第5話「僕の学校」

あれから、カサンドラさんは僕のおうちで一緒に暮らすことになった。

誓約と主従の契りを交わした事により、

余り離れるのはちょっとと言うことで、

初めは真島のおじさまがおうちを僕のおうちの近くに建ててくれると言ったのだが、そこまで世話になるつもりはないときっぱりとお断りしたのだ。


そして、不躾ですがと僕の両親に僕のボディーガードとして一緒にいさせて欲しいと深く一礼してきた。

両親は快く僕の命の恩人ですからと承諾した。


生活費位なら出させてくれと真島のおじさまが黒いカードを一枚カサンドラさんに渡していた。


初めて見た、制限無しのキャッシュカード。

それをポンと渡せる真島のおじさまがとってもカッコいい!


カサンドラさんはそれを聞いてさすがにこれはと渋っていたが、異世界の恩人にこれぐらいさせてくれ、と頭を下げていた。


男前な真島のおじさまにそこまで言うのであれば利用させて貰おうとカサンドラさんも承諾した。


僕はすぐに退院出来て、おうちでも安静にしてくださいって言われた。


あれから、ダンジョンに巻き込まれる事はなく、平穏な日々が過ぎていった。

なっちゃんも、ちーちゃんも、しぃちゃんも

ゲームの様にならなかった、僕は運命を変えられたんだ。



────────────────────


そして、月日は流れて、僕らは15歳になった。

中学を卒業して、いざ!輝かしき高校生活をっ!!

と、思っておりました。


「あれー?」

「あらあら、うふふ」

「ねえ、お母さん、おかしくない?」

「何がおかしいのかしら?れーちゃん?」

「いやあー、だってさぁー、制服がね?」


今更ながら気が付いた。

リボンのついた可愛らしいブラウスと

色味の良いフワリとしたスカート。

そう、セーラー服です。


「あらあ~、やっぱり、探索者養成校の制服は可愛らしいわね~」

「いや、待ってよ!」

「あら?もう、わかっているわよぉ~」


ケラケラ笑いながら頷いて見せるお母さん

僕はほっとしたのもつかの間。


「セーラー服がじゃあなくて、それを着こなしているれーちゃんがもっと可愛らしいわぁ~」

「え?えへへ、ありがとうお母さん、ってぇ

そうじゃないよっ!?」

「あらぁ~?」


首を傾げるお母さん、隣でお父さんがカメラを無言で構えて撮りまくっている。

その隣にカサンドラさんがうんうんと頷いて言う。


「レイ、可愛らしいぞっ!」


親指をグッ!と立ててサムズアップ。

大分この世界に染まってきたなぁと思います。


「もおぉ~っ!だからっどうして、僕が、

セーラー服なのっ!?僕はっ!────」


────《男の子》だよっ!?────


はい、そうです。

僕が荒ぶっている理由はそれです。

いえ、その、セーラー服を着る前に気が付けよと言うお話しなのでしょうが、僕は寝起きが悪くボ~ッとしながら用意されてある服を着ちゃいます。

そこから顔を洗って歯磨きのあと、朝御飯を食べ終わって頭が覚醒します。


「うふふっそうね?《男の娘》よね?」

「そうだよっ!おとこのこって、あれ?

お母さん、何かしら言葉のニュアンスと言うか言い方が違う風に聞こえちゃうのは僕の気のせいかな?」

「大丈夫よぉ~、れーちゃんは何処に出しても立派に通用する《男の娘》だからぁ~」

「ねえ、待って、お母さん、やっぱり何かしら言葉のニュアンスが違わない?!」


朝からそんなやり取りをしていると家のインターホンが鳴り響く。

お母さんが素早くその対応をする。


「はぁい♪」

『『『おはようございます!れークンをお迎えに来ましたっ!』』』


元気のいい声で幼馴染み三人の声がインターホン越しに聞こえてくる。

ちょっと待ってと言おうとした瞬間、お母さんがこちらを見てニチャリを笑い、三人を招き入れたのだった。


「ちょっ!?おかあさぁぁんっ!!??」

「はぁい、朝からご苦労さまぁ、入って入ってぇ~」

「「「おじゃましまっ───」」」

「ひうっ」


僕を視界に入れた瞬間停まる三人、僕はいたたまれなくなり顔が真っ赤にしているのが分かる。

僕は身体を隠そうとしながらも隠しきれないので諦めてスカートの裾を両手でギュッと掴み、恥ずかしがりながら三人に言った。


「み、みないでぇ、こんな、格好、恥ずかしいよぉっ」

「「「ぐはあっ!!?」」」


三人とも胸を締め付けられるかのように押さえながら(チヅルだけ物凄い勢いで鼻血を出しながら)四つん這いになった。


「えっ?ええっ!?だ、大丈夫っ!?特にちーちゃんっ!?」

「(ガクガク)さ、流石はお義母様っわたくし

心構えもせずに、油断して、おりましたわ」


身体を震わせながら止まらない鼻血をハンカチで押さえながらも、

お母さんに向かって尊敬の眼差しを向けている。


「普通ならやろうともしないことを実行して見せる、ソコに憧れますし電気がはしります!」

「それほどでもぉ~」

「はあっ、はあっ、なんて威力、れー、ウチ達を入学初日から再起不能にする気?」

「言いがかりだよっ!?」

「おふっ、あ、足に力がはいんないよぉっ!れークンのばかぁ~っ!」

「何で僕が責められないといけないのっ!?」

「嗚呼、朝からとても満ち足りた心でございます、今日もれークンの尊さに触れられる事が出来て感無量の想い、心なしか頭に霞がかって、ふうっ」

「ちーちゃんっ!?それっ貧血だからっ!?

