1章 傲慢

夢転生

何度も何度も夢に見た迷宮の世界。

魔物と戦うファンタジーのような夢。


サンサンと太陽が街を照らす。

僕はその夢の中に居た。

最初の町リスポスンに…この町に居るのはおかしい・

毎夜毎夜繰り返し進めていた夢の中の物語。

それがまるでリセットされたかのようだ。

 仲間たちと過ごした記録が破損した世界?目まぐるしく移り変わる迷宮と仲間と共に凶悪な魔物に立ち向かうあの夢は僕の楽しみだった。それを奪うとは悪魔か何かが僕に趣味の悪い悪夢でも見せているのか?

 自分の頬をつねる。ジンジンとした痛みが顔に広がっていく

うん、痛い。となるとここは夢の世界?

 

僕は夢の世界に転生したのか?

「スキルってどう見るんだっけ?」

試行錯誤するも思い出せない…

ふと視界に冒険者ギルドがよぎった。

「とりあえずギルドに行くか。」

ギルドに行き冒険者カードを発行する。

お金は持っていた巾着に10000ルドほど入っていたのでそれを使った。

「職業はまだありませんね。他の方から職業を…」

ギルドの職員が淡々と丁寧に説明してくれる

「兄から一通り教わってるので大丈夫です」

長くなりそうだったのでとっさに嘘を吐き…

冒険者カードを確認する。


鈴木 正成 RANK;F

スキル【代償の加護】

所持職業無し


【代償の加護】は魔法【代償】で受けるデメリットを無効化するものででかなり強いスキルだ。それはさておきこれまでの経験値が失われていて転生したとなるとかなりの痛手だ。夢の世界に転生したのなら夢の中での仲間たちもいるのではないか?


改めてギルドを見渡しても殆どは知らないやつらだった。この時間なら迷宮に出かけているのかもしれない。諦めかけ店内を見まわすのも2週目になるころ夢での仲間の一人を見つけた。


***

一匹狼の人狼 ウィル・セレネ

彼の職業は暗殺者

ナイフと魔法に補助が頼もしい仲間で

筋肉質な体と傷が祟り避けられがちだが

根はとてもいい奴だ。


その姿を見て僕は一人ではないのだと安堵する。


「ウィル。」

僕は肩をたたきながら言った

「何だいきなり呼び捨てか?兄ちゃん、でなんか用か?」


目をパチパチさせながらも

見ず知らずの話を聞いてくれる。優しい。


「僕は夢野さっき冒険者登録を済ませたばかりで

まだ職業が無くて…君の職業を習わせてほしいんだ。」

縋るように言った。

「と言う事は出世払いになるなあ。良いぜ兄ちゃん

行こうぜ迷宮!装備は貸してやるからよお。」

笑いながら

「ありがとうウィル」

「いいってことよ」

と言う事で

小迷宮の1層に向かい

魔物を倒しに行くはずが…

僕はギルド内でナイフの扱いを学んでいた。それも3時間も!!!

「ねえウィル~そろそろ実践してもいいんじゃない?

飽きちゃったよー初級迷宮なら足手まとい居ても大丈夫でしょ?」

今は1時ごろだろうか。

そろそろ迷宮に行かないと何もしないまま1日が終わってしまう。

「え?あぁ確かに退屈だよなじゃあ実践に行くか兄ちゃん」


そうして小迷宮の1層にやってきた。

土のような岩のような謎レンガにコケやツタが生えている。あぁ懐かしいここを攻略したのはだいぶ前だったからなぁ。


「ほら兄ちゃん見とくから好きにしな。」

そう言ってウィルは少し離れた所から僕を見守っている。

「はい!」

しばらく歩いているとこの世界独特の雑魚魔物。

もちうさぎを見つけた。もちうさぎは鏡餅と雪うさぎの中間のような見た目で地面を這って移動する意外にも口が体の3分の1でかい魔物だ。。

「もちうさぎなら倒せそうだな。」

代償を使うのは後だまずは

ナイフを身に着けて職業暗殺者を…

「えいっ!」

もちうさぎの体にナイフを突き立てる。

が、止まった。粘り気があってなかなか切れない

まるで餅を切ってるみたいだ…

切るのに苦戦しているともちうさぎが大きな口を徐々に開けながらこちらに笑顔で迫ってくる

久しぶりの獲物だと言いたげに。

「ひぃ…」

恐ろしくなり出し惜しみしていた【代償】を使うことを決意した。

一旦をナイフを抜くことが出来たが粘り気のせいでよろける。

手に魔力を込める。

「キぃ!」

助走をつけもちうさぎが飛び掛かってくる。

奴に【代償】を付与したナイフを突きつけた。

餅を切る感触がして温かい何か,赤い何かがもちうさぎからこぼれ出る。

「きぃいい!!!!」

そう叫んでもちうさぎは死んだ。

やった。魔物を殺せた。

「やった!ウィル,もちうさぎを倒し…かッあっE?」

「へぇ兄ちゃん【代償】使えるんだ。」

振り向いてウィルを見た。

視界が落下していく下へ下へ。

やがて衝撃と痛み共に視界の落下は止まった。

首が熱いそして何かが抜けていっているような気がした。

【代償】が使えない。

死ぬ…何故?ウィルが守ってくれるはずじゃ…。何が起こったのか分からなくて上を見上げる。”そこには血の付いたナイフを持った獣人と人の体が横たわっていた”。

状況から察するにウィルに首を切られたのだろう。

「ウぃルぅ…?誰?ウィルじゃ無っあ”…」

「まだ生きてたのか?止めを刺さなくては。」

その言葉を境に僕の意識は帰らぬものとなった。

「僕?迷宮が大好きな最弱の魔人,それだけ」

獣人はどこからか花を取り出し彼を飾るのだった。




転生者,能力との割には案外楽に倒せたな。

魔人は振り返る。

迷宮での失踪事件など腐るほどある。

今回の件もその一つとして処理されるだろう。

「あぁ姿を変えないと」

人狼の脱皮するように剥がれ真の姿が現れる。


迷宮は僕を救ってくれた迷宮を攻略されては困る。迷宮は救いだ,神だ。脅威は抓まなくては。

 そして迷宮の輪廻に捧げるのだ。

僕がそれに救われたように

他の人もそうなるといいとの願いも込めて。

 殊に世界の予備知識が豊富な転生者と

戦闘慣れしている星渡り,両者ともさらに後天性でスキルの付与がされて厄介だ。

僕はそれらを天渡りと呼ぶ。

 魔人にしては僕は弱すぎる。

スキルと■■があってやっと魔人と名乗れるくらいには。

「さて次の天渡りはどこにいるか。」

またどこかの町のギルドでも行くか

迷宮の魔物から情報取集でもしよう。


******


迷宮は■■を魔人に変えた。


そして迷宮は廻る。

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迷宮輪廻 祭煙禍 薬 @banmeshi

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