5 あなたの夢はなんですか?
あなたの夢はなんですか?
深津先生が帰ってきたあとで、水墨画を教えてもらったあと、少しして、硯は深津先生と一緒に深津家のよく手入れの行き届いている緑のお庭をゆっくりと歩いてお散歩していた。なぜそんなことを二人でしているのかというと、硯が深津先生に「先生。大切なお話があります。このあと、二人だけでお話しできませんか?」とじっと真剣な目をして深津先生に言ったからだった。(そういうことは、子供のときからよくあった)
深津先生は「うん。わかった。もちろんいいよ」と笑顔でそう言ってくれた。
「いい天気だね。風も気持ちいい。こんな日はなんだかなんにもしないで、草花みたいにずっとのんびりとしながら、ゆっくりとお昼寝でもしていたいね」と晴れ渡っている青色の秋の空を見ながら言った。
「草花は一年中寝てばかりですもんね」とふふっと笑って硯は言った。
硯はそんな深津先生の少し後ろを歩きながら、(いつものように大好きな深津先生の背中を見ながら)自分のお話をする頃合いをじっと待っていた。
そんな硯は深津先生の言葉を聞いて、深津先生と同じように秋の空を見上げる。確かに久しぶりの素晴らしい青空がそこには広がっていた。
気温は暑くもなく、寒くもない。ちょうどいい秋の気持ちのいい晴れたお天気の日の午後の時間の青色の空。
だけど、この青色の空は、もうすぐきっと美しい真っ赤な夕焼けの色に染まって、(秋の夕焼けはとても素敵だった)それからすぐにあっという間に、真っ暗になってしまうだろう。夏のころとは違って、日が暮れるのがだいぶ早くなったと硯は思った。そんなことを硯が思っていると、秋の風が大地の上を走り抜けるように、吹いた。すごく気持ちのいい秋の穏やかな風だった。その風が小さく硯の紺色の制服のスカートをゆっくりと揺らした。
「それで、大切なお話っていうのはどんなお話なの? 田丸さん」と、ふとお庭の道の上で立ち止まって、振り返って硯の顔を見てにっこりと笑うと、深津先生は言った。
そんな子供のころからずっと見てきた、ずっと憧れている深津先生の笑顔を見て、硯は思わず、なんだか突然、泣いてしまいそうな気持ちになる。(危なかった)でも、そんな思いはすぐに心の中できれいさっぱりと振り払ってから、真剣な目をして、まっすぐに深津先生を見て、硯は「深津先生。私、水墨画がうまくなりたいんです」と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます