4.~宴にて~

第23話

「それではまたお兄様がご迷惑をお掛けしたのね、ルシアス?」

宴が始まってまもなく。

俺の名を呼んだのは少し高めの、甘く柔らかい声だった。

「迷惑とは申せませんが…」

「全くお兄様ったら。それでなくともふらふらと腰が定まらないとお父様がお嘆きなのに、これで何回めかしら」

そう言って。軽くレナード親王をにらむのは、金色の髪を小さな花のレースを縫い付けたリボンで飾り、若草色のドレスに身を包んだ少女。男ばかりの宴席には少々場違いだが、身につけているもの、溢れでる気品から低い身分の者ではないことが知れる。

「アルフォンソや侍女とあちこちと探したけれど。うまく逃げられてしまったと侍女が半泣きだったわ。ねぇアルフォンソ?」

「はい」

そう答えるアルフォンソ殿の声は今日も変わらず穏やかだ。

「お兄様、いい加減にしないとアルフォンソとルシアスの髪に白髪が生えてしまってよ」

周りが吹き出し、ふと、レナード様をみれば。盃(さかずき)を傾けながらなんともいえない苦笑いを浮かべている。

「もうやめておくれ、アンジェリーナ」

「…内親王殿下、もうこのくらいで」

そう。

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