第14話「僕と皆の強化合宿」
僕は久し振りにガイドフォンのステータスを開いてみた。
実は最近、筋トレを始めてみたのだ。
腕立て伏せや腹筋運動、スクワットなど、
詳しいやり方を調べて動画とかも参考にして
行動している。
「えへへ、変わっているといいなぁ」
ぽやぽやしながら汗を拭いつつ、ガイドフォンを起動する。
結果
〖梓川・リ・オブリジア・レイチェルノ〗
身体的能力値=一般女性女児
クラス=エラー
スキル=エラー
ダンジョンに挑むにはSランク及び養成学校の教員の同行が必要となります。
単独でのダンジョンへの立ち入りは禁止令が出されております。
「・・・・・あれ?おかしいなぁ?」
目蓋を擦り、もう一度ガイドフォンを確認する。
結果
〖梓川・リ・オブリジア・レイチェルノ〗
身体的能力値=一般女性女児
クラス=エラー
スキル=エラー
ダンジョンに挑むにはSランク及び養成学校の教員の同行が必要となります。
単独でのダンジョンへの立ち入りは禁止令が出されております。
「・・・・・」
変わっていない、結構頑張ったのに、
身体能力値が一般女性女児から、変わっていない。
「そ、そんなっ」
ガクリと床に両手をついて落ち込む僕、
すると、近くのランニングマシンを使用していたカサンドラさんが機械を止めてこっちへやってきた。
「どうしたのだ、レイ」
「ぐすん、カサンドラさん、これぇ」
ガイドフォンをカサンドラさんに差し出すと
納得したように頷いた。
「前と同じだな、それなりに動けるようになっているはずだが・・・それでも、子供並と判断されているのか」
「ううっせめて一般男性男児にしてほしいです」
項垂れる僕を励ましながらガイドフォンを確認するカサンドラさんは首を傾げながらも
僕の全体を見る。
「ふむ?こうしてレイを改めて見ると・・・」
まじまじと上から下まで見るカサンドラさん
後ろにも回り込み見ているが、どうかしたのだろうか?
「カサンドラさん、僕って変なの?」
「ううん?鑑定を掛けながら確認しているのだがな、レイよ」
「?」
「・・・筋トレが別の意味で効果を示したようでもある」
「どういう意味なの?」
「あー・・・」
とても言いづらそうにしているカサンドラさんに対して僕はハッキリと言って欲しいと伝える。
「今までもなのだがな?レイの容姿はハッキリ言って少女然としている」
「うっ」
「まあ、そこは置いていこう。
今まではランニングくらいしかしてこなかったレイだ。
筋肉はついていないに等しかったのだが、
ガイドフォンを受け取ってから筋トレをやり始めて、まず、ぷにっとしていたお腹がシュッとしてしまっている。」
「?それって、悪いことなの?」
「まあ、最後まで聞いて欲しい。
更になのだが、お尻が引き締まり、張りが増してプリンとしている。」
「えっと?」
「そして、二の腕と太ももが多少筋肉がついたのかやや太くなっているのだが」
おもむろにカサンドラさんが僕の二の腕と太ももを摘まむ。
モチモチ、ぷにぷに、
「・・・カサンドラさん?」
「・・・これはいけない」
「え?」
「前は細くて華奢な感じだったのにっ!
