第7話

「私とクタローって保育園、小学校と一緒だったからね。保育園の頃はクタローが結婚するって言ってくれて、私もクタローと結婚するんだと思ってた」

「あるあるですね。私にはそういう幼馴染とかいなかったんで羨ましいです」

「でも本当にクタローを意識したのは中学で離れてからかな。それまで一緒にいるのが当たり前だったから、急に離れ離れになって、それで意識した感じ」


 私はクタローといるのを当たり前だと思っていた。そしていざクタローがいない生活が始まった時、私ってクタローが好きだったんだと自覚した。中学の間は全く会わなかったから想いを告げることもできず、クタローへの想いだけが募っていった。


「素敵です。ずっと想い続けた恋が成就するのって憧れあります」

「そう? 陽菜ちゃんも自分が好きって思った気持ちをすぐに伝える勇気が凄いと思うわ」

「私は我慢できないだけなんです。好きだって思ったらすぐに想いを伝えないと自分がおかしくなるといいますか」

 

 陽菜ちゃんの行動力は本当に凄いと思う。この子が告白しなかったら私はいまだに想いを燻ったまま、クタローに伝えることができていなかっただろう。

 そういった意味では陽菜ちゃんには感謝している。


「でも、法律が変わっていなかったら、私たちのどっちかは泣いていたんですよね」

「そうね。クタローじゃないけど、どっちかは負けヒロインになっていたのね」

「法律が変わって良かったです。私、クタローくんだけじゃなく牧穂さんとも仲良くなりたいですし」

「嬉しいわ。私もよ」


 彼女同士の対話は凄く楽しいものだ。お風呂でこうして二人で話をするのもいいかもしれない。


「これから新しくクタローくんの彼女になる子たちとも仲良くなりたいですね」

「そうね。私たち彼女全員でクタローを支えましょう」


 お風呂での女子トークは、私たち二人の仲を深めた。



 ※※※


 牧穂と陽菜がお風呂から出てきた後、僕もお風呂をいただく。心なしか二人の入ったお湯からいい匂いがした気がした。うん、きっと気のせいだろう。

 お風呂から出てきた二人はとても距離感が近くなっていたように感じた。どうやら仲良くやってくれそうだ。彼氏として、彼女同士が仲良くできるかどうかを心配していた僕はとりあえず一安心する。

 お風呂から出た僕は寝室に向かう。寝室には既に牧穂と陽菜がそれぞれベッドに座って僕を待っていた。


「このベッド三人ぐらいだったら一緒に寝れるから一緒に寝ようと思って」

「はい。私もクタローくんと寝たいです」

「そうだね。一緒に寝よう」


 僕が真ん中で横になり、両隣を牧穂と陽菜が固める。まさしく両手に花だ。お風呂上がりの二人はそれぞれ可愛らしいパジャマに身を包み、僕を出迎えた。

 牧穂は紫色のネグリジェ姿で、陽菜はピンク色のパジャマだ。

 お風呂上がりの二人はそれぞれ違う匂いを漂わせながら、僕を誘惑する。いや、二人は誘惑している自覚はないだろうけど、僕からすればそれは誘惑だった。

 僕の腕に抱きついてきた陽菜はつつましやかな胸に僕の腕を抱き、くっついてくる。牧穂は僕と手を繋ぎ、恋人繋ぎで指を絡めてくる。それぞれの女の子を隣にはべらせながら、僕はおやすみのキスをする。


「大好きよ、クタロー」

「大好きです、クタローくん」


 二人から愛の囁きを耳に流し込まれ、脳が蕩ける。僕はどきどきする胸の高鳴りを抑えながら眠りについた。


 翌日。僕が目を覚ますと、既に牧穂の姿は無く、隣で陽菜が眠っていた。僕はそっとベッドを抜け出すと一階に下りる。牧穂は既に制服に着替え、朝食の用意をしていた。本当に牧穂には頭が上がらない。三人分の朝食となると結構大変だろうに、牧穂は自主的にそれをやってくれているのだ。

 僕は牧穂の後ろからそっとはぐをすると「ありがとう」と囁いた。

 牧穂は頬を染めながら頷くと、僕の頬にそっとキスをしてくる。可愛い。

 僕が食器を並べ終えると、牧穂が陽菜を起こしてくるように言う。僕は寝室に戻りぐっすり眠る陽菜の体を揺する。


「むにゃむにゃ、クタローくん大好き」


 うん。僕も大好き。寝言でも告白してくれるなんて、なんて可愛い子なんだ。僕は心が満たされるのを感じながら、陽菜を起こす。


「んー、後五分だけぇ」

「ダメだよ。遅刻しちゃうよ」


 どうやら陽菜は朝が弱いらしい。ゆっくりと体を起こすと瞼を擦りながら僕を見る。よく見ると、陽菜のパジャマがはだけ、白い肌が見えていた。


「えっと、ごめん。陽菜、体を隠したほうが」

「へぇ……きゃっ……!」


 慌てて陽菜が身体を隠す。完全に目が覚めたのか、顔を真っ赤にしながら僕を見る。


「見ましたか?」

「うん、ごめん。綺麗な肌だった」

「恥ずかしいです……」


 顔を手で覆った陽菜は恥ずかしそうに顔を伏せる。可愛い。


「もうご飯ができるから起きてきて」

「はい、すみません」


 陽菜が着替えるので僕は部屋を出ると、一階に下りる。

 ちょうど牧穂が朝食をテーブルに並べているところだった。

 ごはんにお味噌汁。それから目玉焼き。しかも半熟! 美味しそうだ。

 しばらくすると陽菜が起きてくる。陽菜はまだ寝ぐせがついていた。可愛い。

 全員揃ったところで手を合わせる。

 

「「いただきます」」


 食事を始める。陽菜はまだ眠そうだ。牧穂は綺麗な姿勢でぱくぱくとご飯を食べている。

 こんな幸せな朝食を迎えることができるなんて。僕は幸せを噛みしめながら目玉焼きを突いた。


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別作「セフレが義妹になった話」もよろしくお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/16818093083784904503

おもしろい作品を書くので、作者フォローもよろしくお願いします。


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