[アーク1] 第1章:文学の覚醒

夕暮れの半明かりの中で、キリンの図書館の棚は静かな番人のようにそびえ立ち、時代を超えた知識の守護者であった。そこに並ぶ本の一冊一冊が一つの宇宙であり、ジュン・パクという図書館員が大切にする逃避の約束であった。彼の指先は、かつて冒険の記憶が詰まった擦り切れた装丁を、ほとんど愛情を込めるようにそっと撫でた。過去の遺物と未来の物語に囲まれた彼は、知識の聖域において生きていることを実感していた。


ジュンは子供の頃から本への情熱を抱いており、時には厳しい現実から逃れるために物語に頼ることが多かった。懐中電灯を手に毛布の下で過ごした夜の記憶は今も鮮明で、彼は飽くことなくページをめくり続けた。この情熱が自然と彼をキリンの図書館へと導き、職場であるだけでなく、本当の使命を見つける場となった。


その夜、最後の陽が地平線の彼方に消える頃、ジュンはいつものように館内を見回っていた。すべての本が正しい場所にあり、棚が整然としていることを確認していた。彼は古典のセクションで立ち止まり、『レ・ミゼラブル』や『白鯨』の並ぶ場所に目をやった。『オデュッセイア』を手に取り、ユリシーズの冒険に思いを馳せながらページをめくった。


突然、軽い音が彼の注意を引いた。振り向くと、若い少女が一冊の本を手に取り、借りるべきか迷っている様子で立っていた。ジュンは優しい笑顔を浮かべ、そっと近づいた。


「何かお探しですか?」と尋ねると、少女は驚きの表情で顔を上げ、照れくさそうにうなずいた。「はい、ギリシャ神話について知りたいんです。伝説が大好きで…」


ジュンは近くの棚を指し示しながら、「ここにいくつか興味深い本がありますよ。おすすめが必要なら、遠慮なく聞いてくださいね」と答えた。


少女を助けた後、ジュンは自分のデスクへと戻った。彼は読書の楽しさを他の人と共有できる瞬間を愛していた。図書館は彼にとって単なる仕事場ではなく、避難所であり、聖域であった。


彼は机に腰を下ろし、個人的な日誌を取り出してその日の出来事や感想を書き留め始めた。この習慣は長年続けてきたもので、興味深い出来事や印象に残る出会いを細かく記録することが趣味となっていた。書き込んでいると、図書館の扉が開く音が聞こえ、来館者を知らせるベルが鳴った。


年老いた男がゆっくりとジュンの方へ進み出てきた。彼は擦り切れたコートと古めかしい帽子を身に着けていたが、その目は鋭い知性で輝いていた。


「こんばんは、若いの。」老人は笑みを浮かべ、黄ばんだ歯を見せながら言った。「珍しい本を探していてね。手を貸してもらえるかな?」


ジュンは頷き、いつでも文学愛好者を助ける気持ちでいっぱいだった。「もちろんです。どんな本をお探しですか?」


老人はポケットから紙片を取り出し、慎重にそれを広げた。「不死者の年代記だ。」


ジュンは驚きで身を起こした。それは彼が今日発見したばかりの本だった。「実は、今日ちょうど見つけたところです。古書のコーナーにありますので、ご案内します。」


彼らは一緒に、ジュンが不死者の年代記を見つけた奥まったアルコーブへと向かった。老人はその本を目にすると目に見える興奮を浮かべ、震える指先で革の装丁を撫でた。


「この本には…興味深い歴史があるのですか?」と老人に尋ねた。


老人は謎めいた微笑みを浮かべた。「この本は、古の秘密と忘れられた英雄の物語を記していると言われている。読んだ者は人生が変わると言うよ。」


興味をそそられたジュンは、老人と一緒にその場で不死者の年代記を読み始めることにした。ページをめくるごとに、運命の結びつきが深まっていくのを感じ、言葉が彼の心と魂に直接語りかけているかのように震えた。


図書館の静寂の中で、謎めいた空気と期待が漂っていた。ジュンは声に出してその壮大な物語と英雄的な冒険を朗読した。ページをめくるたびに、新しい世界、新しい冒険が次々と現れるようだった。老人は彼をじっと見つめ、深い知恵の光がその目に宿っていた。


そのとき、変化が起こった。書物から低いうなり声が響き、図書館の壁が震え、ページから黄金の光が放たれ、ジュンを眩い光に包み込んだ。読んでいた言葉が再構成され、まるで彼に直接語りかけるメッセージが現れた。


「ジュン・パク、君の運命は決まった。君は世界を繋ぐために選ばれた不死者である。」


ジュンは強力なエネルギーが体を貫くのを感じた。言葉が彼の精神と魂に刻まれるように。老人は満足げに目を輝かせながら立ち上がった。


「君は選ばれたのだ、ジュン。君の人生はもう二度と同じではないだろう。運命を受け入れれば、想像を超えた驚異を目にすることができる。」


ジュンが質問する間もなく、老人は光の渦に消えていった。ジュンは茫然と不死者の年代記を閉じ、彼の人生が不可逆な転換点を迎えたことを悟った。


それから数日、ジュンは自分に起こったことを理解しようとした。不死者の年代記は彼に超自然的な力と、彼が体現すべき不死の英雄の記憶を与えていた。しかし、文学の覚醒に影響を受けたのは彼だけではなかった。街の他の人々も、自分のお気に入りの本に関連した力を示し始めた。


ジュンはまた、キリンの街に微妙で不安を感じさせる変化が起こっていることにも気づいた。彼がよく知る通りの通りが時折、まるで夢か悪夢から抜け出したかのように変わるようだった。住民たちもどこか張り詰めた表情で、奇妙な幻覚や説明のつかない現象について話していた。


ある夜、ジュンが不死者の年代記の研究をしていると、ページの間に手書きのメモが挟まっているのを見つけた。古代の言語で書かれていたが、触れると理解が湧き上がるような感覚を覚えた。その言葉は目の前で変わり、警告のメッセージとなって現れた。


「これを読む者は、想像を超えた力と対峙する覚悟を持たねばならない。この年代記は、忘れられた世界と恐るべき力への門である。」


ジュンは肩に重圧を感じ、自分の人生がもはや元に戻れないことを理解した。彼は、謎めいた強大な力の守護者となり、それを使いこなして愛する者を守らなければならなかった。


夜が明けると、ジュンは新たな決意で目覚めた。彼は図書館を去る準備をし、冒険を始める決意を固めた。しかし、その前に最後の一つのことを行った。彼は同僚に簡単な手紙を書き残し、重要な使命で不在にすると説明した。


図書館を出る際、ジュンは最後に一度振り返った。彼は待ち受ける長く危険な道を理解しつつも、運命を果たすために全力で立ち向かう覚悟を決めていた。不死者の年代記を手に、ジュンは未知の世界へと一歩を踏み出した。彼の心は、古書に刻まれた言葉のリズムと共に鼓動していた。


朝の静かな街、キリンの通りはまだ人影もなく静寂に包まれていた。ジュンは歩き出し、彼の決意の響きが一歩一歩と共に道に響いていた。この先、彼の旅は簡単ではないが、不死者の年代記の真実を見つけ出し、彼の世界を守るために挑戦に立ち向かうつもりだった。

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