しっかりしてっちーちゃんっ!?」


────────────────────


お母さんのせいで余計な時間をくってしまったがまだ、聞いていないことがある。


「あのね、お母さん?」

「なぁに?」

「僕は普通の高校を受験してたはずなんだけど?」

「あらあら?どうして?皆と一緒なのが嫌なの?」

「嫌じゃないよ!でも、僕は、身体的能力は

普通だし、実技の授業についていけないよ?」

「うふふ、だってぇ、カーラちゃん」

「カサンドラさん?」


話をカサンドラさんに振るお母さん、カサンドラは頷くと鎧を装着しだした。


「レイが出来ないことは我がやるのだよ。

それで、解決だろう?」

「え?」

「それにだ、もう来るぞ」


そう言うと家のインターホンが鳴り響きお母さんが対応しある人物が家に招かれた。


「おはよう、レイちゃん」


そこには僕の憧れで大好きな激渋なおじさま


「真島のおじさまっ!」

「我が養成学校へ特別枠でご招待だ。

おじさんからの入学サプライズだよ」

「で、でも、僕は、そう言うのは、ずるいと思うんです」

「レイちゃん、君の力は特別なんだ、もし、

ダンジョンの意思が、また、君を狙わないとも言い切れない。

そんな中で君は一人で周りを巻き込みたいのかい?」

「っ!!」


そうだ、そうだよ、今の今まで、平穏だった

だけど、本編が始まる、今、この時にあの

ダンジョンの意思が僕を放っておくはずがない。


なんて浅はかだったんだ、僕は。

自分のせいで何の関わりの無い普通の人達が巻き込まれるなんてっ────


スゥッとレイの雰囲気が切り替わる。

そう、これだ、と、カサンドラは思った。

自らを危険を顧みず、己も力無き者であるにも係わらず、他の弱き者の為に危険へと歩んでいく。

正しく、我が王だ、真なる『王の器』だ。


「さあ、我が王よ、あなたの覇道の一歩を、そこ養成学校に刻み付けてご覧にいれましょうぞ。

全ては、力無き者の為にあなたの臨むまま

我が剣となり盾となって害悪を除きましょう」

「カサンドラさん、迷惑を掛けると思うけどよろしくね?」

「イエス、マイロード。」


臣下の礼を持ってレイに返す。

ダンジョンよ、覚悟せよ。

お前の核を我が剣にて打ち砕いてくれるわ!


僕は覚悟を決めて探索者養成学校に通うことになったのですが、どうやら始めから僕はこの探索者養成学校に通うことが決められていたそうです。


両親はもちろん、幼馴染み三人とカサンドラさんまでも分かっていて黙っていたそうです

それを、真島のおじさまから高そうな車の中で聞きました。


僕はほっぺを膨らませつつ皆から顔を背けて怒ってますポーズをしています。

皆それぞれ、内緒にしていてごめんねとか

驚かせたかったからとかいっていたけど、

僕が怒っているのはそこではありません。


何で怒っているのか、真島のおじさまから

問われてぼくは皆に心の内を明かします。


「だって、僕だけ違う学校だと思ってたからずっと、寂しいなって思っていたのに、

隠していたなんてひどいよ」


思わず僕は涙目になったのは悪くないと思います。

それを見た、皆は胸を押さえ苦しそうにして

罪悪感が凄いと反省していてくれました。


「はあっはあっ今日のれークンの尊さが天を穿っておりますわっ。わたくし、身が持ちますでしょうか?」


ちーちゃんが荒ぶっているのだが、いつもの事なので皆はスルーしている。

車だとすぐに探索者養成学校に到着した。

真島のおじさまにお礼を言い、皆で車をおりようとしていたその時、真島のおじさまに

呼び止められる。


「そのー、良かったのかい?」

「?何がですか?真島のおじさま?」

「あー、いや───」

「れークン、入学式に遅刻をしてしまいますわ、真島さんの計らいでわたくし達は同じクラスですのでいそぎますわよっ」

「あ、うん、真島のおじさま、送って下さりありがとうございました。

いってきますっ!」

「あ、ちょっ───」


僕達が車から出ると周りの視線が突き刺さった。

時間はもう少し余裕があるから、新入生達はゆっくりと登校しているのだが、先程まで前を向いていた人達がわざわざ振り返ってこっちを見てくる。


「?・・・皆、どうしたんだろう?」


僕は不思議そうに周りを見回しつつもあることに気が付いた。

今、僕の周りにはヒロインである幼馴染みの三人娘が居る。

つまり、そう言う事だね!

