第36話

確かな既成事実でもない限り、貴族同士の暗闘などを公(おおや)けにできるわけもない。それが政治というものだ。

「少し、寝る。着いたら起こせ」

俺が馬を操る御者台の後ろ、馬車の中から聞こえてきた主の声は、ようやく気の進まぬ宮廷から解放された年相応、十九の青年のもので。

「かしこまりました」

答えながら。俺も今日1日が終わったことをようやく実感する。

軽い疲労感。しかしそれは不快なものではけしてない。明日に何があるにしろ、今日は1日の最後で主を護りきれたという安心感で眠れるだろう。

館まではまだ少し距離があるが、この後に現れ出る事になる『事実』を未だ知らぬ俺の心は穏やかだった。

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