第53話 相性
翌日のお昼休み。俺と有栖と碧唯さんでまた生徒会室に来ていた。
「じゃあ、お二人さんはごゆっくり……」
「ちょっと碧唯も待って」
出て行こうとする碧唯さんを有栖は呼び止めた。
「どうしたの?」
「電話で碧唯には言ったけど、改めて昨日はごめんなさい」
「いいよ、もう。独占欲丸出しの有栖も可愛かったし」
「ほんとごめん。だから二人で会ってもいいし、このあとも二人で一緒に帰って」
「別に私は白木君と一緒がいいわけじゃないけどね」
「分かってる」
「でも、正直、あのままだとやばいなって思ってたから有栖が反省してくれて良かったよ」
「うん、反省した」
「つきあい始めて浮かれてる有栖を見れたのも良かったけどね」
「からかわないでよ……恥ずかしいんだから」
「ふふふ、いろんな有栖を見れるのが役得だね」
「役得か。でも、いつも迷惑掛けちゃってごめんね」
「いいって。その代わり、秘密の二人を私だけが堪能させてもらってるからね」
「でも、覗かないでよ」
「覗きはしないから。でも声が聞こえたらごめんね。じゃあね」
碧唯さんは出て行った。
「たっくんも、昨日はごめんね」
「もういいよ」
「でも、昨日のこと思い返したら家で落ち込んじゃって……」
「そうか」
「なぐさめてほしいな」
そう言って体を預けてくる。俺は有栖を抱きしめたが、有栖は頬を膨らませて俺を見た。
「ちがうちがう、そっちじゃなくて、頭。なでてほしいから」
「そ、そうか」
俺は有栖を左手で抱きながら右手で頭をなでる。
「えへへ。幸せ」
うっとりする有栖は本当に可愛い。俺はずっとなでて続けた。
すると、そーっと扉が開く。そして碧唯さんが小声で言った。
「そろそろだけど、そのままでいいよ」
「え?」
「私にもなでられる有栖をまた見せてよ」
「……少しだけだよ」
そう言って有栖はさらに俺にもたれかかる。俺は恥ずかしかったが、有栖をなで続けた。
「うわあ、幸せそう」
「幸せえ……」
「有栖、顔がふにゃってなってる」
「え?」
慌てて有栖が俺から離れる。
「私、ブスな顔してた?」
「違うよ。いつもよりふにゃふにゃで可愛いかったよ」
「そ、そうなんだ……可愛いなら、いいか」
「でも、もう時間だから」
「うん。たっくん、碧唯と一緒に戻ってて」
「でも……」
「いいから」と有栖は俺を押しやった。
「わかった」
俺と碧唯さんは一緒に廊下に出て歩き出す。
「いやあ、今日の有栖可愛かった」
碧唯さんが言う。
「あんなことずっとしてたら変な気になってこないの?」
「そりゃなるけど、我慢するしかないだろ」
「やっぱりなるんだ……白木君も男の子だもんね」
「お前、俺が我慢してたとか有栖に言うなよ」
「わかってるって。でも、注意してよ。過激なことは学校ではちょっと……」
「当たり前だ。今もまずいとは思ってるよ。昼休みも勉強会にしたほうがいいと思ってる」
「おう、いいね。だったら、私もやりたいかも」
「そうだな。明日から3人で勉強会にするか」
◇◇◇
放課後、幸子さんの家で勉強会を行い、その後にクロをなでながら、ケーキをいただく。
「幸子さん、昨日の幸子さんの言葉で目が覚めました。今はたっくんを出来るだけ縛らないように頑張ってます」
有栖は言った。頑張って許してるんだな。
「うん、そうしたほうがいいよ。でも、拓実君もちゃんと有栖ちゃんには配慮してね」
「わかってます。できるだけ女子とは話しませんし、報告もマメにするようにします」
「たっくん、ありがとう」
「あら、いい彼氏ねえ。私もこういう彼氏が良かったなあ」
「むぅ……」
その言葉を聞いて有栖が幸子さんをにらんだ。
「あら、有栖ちゃん、すごい顔になってるよ」
「あ、すみません。私、幸子さんにまで嫉妬しちゃって……」
「アハハ、でも嬉しいね。私もまだまだいけるって思っちゃたよ」
「いや、いけますよ。ね、たっくん?」
「うん、高校生男子にはちょっと刺激強いときもあるし……」
服装がルーズでやばいのだ。
「え? そう? わー、嬉しいなあ」
「たっくん……そんな目で幸子さん見てたの?」
有栖がジト目で俺を見る。
「ち、違うから!」
「アハハ、大丈夫だから有栖ちゃん。また、恐い表情になってるよ」
「す、すみません……でも、たっくんって大人っぽい女性が好きなの?」
冷静に考えてみると有栖の見た目も大人っぽい。
「たぶんそうかも」
「そうなんだ、じゃあ、結梨よりもお母さんが敵か……」
「なんでだよ、まったく……」
「じゃあ、有栖ちゃんのタイプは? 年上タイプ? 年下タイプ?」
「うーん、どちらかといえば年下かも。たっくんの世話を焼きたくて仕方ないんです。頭もなでたいし。でも、甘えたいときもあるんですよね……」
まあ、たっくんという呼び方自体が年下を呼ぶ感じあるもんな。
「じゃあ、二人は相性いいんじゃないの?」
「そうかもしれないですね」
相性か。俺が好きなタイプと有栖が好きなタイプがたまたまハマったのかもな。
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