第11話

ゴブリンキングまでの道を切り開くためゴブリンを減らしていたが、ゴブリンの群れは果てしなく続いていた。


  俺は進化した力で次々とゴブリンを斬り倒し、数えきれないほどの敵を葬り去ってきた。数日で三千体以上は確実に倒したはずだ。


  それでも、まだ無数のゴブリンが目の前に現れ、道を塞いでくる。


「これじゃキリがない…」


 進化し、強力なスキルを手に入れた俺でも、この数の前にはさすがに疲労が蓄積してきた。

 

  クリムゾンブレードや風魔法を駆使して一度に多数のゴブリンを殲滅してきたが、その度に少しずつ体力が削られていく。確実に敵を倒してはいるものの、それ以上の数のゴブリンが押し寄せてくる。


「これじゃ、ゴブリンキングに辿り着く前に消耗しすぎてしまう…」


 俺は周囲を見渡す。


  倒したゴブリンの死骸が足元に山のように積み上がっているが、それでもゴブリンの群れは絶えず湧き出てくるようだった。


  普通のゴブリンだけではなく、ファイターやアーチャーといった種類も混ざっており、それがさらに戦いを長引かせている。


「まだ、数千体は残ってるだろうな…」


 このままのペースで戦い続けていては、確実にゴブリンキングに到達する前に俺の体力が尽きてしまうだろう。


  回復の時間もほとんど取れないまま、ゴブリンの攻撃にさらされ続けるのはまずい。


 俺は一瞬考えた。このまま進むべきか、それとも何か別の手段を取るべきか。いずれにせよ、この大量のゴブリンを突破しなければ、ゴブリンキングに挑むことはできない。


「くそ…一気に突破する方法があれば…」


 俺は息を整えながら、次の手を考える。ゴブリンキングのいる巣穴はすぐそこだ。


  だが、そこまでの道のりがあまりにも厳しい。


  これまで倒してきたゴブリンたちと、さらにその先に待ち受ける数千体のゴブリンの壁をどう突破するかが、今後の鍵となる。


「まだ、力を使い果たすわけにはいかない…」


 俺は周囲を見回し、どうにかしてこの状況を切り抜けるための策を練りながら、少しでも体力を温存できる方法を模索した。


 無理だと判断した俺は一旦撤退し、数日間にわたって慎重にゴブリンの数を減らしていった。毎夜、擬態を使ってゴブリンの群れに忍び込み、少しずつだが確実に敵を倒し続けた。


  これで、無謀な突撃を避け、体力を温存しながら数を減らすことができる。


「これで、だいぶ減ったな…」


 最初に三千体を倒し、さらに数日間で残る数千体のゴブリンを着実に削り続けた結果、ようやく目の前には数百体程度しか残っていない。


  消耗していた体力も徐々に回復し、今ならゴブリンキングのもとへ辿り着ける。


「次で決める…」


 俺は残るゴブリンたちを見据え、次の戦いに向けて気持ちを引き締めた。ゴブリンキングとの決戦が、いよいよ始まろうとしていた。


 俺がゴブリンの数を着実に減らし、いよいよゴブリンキングに辿り着けるという時、そこには新たな壁が待ち受けていた。


「やはり簡単にはいかないか…」


 ゴブリンキングの周りには、これまでとは異なるゴブリンたちが配置されていた。

 

  どのゴブリンも、一目で強力な戦士だとわかる。剣や盾を持ったゴブリンソード、魔法を使うゴブリンマジシャン、強靭な肉体を誇るゴブリンチャンピオン。どれもただの雑魚ではなく、本物の精鋭ばかりだ。


「ここからが本当の勝負だな…」


 これまでのゴブリンと違い、精鋭たちはまとまった動きをして俺を囲む準備を整えていた。


  ゴブリンキングに辿り着くには、この精鋭たちを突破しなければならない。


「消耗する前に、手早く片付けるしかない」


 俺は刃を構え、全力で挑む覚悟を決めた。


 俺は精鋭ゴブリンたちを見据え、一歩前へ踏み出した。


  彼らもまた俺の進化を感じ取っているのか、警戒してじりじりと距離を詰めてくる。


  俺のレベルはこれまでの戦いで確実に上がっている。もう以前のように圧倒されることはない。


「今なら…やれる」


 まずはゴブリンソードが斬りかかってくる。


  俺はその一撃を軽くかわし、すかさず斬撃で反撃。ゴブリンソードの剣を叩き落とし、一気に肩口を切り裂いた。


  だが、隙を見せることなく、次にゴブリンマジシャンが呪文を唱え始める。


「やはり手強いな…!」


 マジシャンの魔法が迫るが、俺は素早くマナシールドで防ぎ、逆にその隙を突いて風魔法を放つ。


  風の刃がマジシャンに命中し、呪文を途切れさせた。続いてゴブリンチャンピオンが襲いかかるが、以前の戦いと比べれば、今の俺には圧倒的な力の差は感じない。


「少し苦戦はするが…十分だ!」


 俺はファントムスピードを発動し、圧倒的なスピードでゴブリンチャンピオンの攻撃をかわしながら、背後に回り込む。素早い一撃でその巨体に深い傷を負わせた。


  精鋭ゴブリンたちは手強いが、今の俺には勝てない相手ではない。


 時間をかけず、次々と敵を倒していく。これまでの戦いで成長した俺にとって、彼らはあくまでゴブリンキングへの障害に過ぎない。


「これで終わりだ!」


 最後のゴブリンを倒し、俺は息を整えた。いよいよ、目の前にはゴブリンキングが待っている。


  長い戦いの果てに辿り着いたこの瞬間、勝負の時が来た。


 俺がゴブリンキングの前に立つと、その巨大な体はゆっくりと動き出し、重苦しい唸り声を上げた。


  赤い目が鋭く光り、周囲を見回しながら、まるで計画が狂わされたことに対する苛立ちが滲み出ている。


「貴様、カマキリごときが…!俺の兵を何千も倒し、俺の計画を遅らせたな!」


 その声には、抑えきれない怒りが込められていた。俺を睨むその目には、兵を失ったことによる焦燥と、計画の進行が阻害されたことへの苛立ちが混ざっている。


「カマキリ風情が…!貴様のせいで全てが遅れる…!俺の完璧な軍勢が、たかが虫けらに…!」


 ゴブリンキングは拳を強く握りしめ、目の前の現実に怒りを爆発させていた。


  俺がここまでの兵力を削ったことで、こいつの計画が大きく狂わされたのだろう。


「貴様が……俺の邪魔をしなければ、計画は順調だったんだ!カマキリごときが何を企んでいる!?」


 俺は冷静にその言葉を聞き、答えた。


「俺はただレベルを上げてるだけだ」


 その言葉にゴブリンキングの目はさらに怒りを帯び、顔は怒りに歪んだ。


「な!?そんなくだらない理由で!貴様!カマキリ風情が俺の計画をここまで壊すとは…許さん!貴様のせいで、兵も時間も失われた…その代償は大きいぞ!」


 ゴブリンキングは巨大な剣を持ち上げ、その怒りを全身に宿らせた。


「俺の時間を奪い、兵を減らした報いを、今ここで受けるがいい!カマキリよ、粉々にしてやる!」


 その巨体が突進してくる。


  ゴブリンキングの怒りは、計画の崩壊と兵力の損失に対するものだ。


  だが、その怒りを冷静に受け流し、俺は戦闘態勢を整えた。


「なら、終わらせてやる!」


 俺は刃を構え、ゴブリンキングとの戦いが始まる瞬間を迎えた。


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