するのである。

 ロバート・マッキーは、すべてのアクション作品の価値要素は、「生/死」であると断定する。「ダイ・ハード」も「GOG」もすべて「生/死」を問題とする作品なのである。


 また、主要な登場人物は「ヒーロー、悪役、被害者」であるとか、主要な出来事が「ヒーローの運命が悪役の手中にある」ことであるとか、(観客に感じさせる)感情は「興奮」であることなどが語られる。これらの主張には一見「あれ?」と首をかしげることだろうが、一冊通して読めば疑問は氷解することだろう。


 このほかにも、小説の設計のパートでは、「契機事件」や「マクガフィン」という用語を紹介。アクション作品の骨格がありありと見えてきて、創作に対するヒントが得られること必至である。


 本書は非常に内容のつまった一冊となっているため、書かれている内容がしっくりと心に落ちてくるまで長い時間と経験を必要とするだろう。私は通読したものの、まだ理解しているとはいい難い。それでも、一読しただけで、創作のヒントとなる知見は得られた。理論を学んだあとは実践あるのみである。本書をかたわらにおいて、創作のガイドとしたい。

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