肉付きが良くなったせいでより艶やかくみえてしまうっ!!」
「カサンドラさん?」
「ふう~っ、落ち着け、落ち着くんだ、我が暴走してどうする?そうだ、こういう時はオークを思い浮かべるんだ、そうすれば、萎えてくるはずだ、ヨシッ、良いぞ、この調子──いや待て、何故ここでレイがオークと一緒になって、おのれオークっ!レイに手を出すのは許さんゾッ!!」
「帰ってきてっ!?カサンドラさんっ!?」
何やら想像で怒り出したカサンドラさんを揺らすと、何とか現実に戻ってきたカサンドラさん。
ハッ、と気が付いた様に僕の頭を撫でてくる
「よしよし、レイは癒しだなぁ」
「んぅ?えへへっ」
撫でられるの好き~っ、取り敢えず、ステータスの事は良いや。
「(ううむ、より女性らしさが磨かれてしまっているとは流石にいえないなぁ)」
笑顔で撫でられるのレイを見てこの顔を曇らせたくはないカサンドラであった。
────────────────────
ちなみに、適当なダンジョンに侵入してショゴたんの強さを確認して見たのだが、
ショゴたんの強さは遊戯の神が言っていたが如く、チートと呼ばれるに相応しき能力持っていた。
まず、細くて伸ばした触手により、モンスター達はからめとられて空中に宙吊りになり、
そのまま、締め上げられてお亡くなりになられてしまった。
さらには、蔭から襲いかかろうとするモンスターを足元から影が槍となって貫いたり、
大量のモンスター相手をあの小さな宝箱の中に吸い込んだりと、皆は顔を青くして見ていた。
『えーっ、ショゴスに頼ると経験が積めないのでレイを守るだけにして貰うことにする』
「「「「「賛成」」」」」
《テケリ・リ》
「よろしくねー、ショゴたん」
遊戯の神から連絡があるまで自分達を鍛えないといけないと全員がダンジョンに突入することになったのだが、ダンジョンランクが低いものしか養成学校の近場には無く、かと言って遠出をしても余り時間的なものの都合で長いこと潜れなかった。
『このままではいかんな、何処かで宿泊出来るところがあり、尚且つ、程よい感じのランクのダンジョンがある場所があれば良いのだが』
頭を抱えるカサンドラさんはガイドフォンのダンジョン情報欄を眺めながらここでもない
こちらでもない、と唸っていたところ。
ちーちゃんが思い出したかのように声をあげる。
「ここは、うちの別荘の近場ですわね」
『チヅル、どこなのだ?』
「この、Aランクダンジョンですわ」
チヅルのガイドフォンを覗き見ながら行き先を確認する。
養成学校も連休にはいるため、このうちに、
ダンジョンに入り浸り学生組のレベルアップを図りたいのだ。
そして、今、いる場所がチヅルの家の別荘であり、その別荘の中にあるジム設備である。
「はあっ、はあっ!」
「・・・ちー、獣の目はやめるべき」
「うわぁ、れークン、腰細っ!?
それに比べてあたし達の───」
ナナノが自分達の腰を見比べながら再びレイの腰に目をやる。
「・・・ぐすん」
「・・・なー、言いたいことは分かる、れーは小さいけどスタイルが良いのは今に始まった事じゃない。
でも、おやつは控えるべき」
「ううっ、だよね」
「わ、私、これからの一週間をれークンと一緒に一つ屋根の下で過ごして耐えられるのでしょうか、ジュルリ」
「・・・ちー、もう少し、もう少しだけ女性として節度を保って、うちは性犯罪者の友達になりたくないよ」
「わ、わかっておりますっ!わかっておりますが───」
チラリ、とレイの方へと視線を向けるチヅル
薄着のレイが動く度におへそが見えるチラリズム、玉のような汗が首筋を流れ、胸元に吸い込まれていく。
「・・・ゴクリッ」
「ちー・・・」
こいつはもう駄目かもしれないとシイカは、ゴミを見るような目でチヅルを見ていた。
ナナノもドン引きな目を向けている。
「おおおおおおおっ!!女神よっ!見ていてくださいッ!オレはっ!必ずっ!強くなって守って見せますヨオオォォッ!!」
ガッシャンガッシャンッとベンチプレスの機器を物凄い勢いで上げ下げしながら動かしている、新谷兄弟の兄、タケル。
安定の狂信者ぶりである。
