第33話 「失うこと」と向き合う
失うことは、いつも突然やってくる。予想していないとき、準備が整っていないとき、私たちは何か大切なものを失う。それは物や場所であることもあれば、人間関係や時間、さらには自分自身の感情や希望のような抽象的なものかもしれない。どれほど大切にしていても、失うことは避けられない。だからこそ、「失うこと」とどう向き合うかは、私たちが生きていく上で避けて通れない課題だ。
私自身、いくつものものを失ってきた。大切にしていた友人との関係、安心できる環境、そして時には自分の気力や自信さえも。そのたびに心の中にぽっかりと穴が空き、埋めようのない喪失感に襲われた。失うたびに、「もっと大事にしていれば」「あのとき違う選択をしていれば」と後悔の念が押し寄せ、しばらくその思いから抜け出せなかった。
けれども、時間が経つにつれて気づいたことがある。何かを失うことで、新しい何かを得るチャンスが生まれるということだ。たとえば、失った人間関係があったからこそ、自分にとって本当に必要なつながりを見つけることができた。失った希望があったからこそ、別の道を探し、そこで新しい目標を見つけることができた。失うことは決して楽ではないけれど、それが成長や変化のきっかけになることもあるのだ。
失うことと向き合うためには、まずその感情をしっかり受け止めることが大切だと思う。悲しみや喪失感を無理に消そうとせず、それらを感じきること。それは簡単ではないけれど、そのプロセスを経ることで少しずつ心が整理され、新しい一歩を踏み出す準備が整う気がする。
また、「失うこと」をすべてネガティブに捉えないことも重要だと感じるようになった。失うことで空いたスペースには、新しいものが入ってくる可能性がある。そのスペースを恐れず、未知の何かに期待することで、失うことの意味が少しずつ変わっていくように思う。
「失うこと」は人生の一部であり、それを避けることはできない。だからこそ、その経験を通じて自分を知り、成長することができるのではないかと感じている。これからも、何かを失うたびにその痛みと向き合いながら、新しい可能性を見つける旅を続けていきたいと思う。それが、私にとって「失うこと」との向き合い方なのだろう。
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