第35話 自分を守る境界線

人との関わりの中で、自分を守るための「境界線」を引くことの大切さを、最近よく感じるようになった。誰かの期待に応えようと無理をしたり、相手の感情に過剰に反応して疲れ切ってしまったり。そんな経験を重ねる中で、自分を守るためには、どこかで境界線を引くことが必要だと気づいた。


境界線を引くことは、決して他人を拒絶するわけではない。それはむしろ、自分を大切にしながら、相手とも健全な関係を築くための方法だと思う。相手の要求に全て応えようとするのではなく、自分が無理をしない範囲で関わる。そうすることで、心のバランスを保ちながら、関係を続けていくことができる。


最初は、境界線を引くことに罪悪感を覚えることもあった。「相手をがっかりさせてしまうのではないか」「嫌われてしまうかもしれない」という不安が頭をよぎる。でも、無理をして相手に合わせることが、かえって自分を苦しめ、結果的に関係がうまくいかなくなる原因になることもある。それに気づいてからは、少しずつ自分の限界を素直に伝えるようにしている。


境界線を引くことは、自分の時間やエネルギーを守るための行為でもある。例えば、疲れている時に「今日は休みたい」と伝えることや、自分ができないことに対して「それは難しい」と断る勇気を持つこと。それは、相手に対する誠実さでもあり、自分自身を大切にする行為でもある。


境界線を引くことで得られるのは、心の安定感だ。相手に過剰に期待されるプレッシャーから解放され、自分のペースで生きることができるようになる。そして、不思議なことに、自分を守るために境界線を引くことで、相手との関係もより素直で安心感のあるものに変わっていくことが多い。


今日も、自分を守るための境界線を意識して過ごしていこうと思う。それが難しい日もあるけれど、少しずつ自分の心を大切にしながら、他人とも健全な関わりを築いていけるように。その境界線が、自分らしく生きるための道しるべになると信じている。

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