はまっていたダンジョンゲームの世界で本編に登場しないヒロイン達の死んでしまう幼馴染みになってしまったようです。
想人
第1話「僕は誰?」
ある日、寝て、起きたら違う人になっていた
皆さんはそんな風に感じることは無いだろうか?
見慣れない部屋、知らない家族、そして、
知らない自分の姿。
「・・・・誰?この子供?」
気弱そうな感じのパッと見は女の子の様な
風貌の子供が鏡に写り込んでいる。
「・・・・え?もしかして、僕?」
はい、よく分からない内に僕は知らない子供になっていました。
いや、正確には思い出した?
今の僕にはいままでの僕自身の記憶と一緒に
前の僕の記憶が読み込みされたかのような状態である。
混乱しているが、思い出した時に知らない部屋や家族に違和感を感じたが、記憶が混ざっていく感じがして上手いこと落ち着いてきたみたいだ。
しかし、自分の前の記憶が確かならこの世界はゲームが元になっている世界であろうことが解った。
何故、その様なことが解ったのか?
僕の幼馴染み達の記憶がそうだと理解させられたのだ。
「ちーちゃん、しぃちゃん、なっちゃんの三人幼馴染みの女の子達」
ちーちゃんがチヅル、しぃちゃんがシイカ、
なっちゃんがナナノ、それぞれ僕がはまっていたダンジョン探索ゲームのヒロイン達の名前なのだ。
偶然かと思い今のお母さんのスマホでダンジョンについて検索すると出るわ出るわ、
ダンジョンの情報から探索者と呼ばれる職業まで色々とね?
うん、この世界は前の僕の世界とは根本的に違いますわ。
嘘やん、誰か違うって言って!?
死んだような目をしつつもお母さんのスマホを返した僕はそのまま倒れた。
急に倒れたからお母さんに心配と驚かせてしまったが、僕もいっぱいいっぱいなんです。
僕、これから死んでしまうことが確定してしまいましたよ!?
ちなみに、幼馴染み三人と遊んでいてなっちゃんの放ったゴムボールが頭に当たって
脳震盪を起こして僕は気を失っていたそうだ。
それで、再び倒れたのでさらに心配をさせてしまったらしい。
僕は探索者になる才能が無いらしく幼馴染み三人は才能があるとか?
もうね、同じ年なのにフィジカルが違うのよ
これが、モブとヒロインの差かあ。
そんな感じでぼーっとしていると、お家のチャイムが鳴り響き、玄関の方から騒がしげにしながら僕の部屋まで三人が雪崩れ込んでくる。
そう、ヒロイン達である。
「ごめんねぇ!ごめんねえっ!!あたしが強く投げすぎちゃったせいでえっ!!!」
顔をぐちゃぐちゃに涙まみれ鼻水まみれで
泣きついてくるなっちゃん。
ちょっ!?汚ない!!ぐわあぁぁ!?
鼻水が僕の服にぃっ!!
「なっちゃん、僕は気にしてない!気にしてないからあぁっ!?うわあぁぁっなっちゃんの鼻水があっ!!」
「うわああぁんっ!!ごめんねえっ!!」
カオスである。
他の二人も泣いているがなっちゃん程では無い。
取りあえず、落ち着いて貰って僕は特に怪我はなくて軽い脳震盪を起こしてしまっただけで大丈夫だと伝えると三人共ほっとした表情を見せてくれた。
「よかったよおっれークンが死んじゃったかと思ったぁっ!」
「れーが動かなくなったから心配した」
「本当に良かったです、れークンが目を覚まさなかったらなっちゃんを殺してわたくしも死のうと思っておりました」
「「「・・・」」」
それぞれ、なっちゃん、しぃちゃんに続いて最後にちーちゃんがとても重い発言をしてきた。
シーンとする僕達と暗い目でなっちゃんを見つめているちーちゃん、若干震えながらなっちゃんは目をそらしている。
何だろう?ちーちゃんってこんな感じだったっけ?病んでない?
この病み具合で十歳とか嘘だよね?
「ち、ちーちゃん?僕は大丈夫だからなっちゃんを許してあげて?ね?僕のせいで二人の仲が悪くなるの、僕、嫌だなあ?」
「許して差し上げます、なっちゃん?」
「はひっ!」
「れークンを崇め奉り感謝をしてくださいね?」
「れークン!ありがとうございますっ!」
「普通にしてよっ!?」
ワチャワチャしながらお開きになったが
僕はどのタイミングで死んでしまうのか?
ゲームでは多くを語られなかったヒロイン達の幼馴染みの死、何年前って本編で言っていたっけ?
ええっと?思い出せ、僕ぅ!
・・・・・えーと、本編ではヒロイン達は
確か、16歳?探索者養成学校高等部に
入ったばかりだったっけ?
そんで主人公が余所の県から引っ越ししてくる。
主人公のあまりのダンジョン内での無鉄砲ぶりからヒロイン達がストッパーになってパーティーを組むのがはじまりだったかな?
えーとえーと、それでダンジョンの中でふと思い出したかのようになっちゃんが呟くんだ
あれからもう、『5年かぁ』と・・・
うん?ちょっと待とうか?
