第12話 自分に優しく大切にすること

はぁ~はぁ~。

病室は走ってはダメとわかっていても…。

少しでも早く…宇宙の顔を見たい…。

後、数メートルで宇宙の病室だ…。


宇宙~。待っててね。

すぐ会いに行くからね。


凛子は、宇宙の顔を見れるまで、気が気ではなかった。


宇宙はベットの中で、ぐったりしていた。

顔もかなりやつれてやせ細っていた。


凛子は、本能的に頭を腕で包み込むように、

思わずギュッ~っと抱きしめた。


宇宙が…凛ちゃ~ん。

うぐぐぐぅっ~。くるしいよぉ~。


凛子は、「あっ、ごめんごめん。」つい…力が入っちゃった。


宇宙は、凛子からの愛情パワーをもらえたからなのか?

いつもの笑顔が少し出せるようになった。


凛子は、宇宙に…「たまごパン」一緒に食べる?って、

優しく声をかけた。


宇宙は、「うん。食べる。」ってまるで子供のように、

かわいい声で答えた。


今はもう、仕事の事も、人生の事も抜きにして、

ふたりの時間を楽しもうと凛子は思った。



凛子は、宇宙が作詞作曲したあの歌を聴きたい~。

とリクエストした。

宇宙は…ここで?って笑っていたが…。

嬉しかったのか…ノリノリで、ツービートで、

リズムを箱で叩いて取りながら…歌い始めた。



― 愛はいつでも~ロマンティックでなくっちゃ~ー



久しぶりに、生宇宙の美声を聴いたのだ…。

ほんと~何十回聴いても素敵って凛子は思ったのだった。


宇宙も凛子のおかげで、今まで疲れてクタクタだった心が、

少し解放された気がした。   



―凛ちゃん~ あ・り・が・と・う―


宇宙は凛子にありたっけの慶びと感謝を込めて伝えたのだった。


凛ちゃんは、照れていた…。

凛ちゃんって本当にかわいい。って宇宙は思った。


退院後、宇宙は職場に、2週間は通ったのだが、

やはり限界で、出勤前に妻に素直な気持ちを吐き出したのだった。


しかし、妻は「何!甘えてるの!」って厳しくて、

宇宙は脱力感を抱えながら、また車を走らせて職場に向い始めた。


たまらなくなって、凛ちゃんに電話をした。

すると、凛ちゃんは上司にちゃんと今の素直な気持ちを、

話した方がいいと言ってくれた。


凛子はとても心配になったけれど、宇宙を信じようと思った。



その後、職場に着いた宇宙は、上司に素直に自分の胸内を、

泣きながら話したのだった。


宇宙の上司はとっても温厚な人なので、

ゆっくり話に耳を傾けくれた。

「今日はもう帰ってゆっくりしてくださいね。」と言ってくれた。


宇宙は、その帰りに、ふと…とっさに前の会社に、

電話をしようと思った。


入院した事で迷惑をかけて退職を決めて辞めた会社だったのが、

新しい職場2社に行って働いて、改めて、前の会社が自分にとって、

物凄く合って居たという事が分かったのだった。


ダメ元で、所長に電話をかけてお願いをしたのだった。

意外と、すんなり快く受け入れて下さったので、

宇宙はほっと胸をなでおろしたのだった。


これで次の仕事は決まった。


宇宙は、さっそく、凛ちゃんに電話をして、

ここまでのいきさつを全て、一気に早口で伝えまくったのだった。


凛ちゃんは、凄いわ〜って、めちゃくちゃ喜んでくれたのだった。


妻に帰って話すと…

『なに!勝手に辞める事を決めるのよ!』と怒られたが、

宇宙は、心の中で、好きに言ってろ。って感じだった。


自分自身の素早い動きに、我ながら…驚いたのだった。


今回…手術入院を繰り返した事で、自分自身の事は、

自身で守って大切に優しくしてあげなきゃなぁって事を、

学んだ気がした。


働くのは僕だ!!

僕の心を、僕は大切にするんだ!!

宇宙は以前よりも…。

少しだけそんな自分が、愛しいなぁ〜って思ったのだった。


そして、ここぞという時に、いつも凛ちゃんに、

相談出来ている事に感謝したのだった。


ー凛ちゃん、あ·り·が·と·うー



凛子も、宇宙が自らを守る意味合いで、

以前の会社にすぐ電話をして、

再入社させてもらうように動いた行動力に感動してしまった。


宇宙は、自分が入院した時に、凛ちゃんが、何気に言った言葉を、

思い出したのだった。


あの時は、凛ちゃんが言っている意味が分からなかったのだが、

なぜか?脳裏に残っていたのだ。



凛ちゃんは、『宇宙は、この手術入院生活を送る事で、

社会や人を呪わなくなり、今までの自分とは変わって、

敵が減ってくると思うよ。』



もしかしたら…。

僕が思っている以上に…。

凛ちゃんって…凄い人なのかも…って思ったのだった。



凛子は、とっても綺麗なまん丸のお月さまを見上げながら…


今日の宇宙のあの優しい笑顔を思い出し、

ほっと胸を撫で下ろせ、

優しい穏やかな気持ちになれたのだった。



ー宇宙、これからも

自分を信じて頑張れ!!ー


ー凛子は何があっても宇宙の味方だぞぉー!!ー


と心の中で、叫んだのだった。



凛子は、妹夫婦の離婚騒動から、とても疲れていた。


妹は、相変わらず…自分の事しか考えておらず、

こんなに妹の子供達の事を守って行こうと、

必死に取り組んでいるのに…。


『お姉ちゃんは私の子供を奪ってどうする気だ!!』とか


『病院で、皆と、鬼姉!!って毎日悪口を言ってるんだ!!』

とか…暴言しか言われないのだった。



凛子は情けなくて…。

『私こそ、なんで?こんな役目を背言わなきゃなんだ!!』

と海に向かって叫んだりしながら、

また気持ちを建て直しては、奮闘していたのだった。



そんな時、『久しぶり〜』と宇宙から電話があった。

どうやら、ボチボチ仕事を頑張っている様子。



以前よりは、宇宙らしくお仕事も出来ているみたいだし、

素直に、人に力を借りようと、

出来るようにもなったと話してくれた。



ただ、相変わらず…。

宇宙とか男性陣の何人かだけ…仕事を入れられて…

『忘年会』に参加が出来ないとボヤいていたのだった。



宇宙は、かなり行事の節目を重んじる所があるので、

『気分が悪い!!』と激怒していた。


凛子は、『じゃあ、2人で忘年会をしょうよ。』と宇宙に提案した。



宇宙は、『やったぁ〜!! うんうん、しょうね!!

 めちゃくちゃ、僕…楽しみ〜』



って…無邪気な子どものように、宇宙は電話口で、

はしゃぎ過ぎて、いつの間にか?

映像通話に切り替わっていたのだ。


でもおかげで、宇宙の、顔をくしゃくしゃにして、

笑う表情が見れて、凛子はめちゃくちゃ、癒されたのだった。



宇宙のスマイルは、最強だわ!!


宇宙との『忘年会』は、凛子もめちゃくちゃ楽しみで、

宇宙と何かをしたいと思うと、凛子は、ワクワクするのだった。


















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