第1192話 新幹線はテンション上がる、マジで上がる

 新たなる黒歴史を創造してしまった俺ちゃんが、精霊知能三姉妹達に慰められたり励まされたりしながらも時間は過ぎた。

 新幹線が到着する頃合いである。旅行気分であちこち散らばっていた仲間やスタッフのみなさんもさすが、時間厳守で一人の欠けなく再集合している。土産袋だのなんだの提げてね。


 かく言う俺達もサクッと弁当だけ買っての集合だ。駅弁って美味しいよね、なんか特別感があって。

 俺とシャーリヒッタは肉をメインにしたお弁当でリーベは海鮮メイン。ヴァールに至ってはまさかのおにぎりをいくつかとお茶である。


 なんでも食事時はソフィアさんと交代するみたいで、彼女はお肉が食べられないから無難なものにしたみたいだ。

 若干のオカン味を感じさせるね、この子……特にソフィアさんに対してはちょくちょく保護者感を出しているよ。

 

「リーベちゃん達はお土産、向こうで買いますものねー。えへへお弁当が美味しそうですー!」

「こっちのお土産もうちの家族なら喜ぶとは思うけど、まあどうせなら普段行かない首都圏のものを買いたいもんな」

「ヴァール、オメーは土産とか何も買わねーのか? それか向こうでか」

「いや、買う予定がそもそもないな。ワタシまで物見遊山の心地でいては収拾がつかん。そもそも土産を買う相手などお前達以外にいない。旅の連れ合い相手に土産は買うまい」

 

 微妙に寂しい気もすることを口走るヴァールに、帰ったらまた山形家においでよ……と精一杯の慈愛の視線を3人で向ける。

 それに対して困惑しながら軽くうなずき、彼女はとりも直さず一同に号令を出した。

 出発の時だ。

 

「よし、諸君。それでは行こうか、出発だ」

「1車輌丸ごと貸し切りですので、入ればお好きな席に座ってください。ただ言うまでもないですが節度を守った態度をお願いしますね? 我々は行楽に行くのではないのです」

「みんなして土産袋提げてりゃまあ、そう言われるよなあ……」

 

 リーダーさんの釘刺しに、みんなして苦笑い。特にこのへんが地元の全探組の探査者さん達はともかく、遠方から来てるだろうWSOのエージェントさんや能力者犯罪捜査官さん達はかなりガッツリ土産買い込んでるからね。仕方ないね。

 古都ならではのお茶菓子から香辛料、はたまた櫛だのコスプレ用の羽織だのまで買ってる人見たし。羽織ってなんかカッコいいもんね、すっごい気持ちは分かる。

 

 さておきみんなで歩き出す。例によって2列に並んでの速やかな移動だ。

 新幹線ホームは今いる改札口付近エリアの上階にあり、エスカレーターを昇って進入する。幹線鉄道のホームに比べ、高架上にあるからかなんだか見晴らしの良い光景が視界に飛び込んでくる。

 

「すげー! 公平サン、なんかカッケーですここ! 発着場!」

「普通の電車のホームとはまた趣が違うよなあ。写真撮って家族に送ろ」

「良いですねえ。どれ、私もそうしましょうか」

「ファファファ! 私もしようかね、孫に今ここにいるよって文章付きで送ってやろうさね」

「私も兄ちゃん、姉ちゃんに送る。きっと兄ちゃんなんか嬉しがると思う。電車好きだから」

 

 風除けにアーケード状の屋根がつけられた、長い長い発着場。新幹線はすでに到着しており、落下防止用のガードがドア部分だけ開き、人が入れるようになっているね。

 普段なかなか見れない光景だ。思わずシャーリヒッタとともにはしゃぐ俺に、まさかのベナウィさんとマリーさん、リンちゃんが乗っかってきた。5人で新幹線の姿からホームの光景までパシャパシャ撮影する。

 

 他の人達もいくらか写真を撮りながらも、間違ってもそれにのめり込んで乗り遅れがないようにそそくさと乗り込む。

 車輌内もこれまた広くて、通路を真ん中にして左右にそれぞれ3つ並びの座席と2つ並びの座席が20列くらい、整然と設置されている。

 

 うーん、30人程度でも空きまくりだこれ!

 貸し切りなだけあって余人を気にする必要がないことからも、はしゃごうと思えば相当はしゃげてしまえるよねこれ。怖ぁ……リーダーさんが念のためと釘を差すのも分かるよ。

 スタッフさん達も若干そわそわしてるし。めっちゃ気持ち分かるー。

 

「こ、こんだけ広々とした空間を数時間、これだけの人数で貸し切りかぁ」

「仕事じゃなかったらマジではしゃいで遊んでるわね、これ」

「さっすが統括理事やら特別理事、S級探査者が数名いるような道中だぜ。やることのスケールが違うわ」

「……たしかに豪勢っちゃ豪勢ですけど、先輩。地元スタッフさん達、アレはアレで喜び過ぎでは?」

「地元だからこその感覚だろ、たぶん。ほら、観光地ってその地に住む人からしたら逆に縁遠いって話も聞くし」


 全探組スタッフのはしゃぎ方も分かるし、いやいくらなんでもはしゃぎすぎじゃない? ってなってる能力者犯罪捜査官さん達の気持ちも分かる。

 そもそも基本的に新幹線が通過するだけでしかない県に住む俺ちゃんとしては、やっぱりこの豪華な貸し切りぶりにはテンション上がるけどね。窓から家とか学校とか見えるかなー。さすがに無理かなーなんて!

 とりあえず窓側を確保しよーっと。

 

 座席の上に設置された荷物置き場に一同荷を積み、各自適当な席に好きな組み合わせで座る。

 俺は割と前のほうの席に向かう。完全になんとなくだけど、車両連結部近くにあるトイレと距離が近いからってのもあるね、念のため。

 

「ハッハッハー、公平さんの隣の席もーらい!」

「はっはっはー! それじゃそんな師匠の隣の席もーらい!」

「エリスさん、葵さん」

 

 と、窓際に座った俺の隣にすかさずエリスさんが座り、さらにその横には葵さんが座る。目にも止まらぬ連携プレーだ。

 なんなら前の席にはマリーさん、サウダーデさん、ベナウィさんが座ってるし、後ろの席には精霊知能三姉妹が座るし。リンちゃんに至ってははしゃいで空いてる座席を独り占めだ。天衣無縫の天真爛漫さに、見ていたスタッフさん達が微笑ましそうにしているや。


 いつものグループで固まる形になってるなーこれ。

 他にもいくらでも席空いてるんだけど、まあ仲間内なら気安いしね。そう考えつつ俺は、柔らかくて気持ちいい座席を堪能していた。

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