今、僕の年齢は?10歳だろう?
本編でのヒロイン達の年齢は16歳だから?
そこから5を引きまして、と?
あははっ僕の残りの寿命が一年しかないじゃないですかー、やだー。
・・・・・嘘でしょっ!?
え?僕、前世思い出して一年で死亡フラグが来ちゃうの?
いやあああぁぁぁぁぁっ!!!!!
そんな馬鹿な話ってあるのっ!?
どうやって死んじゃうかも語られていないのにどうしろっていうのさあぁっ!?
こんな子供に死亡フラグを覆せる訳がないじゃないかあぁっ!?
それにっ前世の僕って死んでない気がするんだけど!?
普通にゲームして、明日もやり込みしよっと思ってベッドに入って眠っただけのはずだし
色々とおかしくない?
「そういえば」
ステータスはどうなっているのだろうか?
前世を思い出した特典とかは無いのかな?
ゲームではオプション開いてメニューを選んでガイドフォンを使用すればって、ガイドフォンを貰えるのは探索者養成学校高等部に入学してからじゃないですかー。
ステータスすら確認が出来ないのか!!
僕ぅ!!
前途多難な僕の人生が残り一年とわかってしまったのだった。
────────────────────
前世を思い出してから一週間、小学校へ通ったり、帰りに幼馴染みの三人と遊んだり、
前世では大学生だった僕にとってはなかなかに苦痛に感じるかと思いきや、結構楽しいです。
童心に帰り思いっきり遊ぶの、本当に楽しい。
身体を動かしてボール遊びとか、子供の時以来かな?
そんなことを考えていると、ゴウッ、と
ゴムボールが僕の頭の横を通り抜けていった。
「・・・なっちゃんっ?!」
「あわわっ!?ごめーんっ!!また、力加減がっ本当にごめんねっ!!」
とても焦っているなっちゃんが駆け寄って来て謝ってくるけど、隣に居るちーちゃんが
とても怖いです。
「・・・なっちゃん?わたくし、キレてしまいそうです」
「ヒイッ!!?」
「お、落ち着く、ちー、ナーはわざとじゃない」
「いいえ、言わなくてはなりませんわ
なっちゃん?このボール遊びは普段、わたくし達が周りに危害を与えないようにするための訓練でもあるのです。
加減がある程度出来なければわたくし達の未来は探索者ではなく隔離施設になりましてよ?」
そうである、僕を交えてのこのボール遊びは
探索者としての才能のない僕を相手に傷付けずに遊ぶことを課せられた訓練でもあるのだ
この加減が出来なければ、監獄の様な隔離施設で一生を送ることを余儀なくされる。
探索者の才能の持つ者が何の苦労も無いと言う事はないのだ。
そして、子供の頃からこうして加減を覚えていき探索者養成学校に向けて歩んでいく。
ゲームの裏側の努力を知れてプレイヤーとしては嬉しい限りだ。
「僕は大丈夫だから、続きをしよ?
なっちゃんもちーちゃんもしぃちゃんも安心して三人共探索者養成学校に入れるよ!
僕が保証してあげる!」
僕が笑顔で三人に向けてそう言うと、照れた様子でもじもじしだした。
「えへへ、れークンにそう言われるともっと頑張れる」
「はあはあ、流石はれークン、尊いですわ。
わたくし達の不甲斐なさを全て肯定して下さいますだなんてっ」
「れーに保証して貰えると自信つく、ありがと、れー」
それを聞いて僕はニコニコして微笑ましくおもう。
(一部狂信的な事を呟いている人がいるが)
幼馴染みの三人は確かに探索者としての才能があるのだろう。
他の才能の持ち主と比べてみても頭二つ以上飛び抜けている。
比べて僕は、一般人だ。
嫉妬すら抱けぬほどに普通の子供だった。
羨ましいとはおもうけど、無理にそれ以上踏み込んで行ってはいけない。
線引きをしなければ、僕は、彼女達の物語に添えられただけの飾りなのだから。
(死にたくはない、けど、こんな普通の子供に死の運命を覆せる力なんて無い)
ぷにっとした手の平を見ながら僕は一年後の自分を考える。
僕はどうやって死ぬのか、それすらゲームでは語られなかった。
ヒロインを攻略して仲良くなってもアンタッチャブルな話題であり、絶対に踏み込ませない禁句だったのだ。
一言あるのなら、『わたくし達を逃がすために』と言う言葉をちーちゃんが呟いたのが最後だった。
それ以降は三人とも話すつもりはなかった。
ピースはある、ダンジョンに入ってからなっちゃんが思い出したように呟き、ちーちゃんが他の人が庇われているのを見て呟いた。
ダンジョンに入れない年齢の僕達でダンジョン関係の死因、つまり、僕は────
ダンジョン発生時に巻き込まれると言うことだろう。
僕は体力をつけようと走り込みをはじめてみた。
逃げるにしても足が遅かったら三人の足を引っ張ってしまうから。
一年しかないから、無駄になるかも知れないけれど、何もしないより断然良いでしょ!
────グルルっ────
それは、暗い洞窟の中で赤い瞳を輝かせて
待っていた────
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