第3話 私は空気清浄機

この世界の人は生まれながらにして魔力を持っている


魔力は負の力に弱い

負の感情。それが魔力を穢す

穢れた魔力は負の心を産む

穢れた魔力は心を穢す

負の悪循環の出来上がり


そんなことにならないように、人々は浄化によって、魔力を、心を清める


そうすると、健康に過ごせる!

みたいな感じらしい


今日も教会には浄化を求めて人々がゾロゾロ列を成していた


「マリア様、マリア様…どうかこの邪な心をお清め下さい」

「あぁ…お願いです。わたくしをお救い下さい…」

「お願いします……浄化を…」


教会の天井のガラスからは陽光が差し込み、飾られた大きなクリスタルが光を反射して神秘的な輝きを放つ


皆、クリスタルの前で浄化を求め、祈り、クリスタルによって魔力を浄化される


私はベールを被り、礼拝堂の2階のバルコニーみたいなところに出ると、辺りを見渡し両手を広げて美しく一礼。


これが私の日課だった


正直、なんの効果があるのか分からないけど、これが仕事だと言われたらやるしかない


というか、私、なんでこんな仕事してんの?

という疑問も、「マリアだからです」という一言で片付けられてしまった…


先代の「マリア」はすごい力の持ち主で、自分の魔力を色んなことに使えたんだとか


それに比べて、私は、自分の魔力?を全く使える訳もなく……。


(いきなり今日から魔力あります!なんて言われても使えないし…お姉様も全く教えてくれなかったな…)


んでも、どうやら私は存在するだけで、なんか浄化機能が働いていて、この国の魔力を浄化しまくっているから、自分の意思で何かしなくても、オールオッケー!ということになっている

(空気清浄機ってことかな?!)


空気清浄機もメンテナンスは必要。フィルターのお掃除だ

そう。私にはフィルターのお掃除をして汚れを取り除く作業が必要となる



今日は満月の夜

私は部屋の窓から、よく晴れた青空を眺めながら日が暮れるのを待った



「えりちゃーん」

えりちゃんは私のお世話をしてくれてる女の子で、私と背格好が良く似ている


「そろそろ月が出てきたから行ってくるね~」

えりちゃんを部屋に呼んで声をかけると


えりちゃんは

「行ってらっしゃいませ。お気をつけて…」

と、お見送りの姿勢を見せ、部屋から出てガチャリっとしっかりドアを閉めた


私は部屋の卓上の鏡を手に持ち、月明かりが反射する位置に置いた


(この辺かな…)


角度を調整して、月の光が反射した鏡をしばらく見つめ、目を閉じた

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