見目が整っている三人娘が注目の的になっているんだ!

元プレイヤーであり、三人の幼馴染みである僕は鼻が高いよ!

よし、では、ここで皆の容姿について話しておくとしようかな?


まずは、なっちゃん!

髪型はショートカットで左右で後ろ髪の長さが違う、そこにこだわりがあるらしい、

お目目はパッチリ二重でお鼻は筋が綺麗で通ってる。

唇はリップをつけているが無色透明の物なので桃色の健康そうなプリンとした感じだ。


次は、ちーちゃん。

THE、お嬢様な見た目、黒髪で綺麗なストレートな髪質、腰の方まで伸ばしててさらさらだ。

お目目はタレ目、優しそうな瞳をしてる。

お鼻は高めで日本人よりと言うよりはお母さんが外国の人だからそっちよりででも綺麗な形をしてます。

唇は色素が薄いから淡いピンク色のリップを使用している。


最後はしぃちゃん。

髪型はポニーテールにしているんだけど、

緩く波打っている髪質なので纏めた所でふんわり広がっている。

お目目は、半目、眠たそうって言えば良いのかな?驚いた時はパッチリ開くのでレアなんだけど穏やかな感じがするかな。

お鼻は小さめだけど形がいいから可愛く見える、唇は何も塗っていない、素でピンク色でそのー、肉厚的?と言えば良いのかな?


まあ、こんな感じですので、それはそれは、人の目を引いてしまうでしょう!

カサンドラさんはフル装備だからもしかしたらそっちに視線を向けているのかな?


・・・え?僕?いやあー、僕はそのー、普通のおとこのこですよ。

はい、ただ、普通にしていても小学校や中学校で同性から、そのー、告白を多くされていましたけど、断じて普通だと思います。

え?あっ!?カサンドラさん?!


、はいっ、これより、我が主、レイの容姿について語らせていただこうか。

まずは髪型、お母君譲りの『白銀』の髪を肩よりも下の方まで伸ばし(お母君がそれ以上はカットさせてくれない)先を纏めてゴム紐で結んでいて、前髪は眉の所に掛かるくらいでさっと流し、サイドは耳の後ろにかけてゴム紐の所で一緒に結んでいる。そして、可愛い。

目は丸っ濃くてまるで小動物の様に愛らしく

その瞳の色はお母君譲りのエメラルドグリーン、目鼻立ちはバランス良く、ちょこんとしたお鼻は思わずツンツンしてあげたくなる。

やはり、可愛い。

唇はまるで同じ女(おとこのこです)でも吸い込まれるように目を引き寄せられるほどの

妖艶さを醸し出し、瑞々しき果実のごとき艶を出している。やっぱり、可愛い。

身体は小柄で幼馴染みの三人と並んでも頭一つ分は小さい、間違いないなく、可愛い。

すううぅっ───


『我が主がかわいすぎるけんについてええぇぇぇっ!!!』

「ちょっ!?やめてええぇぇぇっ!!?」


────────────────────


『はあっ、はあっ、すまない、レイを語っていると、つい、テンションがハイになってしまった』

「もうっ!もうっ!!はずかしいよっ!!」


僕は顔を真っ赤にさせてペチペチとカサンドラさんの鎧を叩く、あと、三人共?何で確かにって頷いてるのっ!?


「もうっ!皆して僕をからかって!僕なんかが可愛いなんてそんなことがあるわけないでしょっ!!」


ぶんぶんと手を上下に振り、自分がどれだけ荒ぶっているかを体現するが微笑ましいものを見るような目で見られた。

それから周りでも───


「可愛い」 「可愛い」 「可愛い」 「可愛い」

「可愛い」 「可愛い」 「可愛い」 「可愛い」


「うううーっ」

「あら?そう言えばれークン」

「う?」

「制服、着替えなかったのですね?」

「あー、本当だ、あまりにも自然な感じだったから気づかなかったよー」

「本当ね、れー、似合ってる」


・・・え?─────

サアアーーッと血の気が引いていくのが分かった。

僕は改めて自分が着ている制服を確認した。

そこには、リボンがついた可愛いブラウスにふんわりとした色味の良いスカート、

さらには、そこに足にはニーハイソックスにローファーまでも装着していたのだ。


「あ、あ、ああっ」

「ああー、れーちゃん、やっぱり気が付いていなかったか」

「ま、真島の、おじさま?」


車を駐車場に停めてから態々こちらへと来てくれたのだろう。

申し訳なさそうに頭を掻いているおじさまが立っていた。


「まあ、もう時間は残ってないからそのまま

入学式を受けてくれ、あと、似合っているぜ?」

「いっ─────」


──いやあぁぁぁぁっーーーーっ!!?──


探索者養成学校の校舎入り口前で、僕の悲痛な叫び声が響き渡ったのだった。










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