弟のカケルはと言うと、無心にランニングマシンを使用して走っていた。
しかし、チラリとレイの方へと目を向けてしまったときにおへそのチラリズムを目撃してしまい同姓であるのにドキドキしてしまったので罪悪感を覚えつつランニングマシンに向き直り黙々と走ることにしたのだ。
「(すいません、ごめんなさい、申し訳ない)」
心のなかで謝罪を延べながら、走るのであった。
ちなみになのだが、宝箱狂いの駄目兎はお留守番である。
「ぶううっ!!アチシもいきたかったのにぃっ!!!ずるいいぃぃっ!!!!」
過剰戦力だからとの理由で置いていかれたのだった。
────────────────────
『それでは、ダンジョンに入るぞ』
それぞれが装備を整えて準備は万端であるが
その中で一人だけ軽装の者が居る。
レイである。
何時ものようにのほほんとしていてこれから命のやり取りをする場所にいくと言った感じがまるで無い。
カサンドラが守るのはもちろんだが、ショゴたんと言う完全防御の要塞クラスの守護神が居るため怪我などが一切合切心配がなくなったせいでもある。
ある意味でAランク程度のダンジョンでは
ショゴたんの防御網を潜り抜けるモンスターが現れないと言うことなのだが、他のパーティーメンバーにとっては危険であることは変わり無いので空気感がまるで違う。
「お弁当持ってきてるから、お腹減ったらたべようね~」
『・・・・・レイよ、流石にその余裕は無いと思うのだが』
「駄目なの?」
『うっ・・・わ、分かった、セーフルームを探して食べよう、それで良いな?』
「わ~い」
僕がカサンドラさんと話していると、それを見ていた皆が集まって話している。
「何だかんだでカサンドラさんもレイさんに激甘だよな」
「うむ、女神に対してとオレ達とでは扱いがまったく違うな」
「まあ、れークンだから仕方ないよ、スパルタは勘弁だけど、強くなるには近道はないから」
「れーは最近筋トレしてるけど、ステータスが変わらなかったって嘆いてた」
「以前から続けているそうですが、これも一朝一夕でどうにかなるものではありませんもの、ですが───」
お互いを見合い、頷き返す。
「全てはれークンの為に、私達はより強くならなければなりません、皆さん、覚悟はよろしくて?」
「「「「応っ!」」」」
拳を握り締めてぶつけ合い、気合いを入れる
そう、全てはレイの為に。
遊戯の神にレイを遊びに誘う優先権など、
くれてやるわけにはいかないのだ。
かたや、ゆるゆる、かたや、気合い入りまくり、空気の温度差の激しきパーティーであった。
────────────────────
ダンジョン、そこは何時もの場所とは違う
別次元の場所。
広がる古都の町並みを持つ場所にレイ達は足を踏み入れていた。
「ぐおおおっ!!?囲まれてるッ!」
激しい歓迎の挨拶を貰いつつ、剣でさばいていく。
「探索始めてすぐにこれってっ!?」
「シィッ!!」
蛇のような顔をした人形のモンスターが次々と襲いかかってくる。
「流石にAランクダンジョン、最初からこれだなんてやりがいがあるっ」
槍を的確に振り抜き、足を狙い動きを鈍くさせる。
「各自、離れろっ!イグニッションボルトっ」
雷球が飛び交い、周りのモンスターに浴びせられていく。
バチバチと感電させられながら動きを止める蛇人間、次の行動は、
「今だっ!各自殲滅っ!」
こうして、危なげなく、ダンジョンの挨拶を潜り抜けるのだった。
しかし────────
このダンジョンには、別の意思ある存在が、
興味深く彼らを見つめているのだった。
『フム・・・・』
それは獰猛な笑みを浮かべ未熟者達を見つめた後、深紅の騎士を見やる。
『よもや、小娘が此方へと来ていたとは』
その者は、身の丈程もある斧を軽々と担ぎ上げるとダンジョンの奥へと戻っていく。
『クククッ、どれ、鈍っておらぬか』
───修行をつけてやろうか?────
それは、意図せずに彼らを更なるモンスターの猛攻の始まりであった。
全ては、『王の器』の導きによって────
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